ベトナムのムーカンチャイで学んだ、文化を「体験する」ということ

こんにちは、サスタビ運営の岡村です。今回は、ベトナム北部の山岳地帯・ムーカンチャイを訪れた旅の記録をお届けします。

普段から「旅は観光ではなく、学びの場」だと考え、“旅×教育”をテーマに活動しています。そんな私にとって、今回の旅はまさに座学では学べない体験する教育の時間でした。棚田や民族文化、ホームステイなど、現地の人々の暮らしに触れるなかで、「これこそサステナブルツーリズムだ」と感じる瞬間がいくつもありました。この記事では、ムーカンチャイで見た景色・出会い・学びを通して、旅と持続可能性の関係についてお伝えしていきます。

ムーカンチャイを訪れた理由

SNSで見かけた、ベトナムにある一面の棚田の写真。その投稿をきっかけに、ムーカンチャイというエリアの存在を知りました。(近くにあるサパというエリアも検索ではよくでてきますが、実際の棚田はムーカンチャイにあるようです)発信していた方が現地の文化や人々の暮らしを丁寧に紹介しており、そこから深く調べてみると、この地では少数民族・モン族の方々の家にホームステイできることを知りました。

「その土地のことを知るために、そこで暮らす人の家に泊まる」。たとえ1泊2日でも、そんな体験ができる場所があると知った瞬間、旅人としての心が大きく揺れ動きました。自然の中で生きる人々の知恵、そして文化がどのように受け継がれているのかを体感したい。そんな想いから、ムーカンチャイへの旅を決意しました。

少しこじつけかもしれませんが、このきっかけはサスタビの掲げる「20ヶ条」にもつながると思います。

 

旅先で発見したサステナブルな活動を友達とシェアしよう

20ヶ条の中の一つに、「旅先で発見したサステナブルな取り組みを、友人やSNSでシェアしよう」という項目があります。SNSの発信をきっかけに興味を持ち、実際に行動した今回の旅は、まさにこの項目の結果を表しているのではないでしょうか。旅で感じた小さな感動や、まだ知られていない地域の魅力を共有することは、誰かの「次の旅」のきっかけになることが多いです。ぜひみなさんも、自分の旅の中で見つけた心動く瞬間を発信してみてください。

ハノイからムーカンチャイへ

ハノイからローカルの夜行バスに乗って約8時間、途中から舗装されていない山道をガタガタと進んでいきます。お世辞にも快適とはいえませんが、不思議と嫌な感じはなく、むしろ「これを体験しに来たんだよな」と思えるような、そんな時間です。快適さや効率だけを求める旅もありますが、こうした「移動の過程」こそが旅の醍醐味であり、現地の人の生活に少し近づける時間なんじゃないでしょうか。

朝方、あたりがまだ真っ暗なうちにムーカンチャイに到着。事前にお願いしていた宿にすぐ案内してもらい、そのまま少し仮眠をとりました。宿の予約は、予約サイトではなく人づての紹介。そもそもバスを降りる場所も、バス停ではなく運転手さんに頼んで宿の近くで降ろしてもらうというスタイル。スマホのアプリや、予約サイト、配車アプリなどが発達した現代において、こういう「人の手を介した旅」は久しぶりで、なんだか懐かしい気持ちになりました。

モン族のロウケツ染めに触れる

朝ごはんをいただいたあと、地元の職人・ニンさんの工房でモン族の伝統技法であるロウケツ染めを体験。モン語には文字がないため、模様や刺繍が文化や物語を伝える大切な手段になっているそうです。文様ひとつひとつに、家族の絆や自然への感謝、そして人生観が込められています。

私は、「家を支える柱(強さ)」「シダ(男女の幸せ)」「水牛の糞尿(観察力と想像力)」「太陽と山(モン族の象徴)」と、欲張って4つのモチーフを描きました。絵を描くのは得意ではありませんが、お手本を真似しながら筆を動かすうちに、ただ「見る」だけでは気づけなかった細かな意味や形の違いが、少しずつ見えてきます。体験を通して細かく理解することで、そのあとに出会うモン族の衣装や工芸品、博物館の展示が今までとは違う景色のように、面白くなりました。観光体験というよりも、この作業をつうじて文化の解像度が上がったのを感じました。

