森林破壊や災害リスクが高まるなどの懸念から、森林を切り開くメガソーラー建設を巡るトラブルや反対運動が各地で相次いでいます。ネガティブな情報も多くあふれる今、太陽光発電自体が環境に悪いと認識している人も一定数いるのではないかと感じています。私は以前受講したエシカルコンシェルジュ講座のプログラムの中で農業と太陽光発電を両立・実践するソーラーシェアリングを知り、実物を見たいと考えていました。今回、神奈川県の小田原のソーラーシェアリングの稲刈り体験にお誘い頂き現地に伺いました。
農業と再生可能エネルギーを実践するソーラーシェアリング事例とは?
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、農地に建てた支柱の上に太陽光パネルを設置して農作物の栽培と太陽光発電を同時に行うもの。脱炭素や耕作放棄地解決へのアプローチにつながる他、農家側には太陽光発電の売電収入や電気代の削減が期待できるなどソーシャルグッドな取り組みとして注目されています。今回訪問した小田原かなごてファームは、小田原の酒匂川流域の地域課題に取り組む様々なプロジェクトを実施しており、その中のひとつにソーラーシェアリング事業があります。

出典:checkout.square.site/merchant/MLHHJJ8FP7CS9/checkout/E2NKR5CPERIWY3DKPIRPP7QW?fbclid=IwY2xjawLoMJhleHRuA2FlbQIxMQABHmo91JWu2Gg4up_yHpNht3srhKFl_Vl4WDFlz70rLdkQNmRRBpIMXjFsiMnc_aem_j8I8x7ITGeZxld3m8JRWeA
小田原かなごてファームで稲刈り体験
小田原かなごてファームと提携する「顔の見える電力」を掲げ再生可能エネルギー100%の電力小売事業を行うUPDATERが主催した今回のイベントは、秋の気配が漂い始めた9月の下旬に実施されました。
| 当日の流れ
13時~13時半 ソーラーシェアリングの紹介 13時半~16時 稲刈り体験 17時~ 懇親会 |
まずは、小田原かなごてファーム代表の小山田大和さんからソーラーシェアリングの説明がありました。そもそも、ソーラーシェアリングと一口に言ってもその種類はさまざまだそうで、主流のものは藤棚のようにパネルを組み間隔を空けて配置する藤棚式ですが小田原かなごてファームでは1本足のアレイ式を採用。
1本足にするメリットは2つあり、まず鉄骨量の削減によるコストの低減。そして2つ目は農作業の妨げとなる支柱が減るため、作業効率も上がるとのことです。7、8年耕作放棄地だった土地で自然栽培されている神奈川のブランド米「はるみ」は、体験で収穫した分のお米は地元の井上酒造と共同開発した日本酒「推譲」となります。
さつまいもやみかんなどを育てる他の畑も、すべて耕作放棄地を活用していると話す小山田さん。耕作放棄地を、ソーラーシェアリングの力を利用しながら地域の中で経済循環を生む持続可能な農地としていくことを目指しています。「よく太陽光パネルで日陰となった部分の農地の作物は育たないのでは、などの誤解をされることもありますが、ご覧の通りちゃんと元気に育っていますよ!」とのこと。


30分ほどお話を受けた後、早速畑に入り稲刈り体験がスタートしました。「全部刈ってもらうつもりでたくさん稲を残しておいたよ!」と小山田さん。果たして時間内に刈り終わるのでしょうか。
稲刈りの工程はとてもシンプルで、稲の束を利き手と反対に持ち鎌を持った方の手で刈り取るだけ。ひたすら参加者一同でノルマの分を刈っていきます。


刈った稲は、その場で次々と脱穀機にかけられていきます。脱穀の体験をする参加者の方もいました。取材を兼ねて参加した筆者は、半分ほどは見学する予定でいましたが、次々と稲を刈る作業にハマり気が付けば約1時間が経過していました。


しゃがみ込み作業をしていると、稲穂の茂みの中にたくさんの生き物の姿が。自然栽培だからこそ生物多様性に富んだ土壌が育まれていることを実感した瞬間でした。稲刈り作業は予定より大幅に早い14時半頃に終了し、残りの時間は休憩を挟みながらゆったり歓談しながら落穂広いをして過ごしました。
収穫したお米が再エネ100%の日本酒「推譲」となる過程は、2026年春に予定されている第2弾の酒造訪問で知ることができます。追ってこちらのページより情報が公開される予定となっていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
顔の見える生産者と電気に会いに行こう
当日は、自身の暮らす地域のことを知りたい方やリタイア後の生き方を模索している方など20代から80代まで幅広い参加者が集まり、ソーラーシェアリングの事例に触れることや農業を通じて多くの交流が生まれていました。
稲刈り体験後の懇親会で、「地域への関わり方は0か100ではなく、もっとグラデーションがあっていい。例えば2拠点生活の人がいたり、たまのイベントに顔を出す人がいたり……」と参加者のひとつが発言していたことが印象的でした。下記の記事の中でも、「地域と多様に関わるひとつの方法としての旅/観光」と示されているように、新しい地域との関わり方を模索していくことが新しい旅の在り方が生まれるきっかけとなるのでしょう。

サスタビが提唱する「サスタビ20カ条」の中にも09 交流型体験プログラムに参加してみようと言った項目があります。今回の訪問を通じて、その土地の人と実際に会いコミュニケーションを取ることで旅先を大切にしたい気持ちが自然と育まれ、結果としてサステナブルな旅へつながるのだと思いました。
フリーのライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通し世界各国の社会問題を知る。事務職を経て独立後、ソーシャルグッドに関連する記事を執筆。都会暮らしからはじめるエシカルな暮らしを実践中。





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