交流から関係へ【前編】背景としての人口問題を整理!#旅と関係人口

旅と関係人口

人口減少がつづく日本で、地方・地域の課題をいかに解決し、「再生」を目指していくことができるのか。「関係人口」は、その糸口として期待されている言葉です。

今回の記事では前後編にわけて、関係人口について理解を深めたいと思います。関係人口という言葉が出てきた背景や、日本の地域・地方における人口減少の問題がどのように推移してきたのかといった背景的な事柄について【前編】では整理したいと思います!

2011年、人口減少社会「元年」

2011年は、人口減少社会「元年」とされています(千野 2019)。戦後の日本の人口は、2005年にはじめて減少した後、横ばいや微増を繰り返していましたが、2011年からは下降の一途を辿っています。

総務省統計局、千野 (2019)から引用(https://www.stat.go.jp/info/today/146.html)。

少子高齢化の進展、出生率の低下、そして死亡率の増加。これらの要因から、「平成」は日本が人口減少社会に足を踏み入れた時代となったと言えます。

人口問題と向き合いつづけてきた地方農山漁村

他方で、人口減少という問題自体は2011年に突如としてはじまったものではありません。

日本の農山漁村地域、いわゆる「地方」では、以前からずっと表れていた問題でした。第二次世界大戦以降で考えてみると、日本の「地方」は3つの人口変動を経験してきたとされます(山下 2010)

第1期(1960年代~)

まず、1960年代以降に顕在化した、地方から都市への人口流動による過疎の問題があげられます。労働や生活環境を求めて、地方から都市へと人々が移動することによる人口減少です。

背景には、日本の高度経済成長を指摘することができます。1955年を契機とする高度経済成長によって、地方農村から都市へと移動する若者が増加しました。地方の学生がいわゆる「金の卵」と称され、列車に乗って集団で都市へと移動する姿をメディアで見たことがある人も少なくないでしょう。これは「社会的な」要因による人口減少ということができそうですね。

そして「過疎」という言葉が登場してきたのもこの時代です。人口流入による「都市の過密」と、人口流出による地方の空洞化という、2つの表裏一体の現象を指して「過疎」が問題化されました(田中 2021)。

第2期(1980年代後半~)

その後、死者数が出生者数を上回ることによる、人口の「自然的な」現象が生じていきます。前述の社会的な人口減少も同時的に進むことで、地方の人口減少・過疎の問題がいっそう深刻化したといえます。

また、1990年代から2000年代前半にかけては日本の大学進学率も大きく上昇した時代であり、全国で5~10%ほどの上昇がみられ、2002年に40%をこえています(文部科学省 2019)。2009年には50%を超え、ほぼ今日と等しい水準に至っています。これらのデータからは、大学進学による地方の人口減少もこの時代に増加したことがうかがえます。

【後編】で紹介しますが、都市と農村の交流による「交流人口」が登場してきたのもこの時代にあたります。

第3期(2000年代~現代)

そして2000年代に入ってからは、人口の自然・社会的現象の歯止めがかからない状態となり、いわゆる「限界集落」などの問題がいよいよ存在感をもってあらわれてきたといえます。

以前ほどの大規模な人口流出は見られませんが、地方に残り住む人々の高齢化による農山漁村地域の縮小・衰退が問題視され、とくに学校の統廃合の加速や自治体の財政難、老々介護、空き家問題など、いくつもの問題が露見してきました。

2009年度から「地域おこし協力隊制度」が開始され、また2014年度からは「地方創生法」が制定され全国地方自治体による「地方版総合戦略」および「人口ビジョン」が策定されるなどして、都市から農山漁村地域への人口還流を促す方策が全国的に模索されてきましたが、人口減少の問題はいまだ先行きが不透明となっています。

交流人口、そして関係人口という言葉は、こうした人口減少社会の深刻化のなかで解決の糸口として登場してきました。次回【後編】では、以上の背景から議論されてきた交流・関係人口について整理しながら、旅がいかに関係人口に貢献できるのかについてみていきたいと思います!

 

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参考文献

総務省(2018)『これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書―「関係人口」の創出に向けて』(https://www.soumu.go.jp/main_content/000529409.pdf 2023年6月3日最終確認)

田中輝美(2021)『関係人口の社会学――人口減少時代の地域再生』大阪大学出版局。

千野雅人(2019)「「平成」は、どのような時代だったか?~人口減少社会「元年」、非正規雇用、女性活躍、デフレ~」総務省統計局『統計Today No.146』(https://www.stat.go.jp/info/today/146.html 2023年6月3日最終確認)

文部科学省(2019)「9.大学入学者数の推移」(https://www.mext.go.jp/content/20201126-mxt_daigakuc02-000011142_9.pdf 2023年6月3日最終確認)

山下祐介(2010)「戦後日本社会の世代と移動――過疎/過密の生成と帰結」『日本都市社会学会年報』28、pp.1-25。

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