「SDGs」の取り組みが世界的に広がり、サステイナブル・ツーリズムの考え方が浸透してきた昨今。「いつか訪れてみたい憧れの宿」として名前が挙がる「星のや軽井沢」では、なんと100年も前から自然エネルギーの活用に取り組んでいることをご存知ですか?
1914年の開業当初から自家水力発電システムを開発
星野リゾートは、長野県軽井沢で最初の施設「星野温泉旅館」を開業してから、2022年で108年目を迎えました。
開業当時、現地には電気がなく、電力会社に頼むにも莫大な資金が必要。そこで、やむなく独学で自家発電を試みました。苦難の末、木製の水車を回して、日本最初の本格的な自家用小水力発電を誕生させることに成功。
現在では、敷地内に2か所の水力発電所があり、直近4年間の年間平均発電量は約76万KWhにも及びます。それ以降、星野リゾートは環境に関するさまざまな活動を続けてきました。
(画像提供:星のや軽井沢)
客室にも自然のエネルギーを
「星のや軽井沢」が開業したのは、2005年。敷地内を歩いていると、路地が複雑に入り組んでいることに驚きます。これは周囲の環境と調和したランドスケープと建築の在り方を目指してきた証だといい、地形をそのまま活かし、自然を大切に「谷の集落に滞在する」というコンセプトを基にした景観を作りあげました。
森に溶け込むように点在する客室は、日本家屋の伝統を活かし「水波の部屋」「山路地の部屋」「庭路地の部屋」の3タイプ計77室。
部屋の中にも軽井沢の自然エネルギーを活かした工夫が随所に見られます。例えば、天井に設けられた「風楼」と呼ばれる通気口は、部屋に風を通すための工夫で、夏はちょうど良い涼しさが保たれます。
冬は温泉排湯熱や地中熱などのエネルギーを活かした床暖房が冷えやすい足元からあたためてくれ、寒い日も快適に過ごすことができるというのです。
大きな窓から見える四季折々の景色を眺めながら、非日常空間で時間を忘れ、自然と静寂に包まれた環境でくつろぎのひとときを過ごせるのも「星のや軽井沢」の魅力です。
あえて「SDGs」を掲げずに
星野リゾートは「勝手にSDGs」と命名して経済価値と社会価値を両立する経営に取り組んでいます。
- ゴミ資源化100%を目指す「ゼロエミッション」
- 自ら使うエネルギーはできるだけ自給する「EIMY(Energy In My Yardの略)」
- 自然を守りながら観光資源として持続的に活用する「エコツーリズム」
プラスチックごみ削減に向けた活動のひとつとして「ペットボトルフリー」 に挑戦しており、客室でのミネラルウォーター入りペットボトル提供をやめ、パブリックスペースにウォーターサーバーを設置しています。
ほかにも、星野リゾート30施設で、年間100万本以上も廃棄されている使用済み歯ブラシを回収、再資源化することで、プラスチック製品への再利用を推進。
ゲストが不便に感じることなく、ごく自然にサステナブルな活動に参加できる仕組みとなっています。
地域文化を活かした体験から、その土地の魅力に気づく
その土地らしさがつまった客室や料理は「星のや」の魅力のひとつ。宿泊客が地域の文化について触れ、知ると同時に地元の方に仕事を発注することで、文化の継承にも貢献することができるという考え方を大切にしています。
メインダイニングの「日本料理 嘉助」では「自然とつながっているように感じる食事の時間」を提供し、お皿に装飾される葉や花は「星のや軽井沢」の庭から摘まれたものだとか。川魚やジビエ、季節の野菜など、地域の食文化と掛け合わせをたのしむことができます。
軽井沢の環境保全に貢献する「ピッキオ」
「軽井沢野鳥の森」は、星野温泉2代目経営者の星野嘉助氏による野鳥の保護活動が行われていたことなどから、1974年に全国で初めて国設の野鳥の森に指定されました。
自然観察ツアーを開催する「ピッキオ」は、野生動植物の調査及び保全活動を含めたエコツーリズムを実践しています。
「人間の安全を守ること」と「野生のクマを絶滅させないこと」、人間とクマの共存を目指したツキノワグマの保護管理事業も行なっており、日本初のクマ対策犬「ベアドック」を用いたクマの追い払いやクマに荒らされないゴミ箱を開発。クマの目撃を大幅に減らすことに成功しています。これらの活動の継続が評価され、環境省による第1回エコツーリズム大賞も受賞しているのです。
「星のや軽井沢」には、この地で100年以上の年月をかけて培われてきたサステナブルツーリズムの形がありました。リゾートを運営しながら、自然環境保全と環境負荷を軽減するための取り組みを継続して行なっていく姿には、旅行者も学ぶべきことは多いのではないでしょうか。
星のや軽井沢
住所:〒389-0194 長野県軽井沢町星野
電話:0570-073-066(星のや総合予約)
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