現地の方とゆるくつながる。トビリシのUZU Houseでサステナブルな旅を

知らない街で扉を開けるのは、少しこわいもの。でも、そこで出会い、皿を自分で洗い、片言の英語で笑い合う時間は忘れがたい体験になります。

UZU Houseが生む「気楽なつながり」のつくり方を、運営のケンジさんにうかがいました。

現地の方と自由にコミュニケーションがとれる場所

まずは、UZU Houseがどんな場所か教えていただけますか?

UZU Houseは、ジョージアの首都、トビリシにあるコミュニティスペースです。旅人も現地の方も関係なく、みんなでわいわいと楽しめる場所です。

週に何度か食事を提供していますが、レストランというわけではなく、自由に飲み物や食べ物を持ち込んでもらって構いません。食事をする人もいれば、PCを広げている人もいます。友達や家族と来てもいいし、一人でふらっと立ち寄る人もいます。

現地の方もいるということで、UZU Houseに来るだけで「地元で暮らす方と交流する」という形の、サステナブルな旅が実現できそうです。UZU Houseは、利用料を徴収しているのですか?

いえ、基本的にはドネーションスタイルです。一般的なカフェやレストランのようにスタッフがサービスを提供するのではなく、利用者は自分が使ったコップやお皿を洗ってもらっています。

ビールなどのお酒も各々が持ち込むスタイルで、お金の寄付だけでなく、スタッフやその場にいるお客さんのためにお酒を買ってきてくれることも多いです。

食事はどんなものを提供されているんですか?

ラーメンやオムライスなど日本人に馴染のあるメニューが多いですが、ジョージア人も楽しんでくれています。食事を提供したきっかけは、UZU Houseを始めたときにスタッフが「ラーメンを作りたい」と言ったことです。

しかし、出汁を取るために骨を探したのですが、スーパーでも市場でも見つかりませんでした。店員さんに聞いても相手にすらしてくれないし。「変なアジア人が来て、骨をくれなんて言われても商売にもならない」と思われていたんでしょうね。

それでも諦めずに探していたらあるお店のおばあちゃんが出してくれたのですが、ゴミ袋に入っていて。「食べるために集めてるから、新鮮な状態のものが必要なんだ」と説明して、何度か通っていたら冷蔵庫に保管してくれました。

そういうことが続いたら「そんなに毎回欲しいなら売るよ」と言われて、今は安定して買えるようになりました。

もともとは捨てられていたものから出汁を取っている点は、サステナブルですね。

本当にそうですよね。

ドイツでの出会いをきっかけにコミュニティスペースを設立

ケンジさんがUZU Houseを作った経緯を教えてください。

私は昔、いわゆる不良だったんです。成人式の時、人生に悩み「自分は学校もろくに行っていないし、これからどうやって生きるんだろう」と考えていました。その時わかっていたのは、自分は日本のことも世界のことも、何も知らないということだけです。

知識や経験もないまま人生の決断をしても成功しないと思ったので、まずは10年遊んでみようと思いました。そうしたら、自然と不良街道を走ってしまって。

なるほど。そこから10年、何があったんですか?

30歳になる前に、もう日本は十分楽しんだと思ったので、海外に行こうと決めて。ヨーロッパの中で一番の宗主国だし、しっかりお金を稼いでいる国だったのでドイツに行きました。車など自分の持ち物を売って元手を作り、人生初の海外に飛び立ちました。

初日はライプツィヒにいた知り合いのところに泊めてもらったのですが、その隣の部屋に「日本の家」というコミュニティを立ち上げた方がたまたまいたんです。日本の家について聞いたら「街の人たちのアートを展示したり、たまにワークショップしたり、いろいろやってるよ」と教えてもらって。縁あって自分で企画を主催させていただくようにもなりました。

そこから、なぜトビリシに?

ビザの関係でドイツを出なくてはいけなくなって、そのまま日本に帰るのではなく他の国で同じような居場所を作って、またドイツにまた戻って来ようと考えました。ドイツで仲良くなった友達におすすめされた国をいくつか候補にしたのですが、その中にジョージアがありました。

ジョージアを訪れると、岡村さんが設立したシェアハウスのお披露目会があって、そこに参加しまして。そんな出会いもあり「面白そうなことになりそうだ」と思い、ジョージアに来ました。

サスタビのメンバーでもある岡村さんですね。

そうです。ちょうど2019年で、まだここには日本人は3~4人しかいない中、彼がシェアハウスを始めました。そういう中で私たちUZUのメンバーもジョージアを視察して、ビザや税制の面からも利点があると思ったので、ここに拠点を作りました。


現在はジョージアに住む日本人も多いですが、当時は少なかったんですね。UZU Houseに来る日本人は多くなかったのでしょうか?

