旅を楽しむ際に意識して欲しい6つの考え方④「安全に旅しよう」

元国連世界観光機関職員
㈱JTB総合研究所 グローバルマーケティング室長
熊田 (Jack)順一

 

先月に引き続き「ツーリズムを楽しむ際に今日からみんなに意識して欲しい6つの考え方」を紹介していきます。

1.旅先に住む人々に敬意を払い、地球上の私達の共有遺産を大切にしよう
2.私達の地球を守ろう
3.地域経済をサポートしよう
4.安全に旅しよう
5.旅先の情報に通じた旅人になろう
6.デジタルを賢く使おう

今回は6つ基本的な骨子の4つ目、「安全に旅しよう」です。

 3.安全に旅しよう

最初に作成された「責任ある旅行者:レスポンシブル・トラベラー像」に「安全に旅しよう」というテーマは含まれていませんでした。コロナ禍において、旅行者の大切な責任の一つとして同章は加えられたものです。

コロナ禍前まで特定の旅行地域を除いて旅行者にとって「安全」は気にすることのない、大前提した。しかしながら新型コロナウィルスの感染拡大によって、その前提は大きく変わりました。それは感染地域の責任だけでなく、感染しているかもしれない旅行者が渡航することで観光地に感染を拡大する可能性があることを旅する側も意識し、相互に留意をしていくことが大切であること再認識させるものです。

また戦争や治安が不安定な地域を旅行する場合においても、同様です。それでは一つずつ見ていきましょう。

1)旅先の公衆衛生情報を事前に調べよう。不安があれば現地の観光局へ問い合わせよう

Jack解説: 新型コロナウィルス感染症は、渡航地域の感染状況に対して旅行者の意識を一新させました。マスク等のPPE(Personal Protection Equipment)の持参や、アルコール消毒などの手指消毒設備や発熱モニターなどの設置等は、観光地や施設においても当たり前の行動となりました。コロナが一般の風邪と同様の扱いとなった今も、旅行者の個人の責任・判断において対応をしなければならない状況に移行しました。予防接種や、マスクの着用やアルコール消毒について引き続き効果ある予防策でありますので、流行している時期には改めて自身の選択で導入される予防策です。また引き続きマラリア、黄熱病、デング熱やジカ熱等の感染症への予防対策も重要です。

もし、感染した場合は渡航前であれば、渡航を控えて延期する勇気と決断を、渡航中に感染をした場合は、症状が落ち着くまで活動を控えること、帰国後であれば、ただちに病院で診察を受けるなど、旅行者側の感染症への留意が重要となった時代に私たちは生きていることを忘れてはなりません。

2)査証や保険の注意事項に必ず目を通そう

Jack解説: 観光が多くの国にとって経済的利益をもたらす今、各国の査証取得はデジタルテクノロジーの進展と相まって、簡便化されています。オンライン(e-Visa)や到着時(VOA:Visa on Arrival)の査証申請手続きが多くの国で導入される中、査証発給条件を理解することは旅行者自身が、その条件についてキチンと理解しなければなりません。健康面、加入すべき保険、手元に保有すべき資金、過去の渡航国歴等について渡航前にキチンと調べた上で、渡航を決定することが重要です。

また海外旅行保険についてもコロナ後に様々な補償を提供するものが出てきました。渡航取消となった場合に取消料を補償するもの、特定の病気に対して適応されるもの、されないもの。渡航先での発症した病気でも補償されるものと、されないものもあります。昨今のトレンドとして人気のあるアドベンチャーツーリズムの分野において補償されないアクティビティがある保険とない保険などにも留意が必要です。 

3)取り消し条件や旅行者の権利について確認しよう

Jack解説: 観光事業者が提供するサービスには必ず取引条件書があります。どのような際に取消料がかからずに返金されるのか。一方で、適用されない場合はなにか。留意をしておく必要があります。多くの事業者が補償しない場合で、特に旅行者流しなければならないのは「Acts of God」といわれる天災による旅行サービスの中止やサービス中段によって旅行者が負担しなければならない追加費用ではないでしょうか。

基本的には利用したサービスについては返金がなく、未利用のものについては返金がされるのが原則ですが、サービス中断後に自身で新規で手配をしなければならないサービスについては、旅行者の負担になることを覚えておくべきでしょう。現在、国連世界観光機関(UNWTO)が旅行者の安全保障と受入国の道義的な責任についても「旅行者保護に関する国際憲章」を策定、少しずつ同憲章を採択する国々も増えています。

https://www.unwto.org/international-code-for-the-protection-of-tourists

4)感染が続いている環境においてはソーシャルディスタンスを取るよう心掛けよう

Jack解説: 様々な国の文化の挨拶のスタイルは千差万別です。会釈であったり、握手であったり、ハグをしたり、キスをしたりと。新型コロナ感染症が特定感染症から外れた中で、感染状況を把握することは難しくなってはいますが、上述の(1)に記載をした通り、責任ある旅行者として感染に関する情報を収集して渡航に備えていくべきでしょう。日本においては外務省が日本人の入国に対して、世界においてはWHOが引き続き情報を発信しています。

外務省: https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/pdfhistory_world.html
WHO: https://covid19.who.int/

食事や移動等で密を避けることを私たちは実践してきました。すべてを忘れて楽しむのではなく、適切に過去の経験を自分たちの健康を守るために知識として身に着けて、旅行をすることがポスト・コロナの旅の仕方になるのだと思います。

5)緊急事態に備えて現地大使館や医療機関の連絡先を確認しておこう。

Jack解説: 日本人である私たちのパスポートに「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係機関に要請する。」と記載があります。各国は旅券を通じて自国の国民が他国を旅行・滞在する際の安全保障を求めています。気候変動による自然災害、人為的な災害となる戦争やテロ等に際して、頼るべきは各国における日本の代表窓口である「自国の大使館・領事館」であることは間違いありません。また保険加入の有無に拘わらず、ご自身の健康状態を踏まえて治療を受けられる医療機関や日本人医師がいる現地病院などの情報を事前に調べておくことは、責任ある旅行者の行動としてとても重要なものです。

基本的には海外旅行保険に加入をしておくこと。自由な旅行はとても冒険的ではありますが、言葉などの課題を抱える旅行者の場合は、日系の旅行会社や日本人スタッフが駐在する旅行サービス提供事業者を選択することも、自身の身を守る重要な選択肢の一つであると言えます。また「たびレジ」に登録をすることで、

各地域の大使館・領事館から発出される危険情報なども迅速に入手することもできます。海外渡航をする際には、必ず「たびレジ」に登録をすることも、責任ある旅行者としての行動例の一つです。

たびレジ:https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html

 

今回は、「旅の安全」について考察してきました。旅行は冒険的な要素がとても重要ではありますが、冒険的な旅行が危険なものであってはなりません。どんな旅行も、安全を第一に考えた計画を立て、現地でも頼る場所を常に持っておくことが、観光地にとっても旅行者にとっても素晴らしい旅の時間を過ごす上での、基本であると忘れてはなりません。

次回は「5.旅先の情報に通じた旅人になろう」です。

出典:UNWTO世界倫理委員会制作より筆者作成

https://webunwto.s3.eu-west-1.amazonaws.com/s3fs-public/2020-07/Tips-for-Responsible-Traveller-WCTE-EN.pdf

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