【メンバー対談:行方×タイイチ】世界のサステナビリティの取り組みと、旅の定義

サスタビには様々なバックグラウンドを持つメンバーがいます。その中でも、「1年で地球35周分移動する」フォックス・タイイチさんは、異彩を放っています。今回は、サスタビ責任者の行方さんと、メンバーであるタイイチさんの、対談の様子をお届けします。

タイイチさんのプロフィールはこちら。

https://sustabi.com/blog/2639/

最新の世界のサステナビリティ情報

行方:タイイチさんは世界中のあちこちに行っているので海外情報に詳しいですが、最近のサステナビリティの状況について、どう思いますか?

タイイチ:私がベースとしている国ニウエは、人口が1500人しかいません。地球で2番目に人が少ない小さな国なので、サステナブルな環境を作るための活動に取り組んでいます。実は、ニウエは排他的経済水域の半分以上を環境保護区として守っているんです。その地区をオーシャンクレジットとして、色んな人に権利を持ってもらいます。

行方:面白い取り組みですね。海外の人が持っているんですか?

ニウエの海とタイイチさん

タイイチ:そうです。国の半分以上を保護区にしようなんて動き、他の国ではありません。背景には、太平洋とインド洋の諸国が、海面上昇で苦しんでいることがあります。どの国も何かしらの対策を打っていて、例えばモルジブは宙に浮いた街を作ろうとしています。これから島嶼国が生きていくには、アイディアが必要です。

行方:ニウエやモルジブの方々は、地球環境について真剣に考えていますね。日本人には切迫感がありませんが……。

タイイチ:切迫感は、ニウエにはありますよ。実際に、今まで淡水が出ていたところに海水が入ってしまって、真水が取れないところが増えています。仕方なく、雨水をためて飲んでいる状態です。ツバルやキリバスなど環礁国も問題は深刻で、標高3~4mの場所が多く、このままでは人の住める場所がなくなります。

行方:他の地域での活動についても教えてください。

タイイチ:湾岸諸国では、新しい街を作ろうという動きがあります。そこにはサステナブルな要素がふんだんに取り入れられているんです。サウジアラビアではNEOMという未来都市を開発しています。中には大きく4つのエリアがわかれているのですが、中でも注目なのが「The Line」です。

行方:「The Line」とはどのような街ですか?

引用:The Line

高さ500mの壁で囲んだ、全長170km、幅200mの細長い街です。既存の町は車や化石燃料に依存しているところばかりですが、The Lineではそれらを排除しています。人口を集中させて、学校やスーパー、病院など、どこにいくにも5~10分にします。街には道路を作らず、公共交通機関だけを通します。

「The Line」に限らず、NEOMでは化石燃料を使用しません。

NEOMとThe LINEの詳細はこちら

行方:サウジアラビアは石油輸出国であるのに、使わないのですね。

タイイチ:石油が取れるからこそ、これから石油燃料に依存していては上手くいかないと一番わかっているのでしょう。だから、自分たちが率先して石油を使わない街を作り、それでも都市が機能するというところを見せたいのだと思います。

行方:石油の代わりに、どんなエネルギーを使っているのですか。

タイイチ:太陽光や、水素を使ったエネルギーなどです。

行方:湾岸諸国の次には、どの地域で変化が起きるでしょうか。

タイイチ:北欧じゃないでしょうか。Sustainable Development reportのランキングでは、1位フィンランド、2位スウェーデン、3位デンマークとなりました。私が見たものだと、フィンランドとエストニアを行き来する船は、安い重油ではなく、電気とガスを使ったハイブリッドになっていました。また、デンマークのある島では、住民のほとんどが太陽光やバイオガスを使っています。

行方:北欧の人たちの意識が高いのは、なぜでしょうか。

タイイチ:生活に余裕があるからではないですか。余裕があれば、長期的に先のことまで考えられます。気候変動などについてメディアが報じていますし、生活の中でも話題になります。

行方:環境教育も進んでいるんでしょうね。

旅における移動方法

行方:最近は、船や飛行機でもCo2を排出しないよう工夫がこらされたものが多くあります。

タイイチ:新しい乗り物はたくさん出てきていますが、一番変わったのはエアラインでしょう。代替燃料を使い始めていて、それによって航空券の価格が1.5倍になっています。

また、ヨーロッパでは電車を使う人が増えています。国を渡る時も、近距離であれば飛行機に乗らず、電車で移動します。

行方:自動車事情はいかがですか?

