人の手で自然を管理し里山を作る。八ヶ岳ツーリズムマネジメントの取り組みとオオムラサキセンター

観光庁では持続可能な観光開発を推進しており、各地方自治体やDMOが持続可能な観光地マネジメントを行うことができるよう、国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(Japan Sustainable Tourism Standard for Destinations,JSTS-D)」を開発しました。

八ヶ岳ツーリズムマネジメントは2022年にJSTS-Dのロゴマークを使用許可され、同年10月には「第13回観光庁長官表彰」を受賞。サステナブルな旅を実践するヒントがあるのではないかと思い、実際に訪れてみました。

人の手で守る里山「オオムラサキセンター」

今回、八ヶ岳ツーリズムマネジメントの方にオオムラサキセンターに足を運びました。山梨県北杜市にあるオオムラサキセンターは、施設全体が一つの里山のようになっています。その中にある生態観察施設「びばりうむ長坂」に1400㎡の鉄骨網張があり、日本の国蝶でもあるオオムラサキを大がかりに飼育しています。単に蝶を育てるのではなく、山の保全も含めて大きなくくりでの自然保護活動をしている点が特徴です。オオムラサキは里山のエノキを食草とし、広葉樹林に住むことから、水田や水車小屋などを設置して里山の様子を再現しているのです。

こちらでは農業体験もでき、地域の方が集まって田植えをしたり、作物を育てる体験をしたりしています。夏休みには市内外から500~1,000人ほどのお客様が集まります。有機農法で育てる水田もあり、秋になるとお米も収穫できるそうです。

オオムラサキセンターで現在作られているのが、「森のあそび場」です。山は放っておくと木が成長して草が伸び、日が当たらなくなります。そのため、人の手がなければ森自体がダメになってしまうのです。これを防ぐために間伐をして日光を取り入れるのですが、そこで出た間伐材を使って、アスレチックを作ったり、切り株を利用したチェーンソーアートを飾ったりしています。

昆虫の標本も種類豊富で、カブトムシやクワガタなど、様々な虫を見ることができます。地域でとれる虫もたくさんおり、昆虫採集もできます。採った虫は最後に放ち、また自然の中に戻します。他にも化石割り体験など、楽しめるアクティビティは様々です。

 

自然との共生を感じられる里山の営み

オオムラサキセンターは1995に設立されて以来、自然環境保護を訴えるとともに、観察の拠点として一役を担ってきました。現在も「森のあそび場」を作ったり、ピザ焼きを体験できたり、将来的にカフェをオープンするために準備を進めたりと、常に新しい取り組みにチャレンジしています。センター内だけでなく、地域の人も参加しているため、地元の方にとっても馴染みのある施設となっているようです。

オオムラサキセンターは、蝶やその他の虫の鑑賞はもちろん、「里山とは何か」の答えがコンパクトにまとまっている施設だと感じました。限られた敷地に田んぼや畑、水車があり、落葉樹の林もあります。山で育った木から生えた葉が地面に落ち、微生物によって分解されて土になっていく、一連の流れを感じられる環境です。

日本では古来から、落ち葉を腐葉土に、枯れ枝を燃料にしていました。農業に活かしたり、火をたいて生活に取り入れたりと、日々の営みに欠かせない資源だったのです。それを現代でも上手く利用しているのが、オオムラサキセンターの特徴です。

北杜市に訪れた方はぜひ、オオムラサキセンターに足を運んでみてください。普段は都心で暮らしている方も、「人間はもともと、自然と共に暮らしていたのだ」と感じられます。オオムラサキも、季節ごとに、幼虫からさなぎ、成虫と姿を変え、それぞれの美しさを間近で見ることができます。自然の循環や人と緑の営みを感じるサステナブルな旅を体験したい方に、とてもおすすめです。

旅人も楽しめるスポットが多い山梨県北杜市

オオムラサキセンターを訪問した後は、北杜市白州町にある日本酒「七賢」の蔵を訪れました。こちらには様々な施設があり、「酒処 大中屋」では七賢のお酒を買うことができます。糀糖を使ったスキンケアブランド「COJIE」や、発酵食品ブランド「ひとさじ糀」などの商品も購入可能です。

「レストラン臺眠」は、日本酒の蔵らしく発酵料理を食べられます。地元産の食材を伝統料理でいただくことができ、七賢の仕込み水も提供。「くらかふぇ」では糀糖を使ったスイーツや、麹のドリンクなどで休憩できます。

最後に、金精軒で信玄餅をいただきました。こちらでは賞味期限が30分しかない水信玄餅があり、現地に行かなくては食べられないというサスタビらしい旅ができました。

地域内外の方と地域づくりに取り組む大切さ

旅の終わりに、八ヶ岳ツーリズムマネジメント相談役(元理事長)の小林さんにお話を伺いました。「住んでよし・訪れてよし・住みたい町」というコンセプトのもと、オオムラサキセンターの事業をはじめ、住民自らが誇れる豊かな地域実現への取り組みを行っています。地域環境教育にもつながっており、どの取り組みも「最終的には地域づくりにつながっていないとだめ」とおっしゃっていました。

また、地元の事業者や観光会社の人だけでなく、地域づくりに関心がある人に来てもらいたいとのこと。せっかく訪れてくれた方は、1~2日ではなく長期滞在してもらえたらと話していました。

実際に八ヶ岳ツーリズムマネジメントには、宿やレストランだけでなく、IT企業や酒蔵、プロモーション会社、農泊事業者など多様な方が名を連ねています。イベントコンサルタントや婚活プロデューサーなども関係人口を増やし、いずれは移住者を増やしたいという思いがあるそうです。

今回、山梨県北杜市を旅して、改めて「旅には目的があり、万人に刺さらずとも一定の人が深く楽しめる場所はたくさんある」と感じました。実際にオオムラサキセンターでは「虫が苦手!」とおっしゃっている方もいましたが、蝶や昆虫が好きな方にとってはたまらない場所のはずです。

もちろん「なんとなく旅に出る」という方もいるのかもしれませんが、それでも「リラックスしたい」「普段の生活とは別の場所に行きたい」といった思いがあることでしょう。そのように旅の目的を事前に考えると、どういったスポットを訪れるとよいかが見え、楽しい時間を過ごせるのではないでしょうか。

特にオオムラサキセンターは緑豊かで、「仕事のストレスを解消したい」「自然の中でゆっくりしたい」という方にはうってつけです。地元の方と地域外の方が参加するワークショップもあり、遊びながら勉強することもできます。オオムラサキセンターはこれから進化をしていく施設なので、ぜひこれからも繰り返し訪れたいと思います。

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