マイカー規制からサステナブルな旅を考えよう!車と持続可能な旅の関係

マイカー規制でサステナブルな旅を広める

皆さんは、普段どんな交通手段を利用して旅をすることが多いですか?

車で、電車で、飛行機で、はたまたフェリーで、自転車で……。行き先や目的に応じて、様々な選択肢がありますね。

前回の記事では「環境に配慮した飛行機と旅の楽しみ方5つ」と題して、飛行機が環境に与える影響や、サステナブルに飛行機を利用する方法についてご紹介しました。今回は全国で行われている「マイカー規制」に着目して、自家用車を使って旅をする際のポイントを考えていきます!

マイカー規制とは?なぜ必要なのか

マイカー規制を取り入れている乗鞍高原

マイカー規制とは、主に自然公園などの観光地において、環境の保護、渋滞緩和などの目的から公共交通機関や登録を受けたガイド等の車を除いた自家用車の通行を制限する取組みです。

キャンプやハイキングなど豊かな自然を求めて多くの観光客が自動車でやってくることで、排気ガスなどによる大気の汚染が問題になります。

渋滞の発生によって地元の方の生活に支障が出たり、こうした地域の多くは山道で、急なカーブが続くため、対向車との接触事故のリスクが高まったりもします。

また、国立公園などの周辺では天然記念物や絶滅危惧種に指定されているような野生動物が生息する場合も多く、そうした野生動物が車に轢かれたり、傷つけられたりする事故(ロードキル)が起きてしまう可能性も。

 

(以下、傷ついた動物の写真が表示されます。ご注意ください)

 

ロードキル(交通事故)に遭った沖縄の野生動物たち

画像引用:やんばる野生生物保護センター ウフギー自然館

こうした問題を解消し、自然環境はもちろん、地域の人も旅人も快適に過ごせるために、特定の区域や機関に自家用車の乗り入れを制限するのがマイカー規制なのです。

日本国内のマイカー規制の事例

日本国内でのマイカー規制の取組みは1975年に、長野県の上高地(中部山岳国立公園上高地地区)で始まり、以後、尾瀬、富士山、知床など全国各地に広まりました。

上高地(長野県)

上高地は、長野県松本市にある日本屈指の山岳景勝地です。中部山岳国立公園の一部、標高約1500メートルの地域で、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されています。

上高地は通年マイカー規制のため、年間を通して自家用車の乗り入れはできません。松本市方面からは「沢渡駐車場(700円/日)」、 高山市方面からは「あかんだな駐車場(600円/日)」からシャトルバスまたはタクシーに乗り換える必要があります。

乗鞍(長野県)

同じく中部山岳国立公園に含まれる乗鞍高原は、2021年3月に環境省から日本第1号となる『ゼロカーボンパーク』に登録されました。

ゼロカーボン(脱炭素化)を目指し、有識者を招いたフォーラムの実施や、E-Bike ツーリズムの推奨など、サステナブルツーリズムに取り組んでいます。

長野県側から乗鞍岳へ通じる乗鞍エコーラインでは、マイカー規制を実施し、観光バスやタクシーへの乗り換え、特に低公害車のシャトルバスの利用を推進しています。

富士山(山梨県・静岡県)

富士山では、五合目までマイカーやバスで容易にアクセスすることができるため、夏の登山シーズンには、各登山口の五合目の駐車場は満車となり、駐車場に入れない車による渋滞が数kmに渡って発生することもありました。

そこで特に利用者の多い山梨県の「富士スバルライン」と静岡県の「富士山スカイライン」「ふじあざみライン」では主に7月上旬~8月末まで、マイカー規制を行っています。

一方で、EV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)に限って、期間中の通行を認める「EV・FCV利用の優遇措置」が取られているのも富士山のマイカー規制の特徴です!

日光(栃木県)

画像引用:日光自然博物館

日光国立公園の奥日光地域では、小田代原や西ノ湖、千手ヶ浜など、豊かな自然環境を保全するため、1993年から日光市道1002号線のマイカー規制を実施しています。

その結果、道路周辺に生息するミヤコザサなどが踏み荒らされることがなくなり、ノアザミなどの草花も復活しました。植物だけでなく、車の騒音がなくなったことで、散策する人々もゆっくりと落ち着いて草花を眺めたり、鳥のさえずりを楽しんだりできるようになったそうです。

春から秋の行楽シーズンには、県が環境への影響が少ない電気自動車やハイブリッド車の「低公害バス」を運行しています。運行開始以来、観光客やハイカー、写真愛好家など、のべ250万人以上に利用されています。

サステナブルな車の利用の方法は?

マイカー規制を実施していない地域においても、鉄道の駅やバスのターミナル駅まではマイカーで行ったら、そこで車は駐車し、公共交通に乗り換える“パーク&ライド”を心がけましょう!

観光地の交通機関に乗ることで、周辺の施設や飲食店で割引や特典が受けられることもありますし、お得な周遊チケットなども各地で準備されています。また、電車やバスの中で地元のおすすめスポットの情報が得られたり、運転する人もしない人も気兼ねなく地元のお酒が楽しめたりと、車を使わないことで生まれる楽しさも!

さらに最近では、地域限定の小型EVのレンタルやe-bikeを使ったツアーなど、快適でエコなスローモビリティの選択肢も増えています。車だと見落としてしまう穴場スポットに気軽に立ち寄れたり、旅先の地形や町並みを感じられたりと、移動の速度を落とすからこそ見えてくるものも沢山あるはず。

鹿児島の沖永良部島で使われているEV車「エラブのeクルマ」

画像引用:おきのえらぶ島観光協会

「マイカーがあるから、当たり前のように車で旅行に行く」という発想から1歩立ち止まって、「もしかして他にもっと面白い行き方、旅の仕方があるかも!」という視点で探してみると、新しい旅の楽しみが開けるかもしれません。ひとりひとりが楽しみながら、よりサステナブルな方法を選択していく事が、これからも旅を続けていくためには必要不可欠ですね。

日常生活においても、車の利用はCO2の排出や石油燃料の利用という観点で、環境に負荷を与えているのは事実です。次のおでかけを車ではなく、自転車や歩きに変えてみる、そんなことからも日常の中で小さな「旅」がはじまるかもしれません…!

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