長崎県の離島「壱岐島」。長崎県でありながら、福岡県の博多港から高速船で約1時間で行ける、アクセスの良い離島です。自然豊かで高い食料自給率を誇り、神社や遺跡や古墳などの貴重な文化資源も多く、2018年に「SDGs未来都市」に選定されました。
今回は、そんなアクセスが良く美しい自然に恵まれた壱岐島の、サステナブルを体感できるスポットをご紹介します。
温泉の熱を使った循環と食の循環「平山旅館」
壱岐島の北西沿岸部にある、1500年以上の歴史を誇る湯本温泉郷。療養規定値約15倍の高濃
度温泉があります。湯本には11の温泉施設があり、その全てが自家源泉でかけ流しという贅沢さを誇っています。「平山旅館」はサスティナブルな取り組みが注目されている温泉旅館です。
魅力の1つ目は、温泉です。平山旅館の一番の魅力は何といっても温泉。湯本の温泉は5世紀神功皇后が三韓出兵の折に発見し、我が子応神天皇に産湯を使わせたという伝説の残る湯です。赤茶けた鉄錆色に濁った露天風呂につかると、じんわり体の中から温まり、上がったあとも温かさを保ってくれます。千数百年間にわたり赤い熱泉が自然に湧き出て、今も静かにこんこんと湧き続けています。
この湧き出る温泉の熱を他にも活かせないかと生み出したのが、源泉を利用した「熱交換システム」です。69℃あるという源泉ののタンクにポンプを巡らせており、温泉熱を利用してガスを使わずに温水を作り出しています。浴室のシャワーや厨房で使う際に使用しています。
魅力の2つ目は、食事。壱岐島は「自給自足できる」と称されるほど、魚介類はもちろん、農作物に恵まれた島です。平山旅館で提供される料理の食材はほぼすべてが壱岐産のものです。自家農園で育てた無農薬野菜、料理長が自ら釣ってきた魚や獲ってきた魚介類です。
壱岐の名物の一つである、季節限定の生ウニ。ミョウバンなどで固めておらず、トロっとしていて他で食べるウニとは一味も二味も違います。ウニ本来のあまみが感じられ、少量でも口いっぱいに風味が広がります。一度食べたら忘れることができない極上の一品です。
そして平山旅館ではお客さまが食べ残した食材は飼育している鶏や馬の餌となります。野菜くずは馬が食べ、残飯は鶏が食べてくれます。その馬や鶏の分は熟成させて最高の堆肥になりま
す。ウニや魚介類の殻は畑のミネラルに生まれ変わります。このようなサイクルで美味しい野
菜、美味しい卵が出来上がり、旅館でのお料理へと生まれ変わっています。自然が作り出す温泉や昔は当たり前とされてきた食の循環が、最先端なサスティナブル温泉旅館として人気の宿となっています。
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生まれ変わった酒蔵「ISLAND BREWERY」
創業130年以上の老舗酒蔵をリノベーションしたクラフトビール醸造所「ISLAND BREWERY(アイランドブルワリー)」。壱岐島発祥である麦焼酎に使われている白麹を使い、“魚に合うビールを作りたい”という思いで、2021年にオープンしました。
地元の食材を使ったおつまみとともに出来立てのビールが楽しめます。中でも旬の壱岐の食材を使用したビールがあります。特に従来廃棄されていたものを利用したオリジナルビールの開発にも力を入れています。
柚子の皮を使ったビール、規格外のイチゴを使って作られたビールや、あこや貝の殻を使った
ビールなどがあります。どれも壱岐の地のものを使った「ISLAND BREWERYのビールが飲みたくて旅行に来た」という方もいるそうです。
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島の廃棄物を再利用「未来派カゾク農園」
島ごとリサイクルし、壱岐をオーガニックの島に!廃棄されるものだけで本当に安全な天然肥料・飼料を手作りしている農園「未来派カゾク農園」。にんにくを中心に、ビーツやヤーコン、その他季節の野菜を栽培しています。農主の松本さんは美容室を経営している兼業農家。農業に従事する時間も限られることから、働き手として松本さんの思いに共感する島に住む仲間たちが手伝いにきます。
未来派カゾク農園で使用する有機肥料はもともと島の廃棄物となっていたものです。お金をかけて捨てられていたものを、肥料に生まれ変わらせて再利用しています。協力している事業
者も処分料がかかっていたものを無料で引き取ってもらえると喜んでいるそうです。例えば、真珠屋さんのアコヤ貝の貝殻、ビール屋さんの麦芽粕、ラーメン屋さんの豚骨スープのガラなどです。
事業者にとっても、未来派カゾク農園にとっても、そして地球にとっても良い、三方良しの関係ができています。旅行者も仲間として、農業体験ができるようにしていきたいそうです。
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オリジナルクラフト人を生み出す「壱岐の蔵酒造」
約500年前に蒸留技術が伝来した壱岐島は、麦焼酎発祥の地として知られています。麦本来の
香りと米麹の甘味が感じられる壱岐焼酎は飲みやすく、島内外で人気です。壱岐島と言えば、焼酎を思いつくという方も多いのではないでしょうか?
「壱岐の蔵酒造」は、若い世代へのアプローチとして、焼酎以外のアルコール飲料の開発も行っています。その名も「JAPANESE IKI CRAFT GIN」。廃棄せざるをえなくなった壱岐の農産物をボタニカルとして使用し、ジンを製造しています。アスパラガスやイチゴ、柚子など規格外等で廃棄されてしまう壱岐の作物を使って、オリジナルの香りや味わいが楽しめるジンとして人気です。島内でも、スーパーやお土産屋さんなどで販売していて、お土産にもピッタリなサスティナブルなお酒です。
次の旅では壱岐島を満喫
今回紹介した3つの事業者は実はそれぞれ繋がっています。平山旅館」の自家製の梅を使った「ISLAND BREWERY」のビールがある。そして「ISLAND BREWERY」がビールを作ったときに出る廃棄物の麦芽粕は「未来派カゾク農園」の有機肥料になるなど。
この他にも、「島をよくしたい」という志しを持つ人同士が繋がり、広がりを見せています。小さな島だからこそ、繋がって団結して取り組むことができるという側面もあります。これらのおすすめスポットのほかにも壱岐島には、人の手が付けられていない息をのむ絶景スポットの数々、150以上もの神社が集うパワースポットなども有名です。先進的な離島を、ぜひ2024年の旅先候補に入れてみてはいかがでしょうか?
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