海だけじゃない!渥美半島の魅力
愛知県の南東に位置する渥美半島(田原市)は、全国でも珍しい東西に長く延びる半島です。
北側は穏やかな三河湾、南側は広大な太平洋に面し、名物・大アサリをはじめ海の幸に恵まれています。半島の先端・伊良湖岬にある灯台や「恋路が浜」は観光客でにぎわい、太平洋側のビーチにはサーフスポットも多く、全国からサーファーが集まります。
そんな海のイメージの強い渥美半島に、実は屋久島の森に負けないくらい豊かな自然溢れる山もあるのです。そんな知られざる渥美の自然を案内してくれるのが「渥美半島☆自然感察ガイド」の藤江昌代さんです。
地元で見つけた「屋久島の森」?!
元は屋久島でネイチャーガイドをしていた藤江さんは、膝を痛めてしまい、地元・渥美半島に帰ってきました。それでも毎日のように屋久島を思い出して落ち込んでいたころ、たまたま参加した山歩きのイベントで身近にある屋久島を感じる森に出会い、ワクワクしたんだそう。
一度は地元を出たことで再発見した渥美半島の自然の魅力に気づき、「これは地元の方たちに伝えんといかん!」という思いから渥美半島☆自然感察ガイドを立ち上げました。
このツアーでは藤江さんが「なに?!ここ屋久島じゃん!」と思ったとっておきの森を、独自の視点で案内してもらえます。
五感を開いて、森を歩くと見えるもの
山に入って5分も歩かないうちに「この葉っぱのにおい、知ってるはずです」と、言われるままに葉っぱを指でこすって匂いを嗅ぐと何だかお腹がすいてくるようなおいしそうな香りが…。正解は山椒の木でした!まだ実がなる前の小さな幼木ですが、ピリっとした香りがしました。
このツアーではただ森の中を歩くだけではなく、五感を使って森を体感します。そんな自然 “感” 察を通して、普段とは違う視点や意識を持つことができます。
「ここにもいる!」と言われて足元の葉の上をよくよく見ると小さな不思議な生き物が。これはザトウムシという虫で、千と千尋の神隠しに出てくるキャラクター・釜爺のモデルになった生き物なんだとか。
言われなければ気づけないような様々な植物や生き物の姿を、ユニークな解説で教えてもらい、知識がない人でもワクワクしながら山歩きを楽しめます!
静かな森でコーヒーを一杯
コースの折り返し地点に着いたところで藤江さんがコーヒーを淹れてくれました。
少し汗ばんだ体にあたる涼しい風と、やさしい木漏れ日、近くを流れるせせらぎの音に身をゆだね、用意していただいたお菓子と一緒に味わうコーヒーは格別です。
今回参加したのは『田原の屋久島』を感じる山歩きのコースでしたが、もう一つの『森カフェコース』ではここで自分のために自分で挽いたコーヒー豆を使って淹れたコーヒーをじっくり味わうこともできます!
自然の中で、自分と向き合うひと時
藤江さんはガイドとして屋久島に行く前、地元の高校を卒業して就職しましたが、性に合わず退職してからアルバイトを続ける20代だったそう。しかし、旅行で訪れた屋久島とリゾートバイトで滞在した宮古島で「私は自然が好きなんだ、自然に関わる仕事に就きたい!」と気づき、30歳の時に専門学校に入学しました。そうしてプロのガイドとして屋久島で10年ほど働いた後、いまは地元・渥美半島でガイドツアーをスタートしたのです。
そんな藤江さんのライフストーリーを聞きながら、参加者も今自分が感じている違和感や、迷っていること、これからの生き方などについてぽつりぽつりと語り、また山道を下りながら一人思考を巡らせていると、普段は仕事や日常に追われてじっくり考えることのできない自分の内側の声が聞こえてくるような気がしました。
身近な自然の中、足元に広がる宇宙
始めて渥美☆自然感察のことを知ったとき「渥美半島なのになぜ屋久島なんだろう?」と疑問に感じました。藤江さんに尋ねると「屋久島みたいだからここに来てほしいわけじゃないんです。それに屋久島に行かなきゃ豊かな自然は味わえないってことでもない。」と。
大切なのは、愛知であれ東京であれ、普段暮らしている身の回りの河川敷や公園、道のわきや家の近く、私たちのすぐ足元には神秘的で素晴らしい自然が宇宙のように広がっているということ。そんな自然に気づき、触れ、癒されたりパワーをもらったりすることができるということなのです。
藤江さんはガイドツアーを通じて、生まれ育った渥美半島でこの地にある豊かな自然の魅力を伝え守りながら、私たち誰もの周りにある身近な自然の美しさや大切さを教えてくれました。
旅に出かけた先で、その地域のことだけでなく、自分の暮らしている地域にある魅力や足元の自然に気づかされる、素敵な体験でした。
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