大切なのは「ひとつずつ」!:旅を通じて旅を育てる

「守るべきこと」が多すぎる!?

サスタビでは、「サステナブルな旅」を実現していくにあたって重要な心構えや意識、そして具体的な実践方法を「サスタビ20ヶ条」や「サスタビアクション」として紹介しています。

旅や観光の時間は、忙しくストレスフルな「日常」から解き放たれた、自由で快適な「非日常」の時間。そこに旅や観光の楽しさや魅力があることはもちろんなのですが、そうした特別感/非日常感はしばしば、旅先での私たちの行動のハメを外させてしまうところがあります。旅先の楽しい食べ歩きで出たゴミを、勝手がわからずポイ捨てしてしまったり、ホテルではついつい電気や水道を無駄遣いしてしまったり……。

「サスタビ20ヶ条」や「サスタビアクション」は、そうした「旅の実情」を踏まえて、〈旅先でも意識することができたら、旅人も地域の人も良い気持ちになれる〉旅人のふるまいや行動を言葉にしたものです。

「サスタビ20ヶ条」はその名の通り、20個あります。サスタビアクションも、おもにX(旧Twitter)をつうじて少しずつ紹介しています。

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でも、気を付けるべきこと、意識すべきことが20個もあると思うと「自分にできるだろうか」「ハードルが高いな」なんて思ってしまうこともあるかもしれません。でも、そう思う必要はありません。できることからひとつずつ始めてみること、「1つの旅で1ヶ条」と考えてみることが大切で、むしろそのほうが「サステナブルな旅」の実現には近道かもしれない……そのようなお話を今回はしたいと思います。

ひとつを意識することの大切さと大変さ

「文化」をリスペクトすることの難しさ

少し「サスタビアクション」をみてみましょう。たとえば「文化へのリスペクト」というアクションがあります。

サスタビアクション01 文化へのリスペクト:旅行先では、その土地の文化や慣習を尊重しましょう。みんなが笑顔で過ごせます

こう聞くと、「当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、旅先で出会う文化や慣習に対して私たちはどう向き合っていけばいいのか、というのは実は難しい問題なのです。「自分たちと違うところ」ばかりを探しだし、珍しさや新奇さを追い求めてしまうと、次第に「相手を尊重すること」よりも「相手を面白がって消費すること」の側面が強くなってしまう恐れがあります。「文化」「慣習」と聞くとどうしても、「その土地特有のもの」を探してしまうからだと思います。

けれど「文化」や「慣習」というものは、もっと日常的で、細かく小さく、そしてありふれた日々の営みの積み重なりでもあるのです。地域の人の挨拶の仕方。地域の植物や動物の呼び方。隣人との距離感。道路や広場の呼び方、等々。ほんとうに細かくて、ぱっと通り過ぎただけでは気がつかないかもしれないような小さなことだけど、地域の人々には共有され、大切にされている振る舞いや考え方、それが「文化」や「慣習」なのです

「文化をリスペクトする」ことは、旅先の人々の日常生活も含めた「全体像」を自分も深く知りたいと思う、そのような気持ちから始まっていきます。ということはつまり、「文化」や「慣習」を知るためには比較的長い時間が必要ですし、「知りたい/知ろう」という積極的な意識が必要不可欠です。事前に地域の歴史や文化についてインターネット等で調べてみることも必要ですね。一筋縄ではいきません。

「ポイ捨てをしない」ことも大変?

旅先ではポイ捨てをしない。こう文字にすると、ここまで「当たり前だろう」と思われそうな言葉はなさそうですが、じつはこれも簡単ではないかもしれません。

旅先の商店街で食べ歩きをしたり、ペットボトルやドリンクの紙パックを片手に観光地をめぐったりすることはよくありますね。他方で、「ゴミ箱が見当たらない」「自販機の横のペットボトルのゴミ箱が満杯だ」「コロッケの紙袋や食べ物の串を早く捨てたい!」……そのような思いに駆られてしまった経験はありませんか? ポイ捨てまではしなくとも、コンビニや商店の前にゴミ箱がないか探したり、「ホテルで捨てればいいや」と思ったりすることはよくあることだと思います。

