コミュニティ・ベースド・ツーリズムと持続可能性#旅と関係人口

持続可能な観光と地域づくりの観点において、重要なキーワードとなっているコミュニティ・ベースド・ツーリズム。

今回の記事ではこの言葉について理解を深めながら、旅人がコミュニティ・ベースド・ツーリズムにいかに関わることができるかを考えてみたいと思います!

なお、「関係人口」については以前の記事でも概要や背景、事例を紹介しています。未読の方はぜひ、以下の記事からチェックしてみると、理解が深まると思います!

①「交流から関係へ【前編】背景としての人口問題を整理!」

②「交流から関係へ【後編】」

③「旅先を“自分事”にしていこう!地域の「ウチ」とつながる新しい旅へ」

コミュニティ・ベースド・ツーリズムの背景

コミュニティ・ベースド・ツーリズムはその名のとおり、地域住民や地域のコミュニティが主導する観光のことを指しています。

地域住民が主体となって観光を運営し、観光を通じて自分たちの生活や文化を支えていく動きです。

コミュニティ・ベースド・ツーリズムは大きなくくりで言えば、様々な問題を引き起こしてきたマスツーリズムに対する批判と反省から展開してきた、「オルタナティブツーリズム」の仲間だといえるでしょう。

(オルタナティブツーリズムについて理解を深めたい方は以下の記事もオススメです!)

世界的に見たとき、おもにアジア・太平洋地域におけるコミュニティ・ベースド・ツーリズムは、およそ1980年代後半以降から活発化してきました(須永 2012)。

従来型のマスツーリズムでは、地域や自然を一変させるような大規模な観光開発や、先進国から非先進国へと観光客が大量に押し寄せることなどによって、様々な問題が生じてきました(リゾート開発による自然環境の破壊、観光の利益が地域住民や先住民に還元されない、先進国からやってくるツーリストとそれを受け入れるホスト側の住民との間の不平等なパワーバランス……等々)。

そうしたなかで、地域、とくに地域のNGO(非政府組織:Non Governmental Organization)やNPO(非営利組織:Non-Profit Organization)を中心とした市民活動が盛り上がり、従来型の観光開発とは異なる新しい観光のあり方が模索されていくなかで(山中, 2000)、コミュニティ・ベースド・ツーリズムに光があてられていったのです。

コミュニティ・ベースド・ツーリズムの種類

コミュニティ・ベースド・ツーリズムには、大きく分けて2つの形態があります。

ひとつは、地域主導となって運営・実践されるエコツーリズムであり、コミュニティ・ベースド・エコツーリズム(CBET:Community based Eco Tourism)です。エコツーリズムは地域に存在する自然環境を主軸としたものですから、その自然環境と日々接しながら生活を営んできた地域の人々や地域コミュニティが観光の運営に参加することが非常に重要となってきます。

もうひとつは、地域住民が主体となるカルチュラル・ツーリズム(文化観光)であり、コミュニティ・ベースド・カルチュラル・ツーリズム(CBCT:Community based Cultural Tourism)です。伝統的な文化や慣習の担い手である地域住民が、その維持・継承のために観光を活用する観光形態といえます。

(関連記事はこちら)

観光の持続可能性と地域の持続可能性

コミュニティ・ベースド・ツーリズムの大きな特徴は、「コミュニティ・ベースド・ツーリズムが盛り上がれば、地域も盛り上がる」という点にあります。この、観光と地域との相関関係が大切です。先行研究でも、次のような指摘がなされています。

わが国の観光資源を見た場合、自然資源、文化資源を問わず、ほとんどの資源は、人々が生活する地域の中にあり、それらは人々の暮らしとともに守られ、継承され、発展してきた。古都京都の文化財や白川郷・五箇山の合掌造り集落といったような歴史都市や伝統的集落のみならず、白神山地や屋久島などの自然環境でさえも、そうした資源を保全し、管理し、磨いてきたのは、地域で生活する人々=地域コミュニティである。言いかえれば、観光資源の持続可能性は、地域コミュニティの持続可能性と運命を共にしているのである(山村・小林・緒川・石森 2010:ii)

地域と観光との深い結びつき。捉え方を変えれば、コミュニティ・ベースド・ツーリズム(観光)が持続可能な形ですすめば、地域もまた持続可能な形へとむかっていく。そのような可能性を秘めているといえます。同時に、その逆もありえます。すなわち、地域が持続可能でなければ、コミュニティ・ベースド・ツーリズム(観光)もまた持続可能であることはできないということです。

地域も観光も、どちらもが他方の手段であり、それぞれが目的でもあるのです。

手段としての観光と旅

多くの観光は、それ自体が「目的」に位置づけられてきました。観光すること、旅することに目的がおかれてきたといえます。あるいは、仮にそれが「手段」となる場合でも、多くの場合において旅や観光は自己実現や自己の成長といった目的に結びついていたことが、たとえばバックパッカーの研究などでは指摘されています(大野 2012)。

他方でコミュニティ・ベースド・ツーリズムは、ツーリストの参加が持続可能な地域づくりへの貢献に直結するものだといえます。地域に貢献するため、地域を応援するため……そうした(自分ではなく)「地域のため」に掲げられた目的のもとで、それを実践するための「手段」として観光や地域のアクティビティに参加するという方向性が、コミュニティ・ベースド・ツーリズムの理念には組み込まれています。

観光や旅に行き、地域の人々の「参加」にもとづいて運営されているコミュニティ・ベースド・ツーリズムに旅人もまた「参加」する。そして、文化や自然の地域的な継承の応援をしたり、地域課題解決に向けた貢献をしたりする。コミュニティ・ベースド・ツーリズムには、そうした新しい旅や観光のあり方のヒントがつまっています。

コミュニティ・ベースド・ツーリズムは、日本でも、また世界でも多様に展開をみています。興味を持った方はぜひ、自分が行ってみたい地域や国にコミュニティ・ベースド・ツーリズムがないか探してみてください!

参考文献

岩原紘伊(2020)『村落エコツーリズムをつくる人びと――バリの観光開発と生活をめぐる民族誌』風響社。

大野哲也(2012)『旅を生きる人びと――バックパッカーの人類学』世界思想社

須永和博(2012)『エコツーリズムの民族誌――北タイ山地民カレンの生活世界』春風社

山中速人(2000)「開発批判からポスト近代観光へ――ポストコロニアルな世界とオルタナティブ・ツーリズム」『国際交流』89:12-17

山村高淑・小林英俊・緒川弘孝・石森秀三(2010)「はじめに」山村高淑・小林英俊・緒川弘孝・石森秀三編『コミュニティ・ベースド・ツーリズム事例研究――観光とコミュニティの幸せな関係性の構築に向けて(CATS叢書 第3号)』北海道印刷企画株式会社、pp. i-iv。

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