最近では旅も「モノ消費」から「コト消費」へと移り変わってきているといわれますが、ただ楽しいだけの“エンタメ的な体験”よりも、歴史や文化の背景を学べる体験を選ぶことで、その土地への理解がぐっと深まると思います。心に残るだけでなく、学びとしても確かに意味のある時間でした。糸作りから、機織り、そして模様をつけて藍染まで、便利さの対極にある一連の工程ですが、昔ながらの技法を受け継ぎ、次の世代へ継承する「伝統を未来へつなぐ姿」こそ、持続させていくべき美しいものだと思います。

ムーカンチャイで見た忘れられない棚田の絶景

午後は、この旅のハイライトでもある棚田ビュースポット巡り。クルマでは入れない細い山道を、現地の人のバイクの後ろに乗って進んでいきます。「え、ここ通るの!?」と思わず声が出るほどの悪路。後ろに乗っているだけでも笑ってしまうような揺れ具合で、目的地にたどり着くまでの道のり自体がアトラクションのようでした。今回は3か所ほどの絶景ポイントを巡りましたが、途中にはバイクを降りて、自分の足で歩かなければ行けない場所も。

だからこそのただ連れて行ってもらうだけでは得られない、“自分で辿り着く”という小さな達成感があり楽しかったです。訪れたのは初夏で、棚田は青く茂った稲でいっぱいでした。秋にはこの景色が一面が黄金色に変わるそうで、また別の季節にも訪れたいなと、ここにまた帰ってこようとそう思いました。

棚田は、過去の人たちが生きるために積み重ねてきた風景。代々受け継がれ、手をかけ続けることで、今もこの美しさがあるのかと思うと、この棚田の景色こそサスタビで取り上げて、未来へと残していくものなのかもしれないと感じました。

モン族の家で過ごす夜

棚田巡りを終えて、ホームステイ先の家に到着。「ホームステイ」と聞いて想像していたよりも設備が整っていて、宿泊者用のコテージまであり少し驚きましたが、これなら旅慣れていない人でも安心して泊まれると思います。そしてこの旅でいちばん楽しみにしていた、モン族の方々との夕食の時間がやってきました。

家族みんなで囲む食卓には、自家製のお酒と家庭料理が並び、はじめて口にする味ばかりで、気づけば箸が止まりません。言葉は通じませんが、ジェスチャーや簡単なベトナム語、そして何度も交わす乾杯で、気づけば笑い声が絶えない時間になっていました。

料理は全体的にシンプルで、素材の味がしっかり。モン族の食文化では、あまり複数の食材を混ぜることが少ないそうです。その中で特に印象に残ったのが、みょうがの炒め物です。日本で食べるみょうがとは香りも味も違っており、お酒が好きな人なら間違いなくハマると思います。あたたかく迎えてくれた家族の笑顔と、知らない土地で「いただきます」を言える幸せ。短い時間でしたが、本当に心に残る夜になりました。

モン族伝統の楽器を体験

翌朝、霧に包まれた棚田を眺めながら朝食をいただきました。目の前の壮大で、何十年も受け継がれて景色を見ながら、「この土地で暮らす人たちが紡いできたもの」をあらためて感じました。食後にはモン族の伝統楽器をいくつか披露していただき、実際に自分たちも体験させてもらいました。

特に印象的だったモン族の定番の楽器であるケーン。形状も音も、言葉はつうじないけれど、音楽を通じて心が通じる瞬間でした。

さいごに

これまで60カ国を旅してきた中でも、ムーカンチャイでの時間は特別なものでした。「少数民族と暮らす体験」と聞くと、ハードルが高く感じる人もいるかもしれませんが、ある意味で観光客の受け入れ体制もととのいつつあるこの村では、現地の方々が温かく受け入れてくれ、清潔な宿と安心できる環境が整っていました。

自然と共に生きる知恵を学び、文化を受け継ぐ人々の誇りに触れる旅。便利さや効率では測れない価値が、世界にはまだたくさんあり、そしてその価値は、人と人との間にあるのだとあらためて感じました。

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