これまで60カ国以上をバックパッカーとして旅してきた、サスタビ運営の岡村です。
タイ第2の都市チェンマイには、これまで5回ほど訪れています。にぎやかなバンコクとは異なる雰囲気のチェンマイ、滞在中「サスタビ」を度々感じることがあるため、旅好きの目線から「チェンマイならではのサスタビ体験」を具体的に紹介していきます。
観光地としてのチェンマイではなく、地域と繋がる旅としてのチェンマイを、ぜひ感じてみてください。
マッサージ文化に息づくサスタビ
世界各国でいろんな種類の伝統マッサージを見つけては、ついつい旅の疲れを癒しに立ち寄ってしまう大のマッサージ好きなのですが、チェンマイではサスタビを感じるマッサージに3つ出会いました。それぞれ個性がまったく異なるので、ぜひ1回の滞在中に全部試してほしいくらいです。
チェンマイ式タイ古式マッサージ

いわずと知れたチェンマイのタイ古式マッサージ。じつは2019年、ユネスコの「無形文化遺産」に登録されています。
登録理由は「芸術と科学、文化を兼ね備えた伝統医療」とされており、単なるリラクゼーションではなく、タイの文化と歴史が凝縮された身体知であることが国際的に認められたからです。
タイ古式マッサージの流派は大きく「王宮式」と「チェンマイ式」の2つに分かれています。王族向けに発展した王宮式が肘や膝を使わず指圧を中心とした繊細な施術であるのに対して、チェンマイ式は肘・膝・足などを駆使しながらカラダ全体を使ったダイナミックなストレッチが特徴です。同じ「タイ古式マッサージ」と呼ばれていても、体感はまったく異なります。
サスタビ目線で見たチェンマイ式の面白さは、受けるだけでなく「習得する」という選択肢があること。街には複数のマッサージスクールがあり、数日〜数週間のコースで正式な技術を学び、資格取得まで目指せます。筆者自身もかなり昔になりますが、1週間かけて習いにいったことがあります。
数百年受け継がれてきた伝統技術を旅人が学び、持ち帰って伝えていくという、とてもサスタビらしい体験です。チェンマイに長期滞在する方には、観光だけでなくマッサージスクールへの通学も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
木槌をカラダに打ち付ける「トークセン」
文字にするとかなり痛そうに聞こえますが、「トークセン」は木槌をカラダに当てながら行う独特のマッサージで、一度体験すると忘れられない感覚をもたらしてくれます。実際にはまったく痛みはなく、深いリラクゼーションへと誘われます。施術は「コーン」と呼ばれる小さな木槌と、「リム」と呼ばれる杭のような道具を使い、リズムよくカラダの経絡に沿って打ち付けていきます。
木が骨格や筋肉の深部まで振動を届けるため、通常のマッサージでは届かないコリをほぐせるのが大きな特徴。さらに、その心地よいコンコンという音がサウンドセラピーの効果も生み、施術中は音楽を聴きながらリラックスしているような不思議な感覚になります。
数百年以上の歴史を持つこのトークセンは、もともと北タイの僧侶たちが長時間の瞑想で凝り固まった身体をほぐすために発展させたとも言われています。チェンマイで受けられる場所はいくつかありますが、基本的にはお寺に併設された施設での体験が正統派。
観光客向けの派手な演出はなく、静かな境内で伝統の技を受けるという体験は、サスタビが伝えたいことそのものではないでしょうか。
視覚障害者が施術するマッサージ店

チェンマイには、視覚障害を持つ方々が働くマッサージ店が存在します。旅行者がマッサージを受けることで、直接的に障害を持つ方の雇用と生活を支援できるという仕組みです。タイでは視覚障害者がマッサージ師として活躍するケースが多く、政府もその職業訓練と就労支援に力を入れています。
受ける側としては「支援している」という意識よりも、純粋に高い施術技術を体感することになるのがこのお店の面白いところ。実際に1回の滞在中に2度足を運んだほどで、技術面はまったく問題なく、むしろ視覚を持たないからこそ培われたであろう研ぎ澄まされた触覚と感覚に驚かされました。観光客がお金を使う場所を少し選ぶだけで、地域の人の暮らしを支えることができる。これが筆者にとってのサスタビの一つの形です。
チェンマイならではの食を楽しむ
カオソーイ|北タイのソウルフード

