「マイクロモビリティ」という言葉を聞いたことはありますか?
直訳すれば、「超小型の移動」を意味するこの言葉。サステナブルで地球や環境にやさしい観光移動を心掛ける時、マイクロモビリティは力強い味方になってくれます。
知っているようで知らない、マイクロモビリティについて掘り下げてみましょう。
「超小型モビリティ」
3つの区分
マイクロモビリティにはたくさんの種類があります。電動小型自動車や電動キックボード、電動の自転車などが挙げられ、日本でも世界でも普及されてきています。まずは日本の事例についてみてみましょう。
日本では、「超小型モビリティ」と呼ばれる電動小型自動車の導入がとくに進んでいます。国土交通省の定義によれば「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両」とされています(※1)。
また超小型モビリティは、車体の大きさなどによってさらに3つの区分に分けられています。下の図表における灰色の部分がその3種(第一種原動機付自転車、軽自動車<型式指定車>、軽自動車<認定車>)にあたります。
詳しくは国土交通省の説明をご覧くださいね。
認定制度も!
国土交通省は、超小型モビリティでも公道を走ることができるようにするために、2013年の1月から認定制度を創設しています。2013年、つまり今から10年以上も前から、マイクロモビリティの普及に向けた取り組みが進展し続けてきたということですね。
超小型モビリティは一般車と比べて、その名の通り小さいですが、だからといって交通ルールを軽視してよいものとはなりません。安全の確保を最優先に考えること、高速道路の走行はしないこと、また交通の安全のために一定の措置が採られた場所・区間に限定して運行すること、といったことを車両の大きさや出力とともに条件づけることで、超小型モビリティも(走行区域は限定されますが)公道を走ることができるようになっています。
トヨタの超小型電動自動車(BEV)
トヨタは、「BEVの森」と名づけられた、一人ひとりの移動ニーズに合わせたサステナブルな自動車システムの展開に取り組んでいます。BEVとは、「バッテリー式電動自動車(Battery Electric Vehicle)」のこと。二酸化炭素を排出しないエコカーを用いて、現代の人びとが抱える車移動をめぐるニーズや不安(「毎日は運転しない」「駐車スペースに困っている」「運転が不安になってきた」)を解決するようなモビリティの実現が意図されています。
超小型モビリティは、必要な時に必要なだけ利用するという「シェア」型の運用とも、とても相性がよさそうですね。大量生産と大量消費を土台とした「保有」ではなく、ニーズに合わせて最適化された「利用」を軸とした、次代の車との関係性を先取りしているような気もします。
実際にトヨタでは、地域の過疎化や「ガソリン難民」の問題解決に超小型モビリティのシェアリングを活用するなどしています。旅先・観光地でも目にすることが増えそうですね(たとえば大分県・姫島はマイクロモビリティを導入したエコツーリズムを展開しています※2)
トヨタではこのほかにも数多くの取り組みや、新しい超小型モビリティの導入が進んでいるようです。気になる方はぜひ検索してみてください(※3)。もちろん、今回の記事で紹介したトヨタ以外にも、日産やヤマハ、ホンダやノイエス、コボットなど、たくさんのメーカーによる取り組みが広がっています。
海外の一例
もちろん海外でも、持続可能な観光地づくりや地域づくりの文脈のなかでマイクロモビリティが展開してきています。
たとえば電動キックボード。政府観光局によって2027年までに「サステナブルな観光立国」となることが目指されているポルトガルや、2020年度の世界SDGs達成度ランキング世界一のスウェーデンなどを筆頭に、市内移動における電動キックボードの普及がめざましいです。
市内での日常的でこまごまとした用事の際に、自動車をつかわずに移動することを可能にする電動キックボード。もちろん二酸化炭素の排出はありません。また、スマートフォンのアプリやQRコード、GPS等を用いることで「乗り捨て自由」で使いやすいモビリティを実現しています。観光客ももちろん利用できます。自転車よりもさらに小型、省スペースですね。
公共交通機関や徒歩、自転車とも組み合わせて
「モビリティ」というと、モーターがある乗り物を連想する方が多いかもしれません。じっさいに今回紹介してきた「マイクロモビリティ」という言葉は、電動小型自動車や電動自転車などを想定した言葉となっています。
他方でモビリティは、もっともっと広い視点で捉えることができる言葉/概念です。歩きでの移動も徒歩のモビリティと表現することができますし、電動ではない普通の自転車もまたモビリティの一種です。バスや電車などの公共交通機関も同様です。
今回の記事では電動小型自動車や電動キックボードを例にマイクロモビリティを紹介してきましたが、実際の旅や観光移動ではさまざまな移動手段を組み合わせて複合的に「移動を作っていく」ことが旅人には求められます。旅に出る前に、旅先やその道中でどのような移動手段の選択肢があるか下調べをし、無理のない範囲でサステナブルな移動を心掛けてみましょう。
家から目的地までは電車、駅から宿泊施設まではレンタサイクル、夜は宿泊施設の周辺を散歩し、翌日は電動キックボードで市内散策(疲れたらバスで宿泊施設に帰る)、最終日は電動小型自動車でちょっと遠くの温泉に……そのような、環境にやさしいモビリティだけでつくる旅路も楽しそうですね。
次回の記事では、そのように「観光において複数の移動手段を最適に組み合わせること」を意図した言葉「観光型Maas」について紹介したいと思います。
※1 国土交通省「超小型モビリティについて」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000043.html)2023年4月20日最終確認。
※2 姫島エコツーリズムHP(http://himeshima.tplan0301.com/)2023年4月20日最終確認。
※3 トヨタ「小型モビリティの世界」(https://toyota.jp/personalmobility/index.html)2023年4月20日最終確認。
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