気候変動で旅はどう変わる?2050年も持続可能な旅を続けるために考えたいこと

持続可能な旅の情報やあり方を発信しているサスタビでは、サステナビリティを考える上で重要な気候変動についても発信を続けてきました。

実際、近年の気候変動により旅にはどのような影響が出ているのか。そして私たちは将来的に旅を続けることができるのか。今回は、国内外の動向をご紹介しながらその現在地を確認していきます。

このままでは、2050年に旅はできなくなる?

全産業から排出される二酸化炭素の内、8~11%が旅行・観光業が排出するものです。このままでは観光業による輸送関連の排出量は2030年までに2016年と比較し25%増加するとUNWTO(世界観光機関)※1の調査で予測されており、グラスゴー宣言※2では観光部門の二酸化炭素量について2031年までに半減、2050年には実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すことを掲げています。

一方で、世界の観光需要は伸び続けています。2017年には13億人であった世界の海外旅行者数は、2030年には18億人に達するとする予測もあります。

知見を広げ、心身のリフレッシュ、新たな自身の発見など人生を豊かにする旅ですが、このままでは、2050年に旅はできなくなってしまう未来が訪れてしまう可能性が高くなっています。

世界で起こっている“異変”とは?予測されている旅や観光への影響

カナダやオーストラリアの山火事、タイで頻発する洪水など世界に目を向けると目を覆いたくなるような惨劇が日々起きています。

「気候難民」と呼ばれる気候変動によって住む場所を追われたり生活の糧を失う人々も今後さらに増加すると予測されているなど、もはや旅を語る以前に人々の命や人権に関わる問題が山積しているのです。

では、旅や観光において気候変動はどのような影響をすでにもたらしているのか?そして今後はどうなっていくのでしょうか。

ギリシャでは熱波や山火事が発生

エーゲ海を臨む人気のバカンス地であるギリシャ。オーバーツーリズムに悩まされている国のひとつでもありますが、気候変動の影響を強く受けている国でもあります。6月の熱波、7月には過去最高の気温を更新……これらは、観光地の閉鎖や熱中症による死亡者を出す事態となりました。

高い気温は、2023年に発生した大規模な森林火災など数々の山火事の要因ともなっている他、観光客や地元住民の避難が余儀なくされる事態へと発展した火災もあり、観光業を脅かす存在となっているのです。

結果的にギリシャ政府は、2024年に気候変動対策として観光税を導入しました。気候変動に向き合わなければ、わたしたちはそのツケを支払うこととなるのです。

乱気流の発生率が上がるなど空の旅のリスクが高くなる

「飛び恥」とも近年言われることもあるように、二酸化炭素の排出源として話題にのぼることの多い飛行機は、実は気候変動の影響を受ける側でもあります。代表的な影響としては、乱気流の発生による航空機内の事故。1979年と比較し2060年までに180%増加するといった予測も……

集中豪雨のひょうによる機体損傷や滑走路の浸水、猛暑による飛行の遅延・飛行時間の延長のリスクも上がるとナショナルジオグラフィックは報じています。

ウィンタースポーツに「雪」が足りない

毎年スキーやスノーボードを楽しみとしている人も多いのではないでしょうか。長野県白馬など、日本国内にもインバウンド観光客が多く来訪するスキー場やスノーボード場がありますが、既に気候変動の影響があらわれ始めています。

関連イベントの中止、シーズン自体の短縮によって愛好家たちの行き場はなくなることは明らかであり、米国のスキー場における経済的損失は2050年代に約10億ドル(約1500億円) とする調査結果も。

対応策として、前年に貯蔵しておいた雪や人工増雪などの方法も取られているものの、完全に補完できるものではなくウィンタースポーツ全般は過去のレジャーとなる可能性が高まっています。

気候変動の影響を受けやすい50の世界遺産

気候変動のリスクを分析する企業Climate Xが、1223カ所にのぼるユネスコ遺産を全て分析し気候変動の深刻な影響を受けるとする50の世界遺産を発表しています。

例えば9世紀に建設されたとされるインドネシアの灌漑システム、スバックでは干ばつや洪水リスクが、スコットランドで初めて世界遺産に登録されたセント・キルダ、ニュー・ラナークでは地すべりや暴風雨などのリスクが非常に高いとするなど、緊急の対策が求められています。

観光業界や旅人に求められる「旅のあり方」

一刻も早い対応が必要とされている気候変動対策。旅行・観光業界は、気候変動による影響を受ける存在である一方、温室効果ガスの排出源となっていることも明らかです。

2050年までのカーボンニュートラル実現のため、旅行者に二酸化炭素の排出量の制限を求める「カーボンパスポート」など制限を設けざるを得ないシナリオも議論されている中、旅行者であるわたしたちひとりひとりの姿勢が「サステナブル」な旅を続けることができるかどうか問われています。

1 ※2 グラスゴー宣言:観光業における10年間の気候変動対策への取り組みを求める緊急の世界的呼びかけ

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