“人”に出会う旅へ。父母が浜だけではない、香川県仁尾(にお)農泊ツアー

 

「日本のウニユ湖」として一躍有名スポットとなった父母が浜。この父母が浜がある香川県三豊市の仁尾(にお)エリアは、瀬戸内海が育む豊かな海や山の資源を生かした観光町おこしがスタートしています。今回は、1泊2日の仁尾農泊モニターツアーに参加したレポートをお届けします。

 そもそも農泊とは

まず、今回の旅のテーマである農泊について定義を確認していきましょう。農水省のHPによると、以下のように定義されています。

「農泊」とは、 農山漁村に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のことです。地域資源を観光コンテンツとして活用し、インバウンドを含む国内外の観光客を農山漁村に呼び込み、地域の所得向上と関係人口創出を図ります。
出典:https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/nouhaku_top.html

一時的に立ち寄るだけの観光ではなく、宿泊や体験型コンテンツの充実によりより深い地域社会との交流を促すもので、令和5年度末時点では全国656地域が認定・794万人の宿泊者を達成。サステナブルツーリズムの推進にもつながる取り組みです。

仁尾では、2024年より地元の事業者を中心とした仁尾農泊推進協議会が発足。現在、みなさんで試行錯誤を重ねながら地域の魅力を広く伝えるために活動しているそうです。

父母が浜の歴史に想いを馳せる

父母が浜からほど近い「にがり衛門」へ。リノベーションをした落ち着いた空間で豆腐やお塩を使った料理やスイーツが自慢のカフェです。運営元の仁尾興産は大正8年創業、一時期は国を挙げた製塩を担う企業でしたが、時代が移り変わり現在は豆腐用にがりの国内トップメーカーです。現在仁尾興産から父母が浜までは運河と埋立地の景色が数キロ続きますが、この区間も塩田であったそうです。

干潮時や夕暮れ時に、ボリビアのウニユ湖を彷彿とさせる景色が「映えスポット」として人気を博している父母が浜。ゆったりとした時間が流れる仁尾町かつての景色を学んでから訪れると、その歴史や未来に想いを馳せ、より一層深い感動を得られる訪問となることでしょう。

にがり衛門で豆腐作り体験

にがり衛門では、カフェの他に豆腐作り体験も受け付けています。豆腐マイスターよりにがりや豆腐のお話を聞きながら実際に豆乳から木綿豆腐をつくります。「豆腐の材料は大豆・水・にがりの3つ。とてもシンプルな食品でありながら、各社の技術や努力により味が大きく異なるんです。」と仁尾興産の高橋寛栄社長より豆腐製造の基礎知識のお話を皮切りに、体験はスタート。

簡単に豆腐作り体験の手順を説明すると、①豆乳を鍋に入れ、混ぜながら加熱②かき混ぜながらにがりを加え、10分ほど待つ③木綿布を敷いた箱型に流し込み、重しをして30分放置、の3ステップになります。あっという間に完成し、出来立ての豆腐を試食!何も調味料をかけずとも、優しく、自然な甘みだけで十分美味しく頂くことができました。

体験でつくった豆腐は、カフェの厨房で麻婆豆腐に調理してもらい実食。脇役の食材と感じていた豆腐でしたが、自身の手を動かし出来立てを味わったことで日々の自炊にもっと活用したいと思いました。

眺望もGOODな地産地消レストラン!ワイン食堂パルミエ

その土地ならではの海や山の幸を頂くことは旅の大きな楽しみでもあります。瀬戸内海で採れた魚介や地元野菜をふんだんに取り入れたフレンチビストロ「ワイン食堂パルミエ」は、ヨットハーバーに隣接した絶好の立地にあり、瀬戸内海の青く遠浅な海とともにお食事や自慢のワインを頂くことができます。

仁尾近海で獲れた地魚のムニエルや、さわやかな酸味がアクセントのかぼすのパウンドケーキなどのディナーコースを頂きながら、ツアー参加者や仁尾農泊推進協議会の皆さんとの交流を楽しみました。

魚さばき体験&レモン収穫体験

2日目は、朝7時に宿を出発し地元の水産加工業者さんの工場へと向かいました。加工場へ案内された一行の目の前に現れたのは、新鮮なお魚がずらりと並んだケース。昨晩訪問した、ワイン食堂パルミエのオーナー久保敦嗣さんが講師となり、アジの3枚おろしにチャレンジしました。

まずは久保さんの実演を見学した後、参加者は丁寧にレクチャーを受けながら1人1匹アジをおろしていきます。日常的に魚をさばいている参加者はおらず、初めは談笑する余裕もなくスタートしましたが、1匹おろしきると達成感から勢いがつき2匹、3匹とさばく人も。

さばいたアジの一部は朝食のなめろうに

さばいたアジの一部は朝食のなめろうに

その後は、レモン収穫体験へ。レモン農家さんによると、通常は卸販売などが中心で観光客向けの収穫体験は実施しておらず、今回は試験的な体験だと言うことでした。

都会のスーパーでは中々見かけることのない大ぶりなサイズのレモンが生る農園で、自由に収穫を楽しみました。こちらの農園では、一番古い木は40年、良い実をつけるのは10~20年の木だと教えていただきました。

「レモネードづくりも収穫とセットにしたら良いのでは」、「農園でライブを開催するなど、現地に足を運んだからこそ味わえるコンテンツの展開も魅力的」など、参加者と協議会メンバー間で今後農泊体験として展開していくためのヒントが飛び出す場面もありました。

持ち帰ったレモンで、レモネードの元と塩レモンをつくりました!

 

レモン収穫体験後は、地産地消のピッツァなどを提供するサンカフェにて朝さばいたアジと収穫したレモンをふんだんに用いたランチコースを頂きました。筆者含め、普段の生活の中で一次産業と遠い人こそ旅を利用して生産の現場や生産者の顔が見える体験に積極的に参加してみることをおすすめしてみてはいかがでしょうか。

父母が浜と合わせて楽しみたい、古街の散策や宿泊

仁尾を訪れたら風情ある古い町並みの散策や、街中にある古民家をリノベーションした平田屋への宿泊を通じよりディープな仁尾の魅力に触れてみてください。江戸時代に参勤交代や貿易で栄えた港町の面影を今に残すレトロな街並みには、お寺や移住者による飲食店も点在します。

「その土地でしか経験できないことや出会うことができないもの」にますます価値が高まっている昨今。地元の事業者の熱意や想いを受け取りながら過ごした2日間を振り返ると、サステナブルツーリズムにもつながる“人”に会いに行く旅でした。

 

取材協力:仁尾農泊推進協議会/JTB高松支店

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