自然本来の美しさに触れながらサステナブルを学ぶ「チルアウトトラベル」の魅力とは

「心を落ち着かせる」「癒やし」「内省する」といった意味を持つChill out(チルアウト)。

観光地をひたすら巡るアクティブな旅を好む方が多い印象がありますが、ここ数年では近所の公園にフラっと行って読書を楽しみ、ゆったりとしたひとときを過ごすような、日常の延長戦にあるような旅が注目されつつあります。

今回は、北海道の大沼国定公園周辺で、新しく出会った仲間と湖畔で焚き火を囲みながら語り、自然との共存やサステナブルな取り組みについて学べる「チルアウトトラベル」についてご紹介します。

大沼国定公園とは

大沼国定公園

大沼国定公園とは、昭和33年7月に全国で13番目に指定された、南北海道唯一の国定公園です。そもそも「国定公園」とは、優れた自然の風景地の保護と生物の多様性の確保のため、環境大臣が指定した公園のことで、都道府県が管理。

活火山である駒ヶ岳と、寛永17年に起きた大噴火によってできた大沼、小沼、蓴菜(じゅんさい)沼をはじめ、自然豊かな周辺地域一帯が保護されています。

大沼は、名曲「千の風になって」誕生の地でもあると言われており、まさに「千の風になって」のミュージックビデオでも映っているような自然豊かな風景が広がる場所です。

チルアウトトラベル in 大沼国定公園

チルアウトトラベル in 大沼国定公園

サステイナブルな取り組みを学び、湖畔でゆったりと癒され、人と繋がり、内省する。そんな北海道にある大沼国定公園での過ごし方を「Chill out Travel by WONDER」より紹介していきます。

 

① 同じ旅のテーマに興味を持つ仲間と「出会う」

チルアウトトラベルin大沼国定公園は、不定期に開催される募集型ツアー。同じことに興味をもつという共通点があるだけで、過去の参加者には休みをとりチルな時間を楽しみに来た人もいれば、旅の合間に仕事をしているノマドワーカーまで。

仕事も住んでいる場所も年齢もすべて異なりますが、共通しているのは「旅をしながら学ぶ」というテーマに共感していること。

その想いが共通認識としてあるため、多くのことを学ぶ環境を有意義に過ごすせます。正社員やフリーランスなど、日常の居場所は異なろうとも、価値観や想いは同じであり、通常の旅行のように「観光を楽しむ」だけでなく、普段関わらない物事に対して「思考する面白さ」を味わえます。

 

② サステイナブルな取り組みを「学ぶ」

ネイチャーハイキング


大沼国定公園でのネイチャーハイキングでは大沼公園周辺の観光案内所の篠原さん、飯田さんによる公園内の案内があり、そこには人間の手がほとんど加えられていない、ありのままの自然の風景が広がっていました。

 

飯田さん:
周りと比べると、この木だけキツツキやクマゲラが餌を食べにきて穴を開けているのですが、私たちから見るとこの木だけ穴だらけでかわいそうと思うじゃないですか。だけどそれは人間の物差しで、この木はもう寿命なのです。

木が腐って柔らかくなってくると、虫が入りやすくなる。その虫を狙ってとりたちが食べにきます。この穴は巣ではなく、キツツキやクマゲラたちの餌場なのです。食べにくると穴が開いて、この中で虫が卵を産みます。そうするとそれを狙ってまたキツツキたちが食べにくる。これ以上この木が穴を開けられ続けたら倒れますが、それはこの木がそういう運命だった、ということです。

この木が倒れることによって、横にある赤ちゃんの木に陽が当たるようになって、またぐんぐんと育っていきますので、この森に悪影響はないにです。倒れた木も、基本的に私たちはほったからし。自然に倒れたことなので、倒れたことにも意味があります。その木がまた長い年月をかけて土に返り、それが養分になり森の生き物たちのためになっていくのです。

 

