サスタビでは、一つのテーマに対して複数のライターが様々な角度から探求する特集を組んでいます。 今回のテーマは、「クリエイティブツーリズム」です。オーバーツーリズムが叫ばれる今、「旅人=迷惑な存在」と感じている方も少なからずいらっしゃいます。 自分の暮らす街にやってきて、ごみをポイ捨てしたり、道を混雑させたり…… 地域の方に「来てほしくない」と思われる行動をする旅人も、少なからずいます。しかし、旅人は本来、地域の方にポジティブな影響を与えられるはずです。 旅人が旅先の地域や文化を消費するだけではなく、地域住民と一緒に新しい価値を生み出す。 そんな新しい旅の姿勢について考えていきます。 |
第一弾:「創造的な観光」ってなに?クリエイティブツーリズム解説
第二弾:ライターの体当たり勉強記録!クリエイティブツーリズムについて初めて考えてみた
クリエイティブツーリズムとは
「サステナブルな旅」を提案するわたしたちサスタビは、さまざまな角度から新しい旅の在り方を模索してきました。
今回ご紹介する「クリエイティブツーリズム(創造的観光)」もそのひとつ。
2000年代に登場・提唱された概念であり、元は90年代の文化観光や観光における持続可能性の文脈から派生しています。
クリエイティブツーリズムをとらえる上で押さえたいキーワードは「参加型体験」、「地域とのつながり」、「持続可能性」の3つ。
参加型体験は、旅行者がアートやデザイン、音楽など創造的な活動に直接参加するもの。次に創造的活動を通じた地域貢献や活性化があり、最後にはクリエイティブツーリズムを通じた旅人の再訪や地域経済の循環を挙げることができます。
ユネスコ・クリエイティブシティーズネットワーク(ユネスコ創造都市ネットワーク)について

出典:https://www.mext.go.jp/content/20240104-mxt_koktou02-100014744_3.pdf
上記ではクリエイティブツーリズムの大枠について触れましたが、この概念は欧米をはじめ21世紀の観光モデルとしてユネスコも推進しています。
2004年に創設された創造性(creativity)を核とした都市間の国際的な連携によって、地域の創造産業の発展を図り、都市の持続可能な開発を目指す「ユネスコ創造都市ネットワーク」には、令和5年11月1日現在世界350都市が加盟。
7分野(文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化)に分類されるもので、日本は11都市が加盟認定されています。
日本国内のクリエイティブツーリズムおすすめ都市4選
今回は、国内のユネスコ創造都市から4都市にスポットをあてその概要や実際に参加できる催しなどを紹介します!
【デザイン創造都市】北海道旭川市

出典: https://design-asahikawa.jp/about/
旭川市は、明治時代より鉄道による軍関係の輸送や人の行き来が盛んとなったことからさまざまな産業が発達してきた道北の要所であり、クラフトや家具などのデザイン活動もそのひとつです。
1976 年の旭川デザインシンポジウム開催から始まり、先進的な海外デザイン思想を取り入れるための活動や2015年以降毎年開催している「あさひかわデザインウィーク」などの取り組みが評価を受け、デザイン分野では2019年に名古屋市、神戸市に次ぐ3都市目の加盟認定を受けました。
「あさひかわデザインウィーク」は毎年6月に「北の大地の「自然」や「人間」が持っている潜在力をデザインの力で引き出し、持続可能な地域社会の実現を目指す。」ことを目的に開催されています。
期間中はあさひかわ地域でオープンファクトリー、ミートアップ、ワークショップなど多くのデザインイベントで彩られるそう。
会期は約10日間にわたるため、観光やワーケーションなどと合わせて訪問してみてはいかがでしょうか。
【食文化創造都市】大分県臼杵市

出典:https://gastronomy-usuki.com/food_culture
臼杵市は、味噌・醤油などの醸造・発酵文化や有機農業への取り組みが評価を受け、食文化分野では2021年に山形県鶴岡市に次ぐ2都市目の加盟認定を果たしました。
江戸時代に藩の財政難に見舞われながらも、人々の質素倹約の精神の元生まれたと言う郷土料理や、最上位にランクされる水から育まれた日本酒や味噌などが特徴です。
2024年には、臼杵の食文化を楽しめる出店やワークショップ、特別なランチコースなどを堪能できる「うすき食文化祭」や、農業や食にまつわる映画の上映や地元の有機農家らによるトークショー「臼杵オーガニック映画祭」などのイベントが実施。
醸造・発酵産業・循環型社会などのキーワードが気になった人は、ぜひ臼杵食文化創造都市推進協議会のHPより最新情報をチェックしてみてください!
【文学創造都市】岡山県岡山市

出典:https://www.city.okayama.jp/bungakucity/0000054896.html
岡山市は、「坪田譲治文学賞」「市民の童話賞」など児童文学をはじめとしたさまざまな文学資源を保有しており、文学分野では2023年に国内初の加盟認定となりました。
人口に対して書店数が多いことや、岡山県立図書館が来館者数や貸出冊数が日本一を誇る点など文学の豊かさにつながる土壌がある都市なのだそう。
2023年よりスタートしたおかやま文学フェスティバルは、市内の街中の複数会場を舞台に全国の出版社や書店が集まる催しや古本市、ZINEの即売会などを通じて市民が文学と出会う交差点となるイベント。
岡山市内の会場を巡りながら、文学や街の魅力を発見する旅に出てみませんか。
【映画創造都市】山形県山形市

出典:https://www.facebook.com/FilmYamagata/
山形県山形市は、長年にわたり市民の手によって行われてきた映画上映や国際映画祭開催などの取り組みが評価を受け、映画分野では2017年に国内初の加盟認定を果たしました。
映像分野の取り組みだけに留まらず、山形公共楽団の活動や地元の東北芸術工科大学との連携など多岐にわたる文化活動も盛んなこともポイントです。
隔年開催されている山形国際ドキュメンタリー映画祭や、廃校をリノベーションした「やまがたクリエイティブシティセンターQ1」にて通年を通して実施されているクリエイティブ関連の催しなど、街の滞在を楽しみながら暮らすように旅をしたい人にもおすすめのイベントが多数企画されています!
クリエイティブツーリズムを体験してみよう!
旅人にとって新しい価値を提供するだけではなく、地域社会にとっても文化や伝統を後世に伝えながら経済的利益を得る手段ともなる持続可能性を秘めた新しい旅の形のひとつであるクリエイティブツーリズム。
地域を巻き込んだアートフェスなど、近年さまざまな動きが登場していますが旅人や観光客がコンテンツを消費する表面的なものに留まらせず、訪問をきっかけに移住や関係人口となる、自身もボランティアやクリエイターとして関わりを持つなどより一歩踏み込んだアクションを起こすことや好影響をもたらすことを意識してみてはいかがでしょうか。
特集「クリエイティブツーリズム」の記事の第四弾は、下記からご覧いただけます。
クリエイティブツーリズムと「ikibase」の融合による地方創生(2025年2月8日公開)
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フリーのライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通し世界各国の社会問題を知る。事務職を経て独立後、ソーシャルグッドに関連する記事を執筆。都会暮らしからはじめるエシカルな暮らしを実践中。
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