復興を応援する旅:旅人として必要な配慮を考えよう#北陸応援割

3月16日から「応援旅行」キャンペーンが開始

年末年始に北陸地方を襲った「令和6年能登半島地震」。

この震災によって生じた北陸地方への支援を目的として、3月から北陸4県での「応援旅行割」キャンペーンがはじまります。

引用:石川県「北陸応援割」

「北陸応援割」

震災に伴い、北陸地方への観光旅行では、予約キャンセルや営業困難といった問題が生じていました。落ち込んだ観光需要の回復による状況打開を目的として、国内旅行者とインバウンド旅行者を対象とした旅行・宿泊料金割引の支援策として講じられたのが、このキャンペーンです。

目的地ごとに以下4つの「北陸応援割」キャンペーンに分かれています。

これらは、富山・新潟・福井・石川県への、3月16日から4月26日までの期間における旅行・宿泊を対象とした割引制度です(「いしかわ応援旅行割」のみ予約開始日が異なるのでご注意ください)。

それぞれ、予算額に達し次第終了するようです。また、すべてのキャンペーンが「ビジネス利用は対象外」とされています。申し込み方法や割引額、条件などの詳細はそれぞれのキャンペーンHP(上記リンクから)をご覧ください。

注意!地域の現場への配慮と想像力を忘れずに。

現在、旅行割についての問い合わせ電話が地域の観光事業者や自治体に舞い込み、地域側は対応に追われている現状もあります。

富山・新潟・福井の3県では3月8日から、石川県には3月11日から公式の問い合わせ窓口としてコールセンターが開設されるとのことです。それまでは各自での情報収集・確認に努めるようにしましょう。

また、割引には予算が割り当てられており、申し込み件数にも上限があります。したがってキャンペーンに予約申し込みをしても割引を得られないという可能性もありますので、それを見込んだうえで、「北陸を応援したい」という思いを意識して吟味することが大事かもしれません。

言うまでもありませんが、いわゆる「割引ありきの予約」をし、割引が得られなかったらキャンセルするといったことも望ましい事ではありません。殺到する問い合わせや予約のなか、キャンセルの手続きやその対応をしなければならないのは北陸の現場の事業者さんたちなのです

もちろん、割引が私たちにとって魅力のあるものであり、それがあるから観光に行きたいという気持ちになったり、割引が無ければ旅行に行く余裕が無いという事情があることも事実です。他方で、震災からの復興を応援するという本来的な意味を見失ってしまうこともまた問題をはらんでいると言わなければなりません。

今こそ、「旅人」としての振る舞いや、現地への配慮、想像力が求められているといえます。まずは、公式にて案内されているキャンペーンの詳細や説明をしっかりと確認するようにしましょう。

 

復興と観光:可能性と注意点

地域の復興や支援にあたって、旅や観光には可能性があります。また、その反対に、注意すべきことも存在します。今回の記事ではそのことについても少し考えてみたいと思います。

経済的な効果

可能性として、まずは経済的な貢献が挙げられます。観光はこんにちの地域社会にとって経済的なカギを握る産業となっており、観光がもたらす経済波及効果は大きなものです。

観光に行き、その地域で消費活動を行うことによって、旅人は地域にたいして貢献をすることができます。

そのとき、「地産地消」を意識することが一層重要になります。地元でつくられたもの、地元の産業となっているものを消費することによって、はじめて経済的な貢献は地域に還元されます。

サスタビ20ヶ条では以下を実践することが大切になりますね。

  • 「11.地元食材を使ったレストランに行こう」
  • 「16.伝統工芸品を応援しよう」
  • 「17.お土産は地元で作られたものを購入しよう」
  • 「19.自然環境や地域社会に配慮したサステナブルな宿泊施設を選ぼう」

地域の現状を知る・記憶を繋ぐ

被災地では今何が起きていて、どのような状況にあるのか。それらはテレビニュースやSNS等を通じて知ることができるものの、限定的・局所的な情報となってしまう場合がほとんどです。

地域を訪れ、実際に自分の目で現状を知ること。そこで生活している人びとや地域の姿、現状の課題や問題を知ること、現地で知ったことをもとに自分にできることを考えること。旅や観光は、そのきっかけになります。災害や事故の記憶や教訓を風化させないためにも重要ですね。

地域の経験や現状を知り、記憶や記録を紡ぎ、そこから学ぶこと。そうした旅のあり方として、被災地や近隣地域を訪れることもできるでしょう。

ただし、それは「被災経験の商品化」「地域の見世物化」といった問題と紙一重であることは忘れてはいけません。観光は、おおよそ観る行為であり、したがって地域の人びとや災害による地域の「傷」は「観光客のまなざし」に晒されます(以下の記事も参照)。

「怖いもの見たさ」や、面白おかしく被災地にまなざしを向けることには、暴力性がつきまとうのです。被災した地域の人びとの視点に立って、気持ちの複雑性に想像力を働かせる必要があります。

したがって、被災地に「遊びに行く」という考え方は危うさに満ちていることに自覚的でなくてはなりません。地域の人びとは「経済的な支援者としての観光客」と、「被災した私たちをまなざし、消費する観光客」という2つの観光者像とジレンマティックに向き合わざるを得ないのであり、そのことを旅人/観光客の側は忘れてはならないと思います。

 

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