サステナビリティをめぐる分断を防ぐために必要なこと

社会の分断

観光を通じてサステナブルな社会を創っていく。この目標に近づくためには、「持続可能な社会」の実現に向けた共通認識が必要不可欠です。

しかしながら現在の社会では、観光に対しても、そして「サステナブルな社会の実現」という目標に対しても大きな社会的分断が生じているように思われます。それぞれについて、みていきましょう。

観光をめぐる意識の分断

観光に向けられる目は様々です。それは社会を活性化させるものとして期待とともに語られることもあれば、社会を壊す悪として捉えられることもあります。

観光の可能性

たとえば観光は、その経済効果が注目されます。日本もインバウンド政策にはとりわけ力を入れていますが、それは外国人に日本を訪れてもらい、消費活動をしてもらうことで外貨を獲得し、日本の経済を潤してほしいからにほかなりません。

また、観光は世界の平和や相互理解に貢献できる側面も有しています。観光は世界最大の平和産業とも呼ばれます。1967年、国連は「観光は平和へのパスポートである(Tourism, Passport for Peace)」という標語を掲げ、同年を国際観光年に定めました。日本も昭和42年度の『運輸白書』のなかで、観光を「世界各国の人々の相互理解を促進し、種々の文明の豊かな遺産に対する知識を豊富にし、また異なる文明の固有の価値をより正しく感得させることによって世界平和の達成にも大きな役割を果たすもの」と位置づけています。

https://sustabi.com/blog/5277/

経済に限らない側面でも、観光はその可能性が期待されています。「観光を通じた地方活性化」というとき、そこでは観光による経済効果だけでなく、地域のインフラ開発や商業開発、地域住民の「参加」に伴うコミュニティの醸成、「伝統」や文化の継承・創造といった多様な効果が見込まれています。

観光の負の側面

しかしながら観光は、地域社会に様々な負の影響や負担を与えるものとして問題視されてきた側面もあります。

代表的なものはオーバーツーリズムです。大量の観光客が訪れることで、地域住民の日常生活に支障がでてしまったり、地域の環境が大きく変容してしまったりする問題が現代日本では頻発しています。そうした問題によって、観光者に嫌悪感を抱いたり、観光者を排除しようとしたりする「ツーリズムフォビア(観光者嫌悪)」と呼ばれる感情も地域のなかで生じてしまっています。

サスタビにおいて「観光や旅を通じて…」というとき、このような「観光をめぐる認識の社会的分断(あるいは二極化)」は難しい問題として現れてしまいます。観光によって利益を得てきた地域や人びとと、観光によって不利益を被ってきた人びととの間には、観光に対する考え方や認識、意見の差異が大きく存在しており、そのギャップは「観光や旅を通じてサステナブルな社会の実現をめざす」というスローガンに対してもそれぞれの立場で異なるイメージを喚起するからです。

観光には良い面もあれば悪い面もあること。そして、その悪い面を可能な限り減じながら、良い面がもつ可能性を最大化していこうとすること。「観光=良いもの」「観光=悪いもの」といった二者択一的な捉え方ではなく、どうすれば観光自体の課題も減らしながら(観光自体をサステナブルでより良いものにしながら)その可能性を豊かにしていくことができるかという「第3の道」に向かう共通認識を社会全体で養っていくことが大切です。

サステナビリティへの認識のギャップ

同じような問題は、じつはサステナビリティをめぐっても生じているように思われます。

サステナビリティは「経済的に裕福な人の一時的な罪滅ぼしに過ぎない」といった観点や、企業資本主義の新たな徹底としての「サステナブル・ウォッシュ」や「グリーン・ウォッシュ」の問題、あるいは、「一部の「意識の高い」人びとの自己満足」と捉えられることも実は少なくありません。

地球や自然環境、将来世代の「生」について真剣に考えている人もいれば、無関心な人や、サステナビリティに取り組む人を冷笑的に捉える人もいます。そうでなくとも、「サステナビリティ」や「環境志向」「エシカル」といった用語を目にするだけで「敷居が高い」と感じてしまったり、「一部の熱心な人のための商品」と捉えたりする人もいるでしょう。加えて、サステナビリティ関連の商品やサービスには比較的高額なものが少なくない点もまた、一定の「層」を可視化させている可能性があります。

「サステナビリティ」「サステナブル」という言葉自体が、「自分とは遠いもの」「自分には関係ないもの」「一部の意識高い人びとの合言葉」のように位置づけられてしまうことは問題です。そのような「閉鎖性」のイメージをどうしたら解消できるかという課題にも向き合っていく必要があるでしょう。そうでなければ、サステナビリティについて真剣に考えている人と、それを自分から遠ざけようとする人、そして無関心の人の3者のあいだの距離と分断は広く、深くなっていくばかりです。

 

身近なサステナビリティへ向けて

これまでの観光のあり方、これまでの開発や商業、企業活動のあり方が地球環境に一定の負の影響を与えてきたことは事実です。また、冒頭で述べたように、「持続可能な社会の実現」はまさに社会的な課題であるがゆえに、一部の人だけの活動では解決できない問題ものであり、したがって社会全体でその目標に向かって共通認識が育て上げられていく必要があります。そもそもウォッシュのように、建前や新たな商品価値としてのみサステナビリティが持ち出されるという問題が無くなっていかなければならない事はいうまでもありません。

サステナブルな取り組みだけでなく、「サステナビリティをめぐる意識の分断を埋める取り組み」についても社会的に共通した問題意識を醸成していく方法を模索していくことが求められています。そしてそのとき、サステナビリティに無関心あるいは否定的な層に「もっと意識を高めよ」と批判するようなやり方は最も避けるべきものです(それは分断を広げてしまうだけでしょう)。

社会のより多くの人々を包摂するような「より広い」あるいは「より身近な」サステナビリティの考え方やサステナブルな取り組みのあり方を模索したいですね。また、「コミュニティを広げていく」という方向性も大切です。ここでのコミュニティとはつまり、サステナビリティについて関心を持つ人のコミュニティのことであり、最終的には全ての人がその一員になることが理想的であるようなコミュニティです。そのためには、「こういうこともサステナブルな取り組みになる」「これだけでもサステナブル」といったアイデアや気づきをひとりひとりがもっと発信したり、紹介したりしていくことも大切ですね。そして、これまで関心を持たなかったり懐疑的だったりした人が「それくらいならやってもいいかな」「これならできそう」と思えるような「サステナブルな取り組み」を広げていきたいところです。

みなさんの「サスタビ」を教えてください!

閉鎖性や、もしかしたら無関心の人々から思われているかもしれない「敷居の高さ」「近づきにくさ」といった印象を解きほぐしていくには、サステナビリティについてのイメージ自体を広げていくことが大事ですね。

サスタビでも、より身近で、より親しみやすく、かつ、より簡単なサステナビリティ像を、ひいては、「それが当たり前」となるようなサステナブルな取り組みやサステナビリティについての考え方を検討し、発信していきたいと思います。

みなさんが取り組んでいるサステナブルなことや、みなさんの「サステナビリティについてのイメージ」を、ぜひたくさん教えてください。サスタビではみなさんが投稿・登録できる「サスタビスポット」や、定期的なInstagramでの「サスタビエピソードチャレンジ(フォトコンテスト)」を開催しながら、みなさんのサステナビリティへの多様な向き合い方を社会に発信しています。

最新の「サスタビエピソードチャレンジ」はこちら!https://sustabi.com/blog/8582/

みなさんもぜひ活用・チェックしてみてください。

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