秋川渓谷で清流を感じる 東京プチトリップのススメ (東京・あきる野)

 

今回の記事は、アウトドアナビゲーターの渡部郁子さんに寄稿いただきました

「川の中を歩いて秘境の滝を目指すリバートレッキングに参加しませんか?」とお誘いをいただいて、東京裏山ベースで春から始まるという新しいツアーを体験してきました。

集合は、東京裏山ベース。JR 五日市線の「武蔵五日市駅」の駅前広場からすぐの場所にある、アクティビティ拠点です。 ここは秋川渓谷の入り口。東京でありながら、 駅から歩いて10 分ほどの場所に 広がる秋川の河川敷は、四季折々の自然体験エリアとして多くの人を和ませています。

秋川沿いに、いくつもアウトドアスポットがあり、トレッキングやハイキング、キャンプなどで訪れる人も多い場所です。今回は、リバートレッキングという新しい体験に加えて、自転車でこのエリアをめぐるツアーとのこと。アウトドアは全般的に得意ですが、 実は 自転車だけは少々苦手な私、ドキドキしながら集合場所へ向かいました。


店先に並んでいたのは、電動アシスト付きの赤い自転車。どうやらこれが、今回の旅のお供のようです。まずは店内で、リバートレッキング用のレンタル装備を受け取り、それから 自転車の使いかたについて 簡単な レクチャーを受け、サドルの位置を合わせて、準備を整えました。受付で受け取るものの中に、セルフガイド用の冊子があり、ここから先のコースについて、詳細が記されています。準備ができたら、いざスタート。

最初に目指す目的地は「あゆみ橋」。目的地に到着して冊子のQR コードを読み込むと、「あゆみ橋」についての由来や地域の説明などが 出てきました。「あゆみ橋」は「鮎見橋」。この橋から川を見下ろすと、夏には元気に泳ぐ鮎の姿 を見ることができるそうです。そういえば、この地域の鮎は美味しいことでよく知られています。

しばらく風景を楽しんで、またさらに自転車を先に進めます。ここから先は、自転車や徒歩でしか入れないあぜ道を抜けて、このエリア一番の観光スポットへ。途中、急な登り坂が出てきて、自転車を降りて押そうかと迷っていたところに「ギアを下げればそのまま登れますよ」と後ろから声がかかりました。

今回のツアーでご一緒している参加者のひとりが、そのまますいーっと坂道を軽々登っていきました。さすが電動自転車。こういうときは なんとも頼もしい力を発揮してくれます。

坂道を登り切って到着した場所は、広徳寺。鎌倉時代に開山したと伝わる寺院で、境内に入ると大きなイチョウの木と立派な本堂が見えてきました。ここでまた冊子の QR コードを読み込んで、そこに記された広徳寺のガイドを見ながらぐるりと散策を楽しみます。広徳寺は何度も訪れたことがある場所ですが、ガイドにはたくさんの見どころが記されていて、それまで知らなかった新しい発見をいくつも教えてくれました。

広徳寺の散策後、また自転車にまたがって、佳月橋から黒茶屋へ。ここでは名物の「おやき」を購入して、渓谷を眺めながらおやつタイム。そしていよいよ、本日のメインイベント、「リバートレッキング」の入り口「しろやまテラス」へ向かいます。

しろやまテラスで、リバートレッキングガイドと合流しました。このツアーは基本的にはセルフツアーですが、リバートレッキング部分だけガイドが案内をしてくれるのです。ここでレンタル装備のウェーダーとシューズを装着して、またしばらく自転車を走らせて、林道を山の奥深くまで進みます。

自転車を降りてからが、いよいよリバートレッキング。沢に沿って水の流れをさかのぼるように、ガイドの案内に従って歩いていきます。先ほどまで自転車を走らせていた街からそれほど離れていないのに、ここはまさに秘境。水の流れの中に足を浸し て、じゃぶじゃぶと川を登る 体験に、非日常感が高まります。そして見えてきた清涼な滝。深い森に囲まれて川の中を歩いてきたものだけが辿り着ける神秘的な滝の姿に、心から感動し大きな達成感を得たのでした。


大満足して自転車に戻り、しろやまテラスへ再び到着したところで、ガイドさんとはお別れです。ここまでですでに見どころもたくさんあり、リバートレッキングにも心から満足したのですが、旅はまだ中盤。ここでレンタル装備を返却して、しろやまテラスのランチへ向かいます。

しろやまテラスは、もともと小学校だった建物をリノベーションして宿泊施設として 活用されている場所。「食飲室」と名付けられたレストランでは、なつかしの給食メニューのほか、地域食材を使ったランチを提供しています。ツアーにはランチ料金も含まれていて、電動自転車のキーとなる磁気カードでランチ代を支払うことができました。

遅めのランチを終えてゆっくり過ごしてから、もう一度自転車にまたがり、星竹集落を経由して十里木へ。いつでも横に秋川の流れがたゆたい、川面がキラキラと木漏れ日の光で輝いています。十里木に到着したら、自転車とはここでお別れです。ポートに自転車を返却し、そこから歩いて 石舟橋へ向かい、その先の「瀬音の湯」を目指します 。

「瀬音の湯」はこの地域で人気の日帰り温泉施設。敷地内に無料の足湯があり、周辺の登山やトレッキングを終えた人たちが足の疲れをいやすために集まる絶好の場所です。温泉はアルカリ度が高めで肌触 りがよく、ぬるめでじんわりと体の疲れをほぐします。時間があればぜひ入浴することをおすすめします。

瀬音の湯でゆっくり体を癒したら、十里木まで戻って、そこからバスで武蔵五日市駅へ向かいます。バスに乗れば駅までは約 12 分。駅前で最後に電動自転車のキーである磁気カードを返却して、この旅は終了です。

この地域に何度も足を運び、よく訪れている私にとっても、自転車での今回のセルフガイドツアーは新しい発見に満ちた楽しい旅でした。歩いてめぐる旅とも、車でめぐる旅とも違う、自転車ならではの良さが凝縮されていて 、この地を訪れるのが初めての人も、そうでない人も、きっと たくさんの新しい気付きを得ることができると感じました。

自転車という移動手段は、エコやサステナブルであるという視点からも、旅でもっと活用したいアイテムだと思います。最近は都市部だけでなく、旅先にもサイクルポートが広がり、様々な場所で気軽に自転車をレンタルすることができるようになってきました。だからこそ、それを活用するツアーの造成が、その地域の新たな魅力を生み出すコンテンツになる。それを実感できるツアーでした。

自転車のサイズの問題で、大人用自転車に乗れる体格または年齢 でなければ参加できませんが、電動自転車なので特別な自転車技術や体力は不要です。秋川渓谷を訪れる機会がある方は、ぜひ一度、リバートレッキングを楽しむセルフガイドツアーに参加してみてくださいね。

アウトドアナビゲーター
渡部郁子

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