篠原さん:
自然の中にいるものはすべてが歯車になっており、みんなが助け合って生きている。だからどれか一つの歯車を人間の勝手で外してしまうと、自然環境は変わってしまうのです。極端な話、私がどこかの木の枝を折ったら、それがきっかけでキツツキ達が来なくなることもありえます。だから私たちはできるだけ手を加えず、自然と付き合っていくのがいいんですね。

 

国定公園は常に地域の人が木を切ったりることや、お世話をしているのかと思いきや、実は人間の手を極力加えないことが美しい自然を保つために必要だというのです。

ありのままの自然のサイクルを持続可能にしているのは、人間ではなく動物たちであり、ゴミをポイ捨てしないことなどはもちろんですが、ヒトが本当の意味で自然のためにできることは、そっと見守ることなのかもしれません。

 

水耕農業見学

実際に栽培している農場に行き、無農薬の野菜を管理をされている亀井さん、株式会社アプレ代表の髙橋さんから持続可能な農業のあり方について学びました。

亀井さん:
なぜ水耕栽培を行なうのかですが、水耕栽培なら土壌と比べて雨に降られたり風に吹かれることもなく、室内で生育をコントロールできるので、均一の状態を保ちやすいからです。土の場合は管理が難しいけれど、養液で育てるとほぼ全てが管理できる。そのため生育日数が早くなり、多く取れるし、栄養価も高いです。

弊社の水耕栽培の特徴は、養液を捨てないこと。通常は栽培して収穫した後に掃除をするため、水も入れ替えるのですが、その養液を含んだ水が川に行き海に流れると、栄養が増え、バクテリアが増え、結果的に海温が上がることに繋がります。

海外だと養液を捨てる時の処理の方法などが法律で決まっていますが、日本では法律で定められていないため、そのまま流してしまうこともあります。 

髙橋さん:
養液を捨てた方が水代は安く経済的です。しかし弊社では、入れ替えないでやろうと決めました。資本主義社会の中で、企業として利益を出すのは当然であり間違いではないのですが、利益だけを追求することは本当にいいことなのかと思いました。

地球は水の惑星と言われているくらいなので、すごく豊富に水がありますが、そのうちの97%は海水。我々が使える水は3%しかありません。その3%の内訳ですが、7割が北極と南極の氷です。温暖化で氷河が溶けたらいいのではと思う方もいるかもしれませんが、氷河が解けても海に流れて海水になってしまいます。

だから人間が使える水は、3%のうちの3割なので0.9%しか使えないのです。わずか0.9%しかない真水の中で、 一番使われているのは農業用水なのです。日本は確かに水が豊かな国ですが、カタールでは水がガソリンの5倍の価格。カタールやサウジアラビアには全然水がないのです。だから、私たちが水を捨てても構わない、という考えではいけないのです。

 

小さなことかもしれませんが可能な限り水は飲み切る、そして必要な分しか買わない、持たないことも、持続可能な社会への貢献へと繋がります。

普段生活していたら出向くことのない場所や、出会えない人たちとの巡り逢い。まるで「大人の社会科見学」のよう。持続可能な社会に向けて、自分たちに何ができるかを考えさせられる時間を過ごせます。

 

 ③ 湖畔で、ゆっくりとした時間を過ごし「癒やされる」

学びの後はチルの時間。湖畔の向こう側に沈む夕日を、キャンピングチェアを並べ、ゆったりと座りながら眺めます。

毎日見れるはずの夕日ですが、あまり意識して見ることは少ないですよね。夕日が沈む光景を見て、自然が生み出す景観の美しさを改めて感じましょう。

 

夕日が沈んだあとは焚き火を囲みながらお酒を飲んでチルアウト。『寒い、けれど温かい』、そんな心地よさを与えてくれます。

大自然の景色を隣に、静かな湖畔でゆったりと心を落ち着かせる。自分たち以外に、誰もいない非常に贅沢な空間を満喫できます。

④ 自然とヒトとの繋がりを感じ、「内省する」

夕陽が沈み、だんだんと暗くなってきてからは、人生について語り合う時間。抱いている夢や目標、過去と今の自分の比較など、普段人前で話すのは恥ずかしいような内容も、不思議と話せるような暖かく、そして穏やかなシチュエーション。