タイイチ:ヨーロッパでは「2030年までは100%電気自動車にする」と宣言し、電気自動車を売ろうという動きがありましたが、実際はあまり売れませんでした。今でもガソリン車が売れています。

行方:充電スポットも足りていないそうですね。

タイイチ:そうですね、ある程度はありますが、どこに行ってもあるという感じではありません。その点、北欧は進んでいて、ノルウェーはほとんどが電気自動車です。国として促進するため、電気自動車には補助金がつきます。電気自動車の場合、日本でいう自動車税がガソリン車に比べて極端に安いんです。

新しい旅の方法と、旅の定義

行方:最近、旅の定義について考えています。観光との違いは何かを含め、定義することは難しいです。タイイチさんは、日常的に旅をしていますよね。

タイイチ:私は常に移動しているから、旅をしているとは思いません。というか、全員が旅をしているんですよ。どこかに行かない人でも、宇宙から見ると地球の自転や公転によりぐるぐる回っていますよね。みんな、地球ごと旅をしているんですよ。止まっていると思うのは幻想で、私だけが移動しているのではなくみんなで動いています。

とはいえ、一つの場所に留まるとそれは点であり、あまり周りが見えません。しかし拠点を一つ増やすと線になり、さらに増えれば面になります。もっとたくさんの場所を訪れると、地球的規模で捉えられるようになります。

それができると何でも俯瞰できるようになり、地域の問題が理解できます。旅をすることで人間は進化して、わかりあえるんです。新しい出会いもありますしね。

行方:タイイチさんが旅をしているのは、そういう理由があったんですね。

タイイチ:はい。旅には魅力がありすぎます。いろんな人に会えて、自分の知らない価値観も得られるし、テレビでも見たことがないものに会えるのは醍醐味です。

行方:最近ではオンラインツアーが普及し始めて、これを旅とするかどうかも考えています。

タイイチ:否定はしませんが、まだ不十分だと思います。オンラインでは、現地に行くまでが大変だったとか、どんな空気感とにおいがあったとか、そういうものがわかりません。また、旅先で働く人の汗を感じて、頑張っているんだなと共感することもないですね。つまり、現場感がないんです。

とはいえ、技術が発達すればもっと多くの情報が得られるようになるので、いつかは本当の旅のようになるでしょう。

行方:たしかにそうですね。今はまだ、五感を感じることは難しいです。

タイイチ:人との出会いもネックですね。一緒に時間を過ごして、食事をして、泣きながらさよならをする。これが旅の魅力です。

行方:あらゆる国で人との出会いを繰り返す人が増えると、世界平和に繋がると思います。

タイイチ:もちろん繋がります。人と人がわかりあうには、一緒にご飯を食べて、じっくり話し合うことが一番大事です。相手のことがわからないと、「怖いからやっつけよう」という発想になります。相手の感情に触れて、相手も辛いんだと理解していくしかありません。だから、人間に会うことは大切です。

行方:国で区切るのではなく、地球市民という発想を持てれば、みんなが平和で平等を目指すのではないでしょうか。そう考えると、国民国家制度が時代に合わなくなってきているのかもしれません。

政治は国境を枠としているため、地域主義・国益主義になります。また、政治家は選挙で選ばれるため、自国の利益を優先するような権力構造ができあがります。一方では地球的な課題があり、これを解決するためにはこれを超える制度がないとダメでしょう。例えば、SDGsなどの問題を解決するためには、国家を超えた制度を作る必要があります。

タイイチ:現状、私たちは主に国境で分けられています。日本に住んでいるから日本人、というようなことです。しかしインターネットが普及し人と人がネットワークで直接つながり、グローバル化した中で、国境で分けるのが本当に正しいのか疑問です。

例えば、世界中の人を趣味や興味などによって分ける方法があります。その方が、もっと強いつながりが生まれるはずです。コスプレが好きな人が集まって仮想のコスプレ国として政府を作り、既存の政府に圧力をかけることもできるでしょう。

行方:たしかに、趣味や価値観、考え方によって人がコミュニティ化される動きは、すでにSNSで見られます。それが、政治力を持つまでいっていないのが現状です。

今日は色々な話が出来てよかったです。最後に、タイイチさんなりの旅の定義を教えてください。

タイイチ:旅は、人生そのものです。生まれてから年を取り、死ぬまでが旅です。ポイントは、何かを発見することで、近所のスーパーに行っても、「このスーパーは鮭が安い」ということを発見できれば、もうそれは旅です。今まで知らなかったことを知ることこそ、旅の本質ではないでしょうか。

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