観光、その自己完結
前回の記事では、ワーケーションの基本的な情報について振り返ってみました。
あなたは旅人?それとも観光客? 突然ですが、旅人と観光客(者)の違いはどのようなものでしょうか。 どこか遠くの地から突然やってきて、少しの間滞在し、風と共にまたどこかへと旅立っていく人たち。旅人には、そのようなイメージがあるかもしれません。彼らは到着地をまた出発地として、次から次へと移動=旅...
仕事と余暇が混ざりあい、観光しつつ仕事する、仕事しながら観光するということを可能にしたワーケーション。もちろんそのままの意味で、そのサステナブルな可能性を議論することは可能でしょう。観光で地域を訪れる場合と同じように、ワーケーションで地域を訪れた際にもサステナブルな取り組みを意識してみることは大切ですね。
さて、ワーケーションが「仕事/観光」という従来の単一の目的をぼやかし、「仕事でもあり観光でもある」ような移動を可視化させたという点から、もうひとつのワーケーションを想像してみたいと思います。
観光。旅。それは、これまではそれ自体がその目的になってきました。「そこに観光しに行って、何するの?」と問われれば当然「温泉に入りたい」「地域の食材を食べたい」「○○の景色を見たい」と細かな目的が出てきます。しかしそうして問われたり思い起こしたりしない限りは、なんとなく「観光したいから」という自己目的的な思いで観光に向き合っていることが多いのではないでしょうか。

観光を目的から手段へと変化させる
以前の記事で、このようにして観光の目的が観光であること、観光が自己目的化していることがじつは「持続可能な観光」の展開を妨げているのではないか、という点を議論したことがあります。
たとえば下の記事では、観光の目的が「観光したいから」という自己目的的なものであるということは、その目的が自分にとってのみ意味のあるものに留まっているということでもある、というお話をしました。「観光者である私のための観光」「私のための旅」。「だって私が観光したいんだから」。そうした自分の為だけの観光/旅の目的を、他者へ、地域の人びとへと開いていくこと、共有していくことの大切さを考えました。
「旅の楽しさ」は変化してきた 旅(Travel)という言葉の語源には、じつは「苦痛」や「苦労」といった意味があります。危険にさらされる可能性がつねに旅人の周囲をとりまき、心身の疲れや痛み、不安とともにあるもの。それが、旅の中心的な意味でした。 近代における移動手段や宿泊施設の整備は、旅がもつ...
また、次の記事では、旅先で地域社会に貢献することや、ボランティアなどのお手伝いをするといった事柄が、旅や観光の目的から除外されつづけてきた可能性について議論しています。旅人は地域社会の「ヨソ者」とみなされてきましたが、その状況を作ってきたのは、もしかすると地域と断絶した自己完結的な目的を旅人が設定してきたからなのではないか、つまり旅人自身が自らを地域の「ヨソ」に位置づけてきたのではないか。そのような点を検討しました。
あなたは旅人?それとも観光客? 突然ですが、旅人と観光客(者)の違いはどのようなものでしょうか。 どこか遠くの地から突然やってきて、少しの間滞在し、風と共にまたどこかへと旅立っていく人たち。旅人には、そのようなイメージがあるかもしれません。彼らは到着地をまた出発地として、次から次へと移動=旅...
いま必要なことは、旅や観光の目的それ自体に、サステナブルな社会のための事柄を設定することかもしれません。地域の事業に協力してみること、サステナブルな取り組みに参加してみること、サステナブルなツアーを選んでみること……
これは、「何かサステナブルなことをするため」という目的を達成するために旅や観光に出発する、という逆転の発想です。旅や観光は手段であり、サステナブルな取り組みを自分が実践することが目的となる。以前の記事で紹介した「ポジティブ・サステナビリティ」の実践です。
サステナビリティの根っこの意味 サステナビリティの「sustain」という部分には、「何かを下支えする」という意味があります。イメージとしては、土台となるものを下から支える、土台を盤石にする、といったものでしょうか。 少し、抽象的なイメージの話をします。 何かを持続させること、維持する...
「何かサステナブルなことをする」という”work”を実践するために、余暇において観光や旅をする(”vacation”)。旅先で、旅をしながら、観光をしながらサステナブルな実践(=work)に取り掛かる。そのようなワーケーションも、もしかしたらありうるのではないでしょうか。旅をすることも、サステナブルな社会の実現のために何かに取り組んでみることも、両方をめいっぱい楽しめるような新しい「旅/観光/ワーク」の想像・創造へ。そこには新たな可能性が待っているような気がします。
何かに取り組むために、観光に行く。何かを果たすために、旅に出る。旅や観光を目的から手段へと考え直してみることで、「旅/観光のなかで自分には何ができるのか」「地域や社会のために何かできることはないか」と探す糸口がひらけてくるでしょう。
具体例はサスタビHPで!
サスタビでは、そうして旅や観光を手段としてみなさんが実践できるようなワークの具体例を、記事やイベント紹介、スポット紹介をつうじてお届けしています。
たとえば下の記事は、多摩川をリバーラフティングしながら河川の清掃活動をする取り組みです。サスタビメンバーが実際に参加して、体験レポートを書いています
「ゴミ拾い」「川の掃除」というと、どんなイメージを持つでしょうか。環境によい、地球のためになるといったポジティブなものもあれば、面倒、面白くないといったネガティブな印象を持つ人もいるでしょう。 しかし今回サスタビ編集部が体験した多摩川リバーラフティングは、そんなマイナスイメージを払拭。水しぶき...
リバーラフティングをすることが目的なのか、それともリバークリーン(清掃)活動をすることが目的なのか。それはもはや渾然一体となっているとすら言えるかもしれません。旅を楽しむこと(vacation)とサステナブルな社会をつくる取り組みをすること(work)が、境界線なく、自然に混ざり合う。そのような旅のあり方が当たり前になったとき、旅をつうじたサステナブルな社会の実現がグッと近づくのでしょう。
こうした「もうひとつのワーケーション」の例を、サスタビでも紹介していきたいと思います。またホームページでは「掲示板」や「スポット登録」でみなさん自身が書き込み、他の旅人にサステナブルな旅や取り組みを紹介できるスペースがあります。ぜひみなさんの知っているサステナブルな旅や「もうひとつのワーケーション」を教えてください!
サスタビ外部アドバイザー担当。北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 専任講師。立教大学大学院観光学研究科 博士課程後期課程修了。博士(観光学)。専門は文化人類学、観光研究、モビリティ研究。北海道札幌市出身。




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