深い話をじっくりしていることもあり、随分前から知り合い同士のような感覚になります。

仕事や普段の暮らしに対し人それぞれ異なる価値観を持っていることを知り、多様な価値観や思いに触れられる経験は、自分を見つめ直し今後の人生をより豊かにしていくためにも重要なこと。

 

晩御飯は地元の「一芳園」という焼肉屋さんで、ジンギスカン。

地産地消のローカルフードをいただくことは、輸送コストの削減につながるだけでなく、輸出のための農地作りで行われる森林伐採なども防ぐことができます。地元のご飯をいただくこともサステナブルな社会への貢献です。

 

晩御飯を食べたら星空を見るため、また湖畔へ。まるで大きなプラネタリウムのような満点の星空が広がります。

都会ではほぼ見ることができない流れ星を何度も見れ、壮大で美しい景色に魅了されると、抱えていた悩みがちっぽけに感じます。

 

⑤ 人や自然と対話し、自分の人生に「活かす」

ありのままの自然をどのように保護しているのか、水耕栽培はなぜ持続可能な農業と言われているのか。

自分で足を運び学ぶことの大切さだけでなく、陽が暮れるまで焚き火を囲み、流れ星を見つけるまで空を見上げ、地元の人々と立ち話をしたり、余白の時間を楽しむことで多くの大切なものが学べます。

チルアウトトラベルを通して気づいたこと、学んだこと、日常にもどったあとも、ここでの経験を忘れず自分の人生をより豊かにするため行動を起こしていきましょう。

 

湖畔で過ごす、学びと癒やしの旅

「心を落ち着かせる」「癒やし」「内省する」をテーマに楽しめるチルアウトトラベルは、「失っていたものを取り戻し、再出発できる旅」。

今まで経験してきた「観光」は、観光地として開発されたコンテンツを楽しむことが多いように感じます。しかしその土地の本来の姿を楽しみ、学ぶということこそが旅の醍醐味ではないでしょうか。

都会の喧騒から離れ、のんびりと自然の中でリラックスしたい、自分を見つめ直したいと感じた人は、チルアウトトラベルという新しい旅を体験してみては。


より具体的な大沼国定公園での過ごし方は、特設サイト「Chill out Travel by WONDER」をご覧ください。

この記事に対するご感想やご意見は、ぜひコメント欄から投稿お願いいたします

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

関連記事

  1. 【山形県】クラゲに特化して起死回生!“世界一”の鶴岡市立加茂水族館

  2. 【福井県】越前鯖江の伝統産業・ものづくりに触れる旅〈後編〉

  3. 自国の伝統文化を子供に習わせることに熱心なジョージアの大人たち

  4. 【福井県】越前鯖江の伝統産業・ものづくりに触れる旅〈前編〉

  5. 【長野県】伝統産業を攻めて拡げる寒天屋・有限会社イリセン【後編】

  6. 【神奈川】泊まれる出版社で地域を再編集する・真鶴出版

  1. ツーリストシップとは?田中千恵子氏から学ぶ、観光者としての自分…

    2023.02.04

  2. 【福井県】越前鯖江の伝統産業・ものづくりに触れる旅〈後編〉

    2023.01.31

  3. 【福井県】越前鯖江の伝統産業・ものづくりに触れる旅〈前編〉

    2023.01.28

  4. 旅を楽しむ際に意識して欲しい6つの考え方②「私たちの地球を守ろう」

    2023.01.24

  5. ツーリストシップとは?田中千恵子氏から学ぶ、観光者としての自分…

    2023.01.21

  1. 国内におけるサステナブルツーリズム事例を紹介

    2021.11.10

  2. 「旅=非日常」はもう古いかも!?――「かっこいい旅人」は生活する…

    2022.06.14

  3. リジェネラティブなサステナビリティへむけて:エコツーリズムをヒ…

    2022.11.22

  4. スポット・イベントの登録方法を解説!

    2022.11.01

  5. 【東京】都内のサステナブルツーリズムの事例紹介

    2022.09.13