もちろん、そうした私設/公設のゴミ箱に捨てたり、ホテルで捨ててもらったりすることが良くないことだというわけではありません。でも公園やコンビニのゴミ箱が観光客が捨てたゴミで溢れ、問題になるケースはいまだにたくさん存在します。すべてホテルに捨ててもらうというのも、どこか課題があるような気がしてなりません。

おそらく最も望ましいふるまいは、「ゴミは自分で持ち帰る」ということですよね。この考え方は旅以外の文脈ではすでに「当たり前」にもなりつつあります。ペットの散歩ででた糞尿は飼い主が処理する。キャンプが終わったらサイトをきれいに掃除してゴミは持ち帰る。等々。そして、それらを実践するために必要なことは、「事前にゴミ袋を準備・持参していく」「自分のゴミは自分で処理することを当たり前だと考える」といったことが必要ですね。

このような意識を旅においても実践することは、不可能ではないはずです。けれど、旅に行く前に「旅先で自分が出すゴミのこと」を考えるのはなかなか簡単ではないです。お土産を買って収納するスペースを見込んで荷造りすることはできても、自分が出すゴミを想像してスペースをあけたりすることは、ほとんど実践されてこなかったのではないでしょうか。

ゴミ袋やジップロックを数枚ずつ用意しておいたり、串などの鋭利なものでも大丈夫なように小さなタッパーを忍ばせたり、ウェットティッシュを持参したり。そうした工夫をしなければ、「旅先でポイ捨てをしない」という(至極当たり前に見えるような)ことも実践が難しいところがあります。

「ひとつずつ」を重ねる

いちどの旅であらゆることを意識し、実践しようとすることは簡単ではありません。サスタビ20ヶ条には「地域の文化活動に参加してみよう」「在来種を知ろう」「伝統工芸品を応援しよう」などがありますが、数週間~1か月などの長い旅を別として、個別の旅/観光でそれらを全部実践しようとするのは難しそうですよね。それについて私たちサスタビが伝えたいのは、「ひとつずつで大丈夫」ということです。

負荷を最小化し、効用を最大化する

「旅が社会をつくる」。言い換えれば、「旅がなければ社会は続かないし、つくられない」。それがサスタビのコンセプトです。エネルギー消費を考えるならば旅なんてそもそも辞めるべきだという考えになってしまいますが、しかし旅には効用もあります。「旅がもたらす悪影響や負荷を可能な限り少なくさせつつ、旅がもつ効用を最大化していくこと」、それがサスタビが目指すものであり、「サスタビ20ヶ条」や「サスタビアクション」に込められた想いにほかなりません。

旅人は旅を通じてのみ育つ

旅に良くない側面や影響が存在するならば、旅をより良いものへとみんなで育て上げていく必要がありますね。その主役はもちろん旅人です。

そして旅をより良くするためには、旅にでなければなりません。旅は、旅を通じてしか良くならないのであり、旅人は旅を通じてしか育たないのです。その過程で失敗もあるでしょう。しかし、だからといって旅を辞めてしまうのではなく、その経験や反省を活かして「次はもっと良い旅をしよう」と考えることが必要なのではないでしょうか。

旅や観光には、求心力があります。旅に出たい、観光をしたいという思いは(当然、全員に、常にというわけではなくとも)多くの人が抱くもの。その楽しさを諦め、手放してしまうことは悲しいですね。よいより旅へ、よりよい観光へ、そして「サステナブルな旅」へと自分の旅を「ひとつずつ」豊かにしていくこと、そうした一人ひとりの試みが「積み重なる」こと。その「ひとつずつを重ねる」長いプロセスで「サステナブルな旅」は育ち、サステナブルな社会へと近づいていく筋道が描かれていくのではないでしょうか。

それゆえ「サスタビ20ヶ条」や「サスタビアクション」は、一度にすべてを実現させようとすべきものではありませんし、どれか達成できなかったとしても「悪い」ものでは一切ありません。「これは出来たけど、あれは実践できなかった……」それでいいのです。ひとつずつ、できることから始めてみる。その「ひとつ」を実践するためにはどうしたらいいか、それを実践しながら「楽しい旅」にしていくためにはどんな準備や心構えが必要かを考え、旅をしてみる。そして、次の旅の目標を立てる。そのような長い目で、積み重ねていきましょう。

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