現地に来たら、その土地のものを食べる。サスタビ20ヶ条の中にも「地元食材を扱うレストランに行こう」という一条がありますが、チェンマイで最も地域に根ざした料理として真っ先に紹介したいのが「カオソーイ」です。
ココナッツミルクを使ったカレースープに、やわらかく煮込んだ麺と、対比を生む揚げ麺がトッピングされたこの料理は、バンコクではほとんど見かけない、北タイ固有のものです。赤玉ねぎや高菜の漬物を添えてスープに混ぜながら食べるスタイルで、食べ進めるうちに味が変化していくのも楽しみの一つ。
面白いのは、お隣のラオスにも「カオソーイ」という名前の麺料理が存在すること。ただし見た目も味もまったくの別物で、ルーツは共通しながらも独自に発展していったというのが有力な説です。同じ名前が異なる文化圏でどう変容したかを考えながら食べると、一杯のスープが俄然面白くなります。チェンマイには専門店も多く、店によって微妙にスープの濃度や甘辛のバランスが異なるため、食べ比べが楽しいです。
地産地消を実践する飲食店では長距離移動で運ばれる食材を使っておらず、移動に伴う温室効果ガスの削減に貢献できます。また、地元で採れた肉や魚、野菜を消費することで、旅先の畜産業や漁業、農業を応援することもできます。 ...
サイウア|チェンマイ発祥のハーブソーセージ

ビール好きにたまらない一品として、地元の人にも旅人にも愛されているのがチェンマイ発祥のソーセージ「サイウア」です。レモングラス、こぶみかんの葉、ガランガルなどのハーブとスパイスがたっぷり練り込まれており、焼き上げるとハーブの香りが立ちのぼる、非常に個性的な風味があります。
「チェンマイソーセージ」という名前でそのまま販売されている露天も多く、市場や夜市で食べ歩きするのに最適。地元の食材とハーブを使ったこの料理は、工場で大量生産されるものではなく、各店がそれぞれのレシピを守りながら手作りしているのが一般的です。
北タイ料理をもっと深く知る

カオソーイとサイウアはあくまでも入口であり、チェンマイを含む「北タイ料理(Northern Thai cuisine)」は他にもたくさんあります。
たとえば、豚バラと生姜を使ったビルマ由来のカレー「ゲーンハンレー」は、北タイが歴史的にミャンマーと文化的な交流を持っていたことを教えてくれます。また、蒸し野菜を青唐辛子ベースのディップで食べる「ナムプリックヌム」は、チェンマイの家庭料理として今も日常的に食卓に並ぶ一品です。
日本語メニューがあり観光客にもアクセスしやすい店としては、北タイ料理の人気店「フアン ムアンチャイ」があります。地元食材を使った正統派の北タイ料理が食べられるとして評判で、オープン前から行列ができることもあるため、時間に余裕を持って早めに訪問することをおすすめします。
アカアマコーヒー|フェアトレードから生まれたスペシャルティコーヒー

チェンマイのおすすめカフェを語る上で絶対に外せないのが「アカアマコーヒー」です。「アカアマ」は直訳すると「アカ族のお母さん」という意味。タイ北部の山岳地域に暮らす少数民族であるアカ族が、標高の高い山地で丁寧に育てたコーヒー豆を使用したスペシャルティコーヒーを提供するカフェです。
このカフェが生まれた背景に、自分の村のコーヒー農家が中間業者に搾取され続けている現状を変えたいと考えたアカ族の方が、大学で経済を学び、卒業後に自らブランドを立ち上げ、農家が適正な対価を受け取れるフェアトレードの仕組みを構築してカフェをオープンしたのです。
観光客がコーヒーを1杯飲むことが、山岳地域の農家の生活を直接支えることにつながり、サスタビの理想的なモデルの一つだと感じました。味としては、フルーティーな酸味と自然な甘みが特徴で、スペシャルティコーヒーらしい複雑な風味がありながらも飲みやすい印象です。
このアカアマコーヒーの理念と味に共感した日本人夫婦が「アカアマコーヒージャパン」を立ち上げ、東京の神楽坂に店舗を展開しています。チェンマイに行く前に予習としてこちらを訪れてみるのも、旅の解像度を高める一つの方法です。
少数民族の暮らしに触れる旅

