サスタビ編集部では、定期的に様々な場所で街歩きを開催しています。
今回訪れたのは、埼玉県草加市。
いったいどのようなサステナブルスポットがあったのか、ご紹介していきます!
「寝に帰るだけ」ではないベッドタウン
こちらが、今回訪れた東武スカイツリーラインが通る草加駅。草加せんべいで有名な草加市は、高度経済成長期に東洋一と呼ばれた松原団地がつくられたり、東京メトロ日比谷線・半蔵門線と直通していることから今でもベッドタウンとしてにぎわっており、人口も25万人を超えています。
しかし、草加市には日本全国にあるベッドタウンとは大きく異なるポイントがあります。それが「寝に帰るだけの街にならない」というコンセプトで街づくりが行われてることです。行政が一方的な街づくりを行うのではなく、市民の方も「自分たちの暮らしは自分たちで作ろう」という意識が高く、バラエティ豊富なお店やコミュニティが生まれています。
単なるベッドタウンでは持続可能性が薄くなる中、地元に対する愛着を持てるようにし、市民としてのプライドを育む。地元に誇りを持つ市民が長く根付き、豊かな暮らしを実現する。草加市は、そんなサステナブルな好循環が巡る街でした。
草加にはサステナブルなショップがたくさん
草加駅のすぐ横に建つ丸井には、観光案内所がありスタッフの方が市内のおすすめスポットを紹介してくれます。初めて草加を訪れた方は、まずこちらに立ち寄ってみるのもおすすめです。
駅から東に伸びる通りを進むと、左手に出てくるのがこちらのSOSO PARK。市の持っている遊休地に市民が集まり、様々なお店を運営しています。「Le repos」ではフェアトレードのチョコレートを販売し、「standユルリ」では、市内で生産された野菜を提供しサーキュラーエコノミーを形成しています。
先に進むと現れたのは、「蔵カフェ 中屋」。こちらは150年前から染料問屋の倉庫として活用されていた建物でした。それをリノベーションをし、カフェとして大人気のお店になっています。古い建物を壊して作り直すのではなく、良さを活かして大切に使い続ける、とてもサステナブルなお店です。ワークショップの会場としても使われており、市民の交流の場としても活躍しています。
市民の集まる場所としておすすめな場所が、もう一つあります。それが「町小屋つづき」です。「山歩きに山小屋が憩いの場となるように、とかくギスギスしがちな町中の想いの場となるように、予約制酒食処”町小屋”をオープンいたしました」というコンセプトがお店に掲げられていました。
旧日光街道沿いのあちこちで見かけたこちらのベンチ。ミチクサアートと呼ばれ、旧日光街道沿いに20台以上設置されています。それぞれのベンチは地域の方の自由な表現の場となっており、道の画廊として市民の方に楽しまれています。
体験も楽しめるサステナブルスポット
街歩き一行は、草加駅を離れて綾瀬川のエリアにやってきました。川沿いを彩る松並木は、国指定名称おくのほそ道の風景地となっています。このお散歩にぴったりの道にある素敵な風情の建物が、草加市政60周年を記念して作られた「漸草庵 百代の過客」です。
日本文学研究者のドナルド・キーン氏が命名したこちらの施設は、茶道や華道、琴、三味線などの邦楽だけでなく、落語や謡曲など様々な文化・芸術に触れることができるサステナブルな旅にぴったりの場所。お茶とお菓子をいただけるお休み処もあるため、旅人も気軽に訪れられます。
もう一つ、草加でぜひ訪れていただきたいのが「山香煎餅本舗」。化学調味料を使わない製法で、焼きの香ばしさ、米の甘み、天然だしと醤油が三位一体となったおいしいおせんべいを味わえます。
こちらでは、せんべい焼き体験ができるのがポイント。旅先で地元の伝統にチャレンジするのも、サステナブルな旅の醍醐味ですね。何度もひっくり返して自分で作り上げたおせんべいは、おいしさもひとしお。
ちなみに、市内には他にもたくさんのおせんべい屋さんがあります。さすが「草加せんべい」で有名な街ですね。それぞれのお店ごとに、硬さや味わいなどの違いがあるそう。街中には、こんな石碑まで。
草加せんべいのルーツには諸説ありますが、中でもおせんさんという女性のエピソードが広く知られています。日光街道の宿場町として草加にたくさんの人が行き交っていたころ、おせんさんは茶屋でだんごを売っていました。だんごは売れ残ると日持ちがしないのですが、捨ててしまうのはもったいない。そこで彼女が考えたのが、「だんごを平らにつぶし、乾かして焼餅にする」というアイディア。この焼餅が評判となり、現在の草加せんべいにつながっているという説があります。
地産地消のおいしい食事を楽しめる
街歩きメンバーがお昼をいただのは、「chavi pelto」。お店の隣に構えた畑では、循環的で持続性のあるエシカルな農業を営み、有機野菜を育てています。駅から徒歩10以内の場所にあるとは思えないほど、のんびりとして自然あふれた雰囲気です。
今回は、収穫作業を体験させていただきました。太陽の光をたっぷり浴びて元気に育った野菜たちは、色が濃くつやがありました。限られた敷地に多様な種類の野菜があり、みつばちを飼育することで生態系を作っています。
お店ではイートインだけではなく、お野菜やジュースなどを販売するショップもあるので、ちょっとのどが渇いたときなどにも立ち寄りやすいです。
また、こちらのお店の特徴は、市内にある「野菜とお酒のバル スバル」とワーキングシェアをしていること。スバルさんはもともと空き家になってしまっていた建物を活用し、chavi peltoでとれた新鮮なお野菜をはじめとするバルのお料理をいただくことができます。それぞれのお店のスタッフさんは、二店も行き来しながらフレキシブルに働いているそう。地産地消だけでなく、労働人口の面からもサステナブルなお店です。
進化し続けるサステナブルな街、草加
最後に訪れたのが、「シェアアトリエ つなぐば」です。仕事につながる・母親とつながる・地域につながるという3つのつながりをコンセプトに、複数のお店が入っています。「欲しい暮らしは私たちでつくる」という理念を掲げ、DIY(Do It Yourself)からDIO(Do It Ourselves)を目指して市民の方々が自分の知識や経験を共有してる点が特徴的。
1階にあるカフェは街のハブとして、たくさんの方が訪れます。シェアアトリエの一部のため、メンバーが日替わりでご飯やお菓子を提供しており、毎日通っても飽きません。街歩きの日には、一人で訪れ読書をしている方がいたり、近所の小学生が学校帰りに立ち寄ったりという風景が見られました。そして「お母さんの心のケアをしたい」とスタッフの方が話されていた通り、子連れのママさんがお喋りを楽しんでいました。
アトリエでは様々なワークショップが行われています。着付けやフラダンス、練りきり教室などを通じて、市民の方の憩いの場になっています。草加市民以外も参加OKのものも多いので、旅人も地元の方と交流しに参加してみてはいかがでしょうか。また、毎月第2土曜に開かれるマルシェも自由に楽しめるため、あわせておすすめです。
このように、草加市には自分たちの手で自分たちの街を作るという意識を高く持っている方がたくさんいらしゃいました。行政も市民が小さなビジネスを始めるサポートとなる「3ビズ」施策を行うなど、官民一体となって街づくりに取り組んでいます。今後も、草加市がどのようにサステナブルな進化を遂げるのか注目していきたいです。
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