はい、ジョージア人がかなり多かったです。ロシアが戦争を始めてからは、国を離れたロシア人がUZU Houseにも来るようになりました。

ただ、ジョージアとロシアの国家関係は必ずしも良好なわけではないので、ロシア人が増えすぎるとジョージア人が行きにくくなったり、ジョージア人ばかりになると他の国の人に開きにくくなったりします。そのバランスには気を使いました。

ローカルの方も利用できる場所にするには、そういった調整も必要なんですね。

そうですね。まあでも、自分たちは日本人だし、ジョージアは紛争地になっているわけでもないし、同じ人間同士せっかくなら集まろうよという考えでした。

サステナブルにコミュニティスペースを運営するコツ

UZU Houseは、最初は今とは別の場所にあったと聞きました。

はい、1年半ほど前に現在の場所に引っ越しています。ロシア人が入ってきたことでジョージアは急に土地代が高騰して、借りていた場所の家賃も一気に引きあがったので、サステナブルに運営していくためには別の場所がいいだろうと。

なぜ今の場所を選んだのですか?

私は日本で資本主義の世界を生きてきて、今後は資本主義とは別のスタイルに移行するのではないかと思いました。だから、街の中心ではなく、一歩離れたところに拠点を持つこともよいのではないかと考えここを選んでいます。

場所選びは大切ですね。他に、コミュニティスペースをサステナブルに続けていくために必要な要素はありますか?

一番大切なのは人ですね。ジョージアにUZU Houseを作ると決めたとき、スタッフの一人をジョージア人のおじいちゃん、おばあちゃんの家にホームステイさせて、言葉を覚えてもらったんです。彼はドイツで出会った子で、当時まだ17歳だったこともあり、周りにいた日本人の大人で「この子をどんな場所でも生きられる人にしよう」と可愛がっていたんです。

すごいですね。では、彼が最初に本格的にジョージア入りしたんですね。

そうです。今は、次のコミュニティスペースをエジプトで作ろうと思っているので、また現地に行ってもらってます。現在は英語、ドイツ語、ジョージア語、アラブ語が話せるようになって、料理もできるし、イベントのオーガナイザーもできるし、パソコンも一通り触れます。コミュニティを継続していくには、その場をしっかり維持できる人を育てるというのがすごく大事なんじゃないかなと思っているんです。

もちろん、いろんな人が入れ替わり立ち代り来ても良いのですが、核となる人が必要です。何かあったら責任を取って、自分でなんとかできる人を育てないといけないなと思います。

サステナブルな旅におけるコミュニティスペース

食事をした利用者は、ここで自分で食器を洗う

サスタビでは、サステナブルな旅をするための情報をみなさんに提供しています。ケンジさんは、コミュニティスペースがサステナブルな旅においてどんな役割を果たすと思いますか?

UZU Houseにはいろいろな国の人が集まっていることもあり、ここに来れば現地の言葉が話せなくてもたくさんの情報を集めることができる。そこがポイントではないですか。もちろん、日本人も多いので英語が話せない方も問題ありません。

また、自分と同じように旅をしていて、同じタイミングでここにやって来た人と出会い、会話することで、世界中の人たちが一体何を考えていて、何をしてきたのか、これから何をしたいのかを色んな人から一度に聞けることも魅力です。

単なるバーだと隣の人に話しかけにくいこともありますし、相手が友達やカップルで来ていると交流は生まれにくいですよね。ここではみんなが同じ空間にいるし、突然誰にでも話しかけてもかまいません。気兼ねなく交流して、下手くそな英語でも付き合ってくれて、とにかく「暇だし行ってみよう」という気楽さががいいんじゃないかなと思います。

確かに、旅人が集まってみんなが平等で、気軽にコミュニケーションが取れるっていうのはUZU Houseのようなコミュニティスペースの強みですよね。

そう思います。特に日本は、「お金がないとどこにも行けない」という気持ちになりやすくて、新しい出会いにもお金が必要だと感じることもありますよね。

でも、UZU Houseなら毎週フリーミールを提供しています。お金がある人は運営のために支払ってもらいますが、お金がない時は支払う必要はありません。だから、お金があってもなくても行ってみようという気楽さもあります。

たしかに気楽さは感じます。

ただ、中に入るドアはちょっと開けにくい雰囲気です。看板も出していませんし。最初の勇気だけ出して、この扉を開けた人にだけ新しい世界が表れるということを表現しているんです。

ちょっと怖くても「誰がいるんだろう」「どんな場所なんだろう」と好奇心を出して、一歩踏み出したら「こんなアットホームなんだ、いいな」という経験をすることが大事なんじゃないかなと。

最後に、サステナブルな旅をしている方、これからしてみたいと思っている方にメッセージをお願いします。

あなたは日本の国内組ですか?海外組ですか?海外組を目指す人はぜひ遊びに来てください。

編集後記

今回訪れたUZU Houseは、取材前にもゲストとして訪問させていただいていました。そこには、ジョージアの方はもちろん日本人だけでなく世界中の様々な場所から旅人が訪れており、とてもグローバル場所だという印象でした。

私が感じたUZU Houseの魅力は、国籍だけでなく、年齢や性別、職業などそれぞれバラバラで、普段であれば交わらない方と接点を持てること。一人ひとりの過去を聞いていると、それだけで記事が書けそうな面白さがありました。

もっといろんな方に会ってみたい方も、旅先で日本人シックになった方も、ぜひ訪れてほしい場所です。

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