チェンマイ郊外には、タイルー族、モン族、リス族、アカ族、そして首長族として知られるカレン族など、多様な民族が今も暮らしています。市内から日帰りで訪問できる村もあれば、山奥に位置しホームステイが必要な村もあります。
首長族の村や市街地に近いモン族の村は、観光客の来訪が日常化しており、観光依存の経済構造が生まれてしまっているという葛藤的な側面があることも正直に伝えておきたいと思います。しかし一方で、どんな暮らしをしているのかを自分の目で見ることの価値は確かにあります。

以前訪れたタイルー族の村では、一緒にバナナのつぼみを採取して、それを使った伝統的な家庭料理のサラダ作りを体験させてもらいました。
また機織りも体験させてもらい、実際に住んでいる高床式の家の中も覗かせてもらいました。知識として「こんな暮らしを現代でもしている人たちがいる」と知っているのと、同じ空間で食事を作って一緒に食べるのとでは、理解の深さがまったく異なります。
こうした体験を後押しする仕組みとして、タイ政府観光局はコミュニティベースドツーリズム(CBT)を推進しています。
持続可能な観光と地域づくりの観点において、重要なキーワードとなっているコミュニティ・ベースド・ツーリズム。 今回の記事ではこの言葉について理解を深めながら、旅人がコミュニティ・ベースド・ツーリズムにいかに関わることができるかを考えてみたいと思います! なお、「関係人口」については...
CBTとは、地域社会が主体となって観光を設計・運営するアプローチのことで、少数民族の方々が「自分たちの文化として伝えたいもの」をプログラム化して提供するものです。一方的に見物するのではなく、地域の人が主体となって文化を共有するこの形は、観光による文化の均質化や搾取を防ぐ上でも重要な考え方です。
CBTの取り組みに興味がある方は、タイ政府観光局のサイト(https://www.thailandtravel.or.jp/cbt/)も参考にしてみてください。
地元の足「ソンテウ」に乗る

少し番外編になりますが、チェンマイでのサスタビとして意外と見落とされがちなのが移動手段の選択です。
チェンマイには「ソンテウ」と呼ばれる乗り合いピックアップトラックが公共交通機関として走っています。荷台に屋根と長椅子を備えたこのトラックは、決まったルートを走りながら乗降客を拾っていくスタイルで、地元の人々の日常の足として機能しています。料金は1乗車あたり20〜30バーツ(約80〜120円)ほどと非常に安価です。
観光客はつい配車アプリや個人タクシーを使いがちですが、ソンテウに乗ることで地元の人と同じ空間を共有し、移動コストが地域経済に直接落ちることになります。ルートや乗り方に慣れるまで少し手間はかかりますが、それも含めてチェンマイを「暮らすように旅する」体験の一部だと思えば、楽しみながら挑戦できるはずです。
自家用車やタクシーで移動するのではなく、公共の移動手段を活用しましょう。旅先で車を使わないだけでもサステナブルな旅に大きく近づきます。また、徒歩や自転車で移動すれば、地球に負担をかけずに町の雰囲気も味わえるというメリットも。...
おわりに|自分なりのサスタビをチェンマイで見つけてほしい

サステナブルツーリズムに、唯一の正解はありません。視覚障害者のマッサージ店を選ぶことかもしれないし、アカアマコーヒーを1杯飲むことかもしれない。ソンテウに乗ることかもしれないし、少数民族の村でホームステイすることかもしれない。大切なのは、旅を消費で終わらせないという意識と、その土地の人や文化に対するリスペクトです。チェンマイはそういう旅の実践の場として、非常に豊かな選択肢が揃っている街です。
訪れる度にまだ新しい発見がある、それがチェンマイという街の奥行きだと感じています。自分だけのサスタビを、ぜひチェンマイで探してみてください。
※この記事はサスタビ運営・岡村によるチェンマイでの実体験をもとに執筆しました。
人気スポット以外の場所にも足を運ぶことで、一か所に人が集まりすぎることを防げます。人が密集すると、渋滞が生まれて環境に悪影響を及ぼしたり、ゴミが増えて環境が汚染されたりと、地元の方の迷惑になったりしてしまうことも。...
立命館大学大学院修士課程修了。専門は情報理工。NTTデータ入社後、大規模システム開発の維持管理やビッグデータを用いた観光分析を担当。世界一周後、場所にしばられずに働くを追求してITに特化した現代版なんでも屋を起業。チェコ親善アンバサダー、銀河高原ビールアンバサダー。通称、シャンディ。




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