サスタビ編集部では蔵前、草加、渋谷など関東近郊で街の魅力や持続可能性を追求する街歩きを開催してきました。
2024年9月の街歩きの舞台となったのは神奈川県・川崎臨海部。
川崎市観光協会や川崎市の方々などのお力添えも頂き、たっぷり1日がかりのツアーの中で川崎臨海部の街について、そしてサスティナブルな旅の可能性を探ってきました!
神奈川県・川崎臨海部ってどんなエリア?
まずは今回の舞台となる川崎市の臨海部について一緒におさらいしていきましょう!
東京~神奈川にかかる日本有数の工業地帯である「京浜工業地帯」の中央に位置する「川崎臨海部」は、約2,700の鉄鋼・石油化学などの工場やエネルギー・物流関連の施設が集積するエリアです。
近年はライフサイエンス分野の研究開発の拠点が誕生するなど、世界でも最高水準の取り組みが進む地域としての一面も持ちます。
その歴史は約100年前にさかのぼり、臨海工場地帯の建設に向け川崎・横浜の臨海部が埋め立てられたことからはじまります。
日本の高度経済成長期を支える地域として発展を遂げる一方、1960年代には環境汚染問題などを抱えますが解決へ向け取り組んだ結果環境技術がつちかわれました。
川崎の凱旋門⁉川崎マリエンへ
お昼過ぎに集合したサスタビツアー一行が最初に向かった目的地は、臨海部の東扇島にある川崎マリエン。
市民と川崎港の交流拠点として造られたコミュニティー施設で、その外観から巷では「川崎の凱旋門」とも呼ばれているんだとか。
地上10階建ての施設内は、体育館やトレーニングルーム、川崎港や海運に関するシアターコーナー、川崎でかつて行われていたという海苔産業の資料室などで構成されています。
1階の入り口を入るとまず来館者を迎えてくれるのは巨大なホオジロザメのはく製!
続いてタワー棟10階の展望室へ。地上51mから眺めるパノラマビューは日本夜景遺産にも認定されてるんだとか。
房総半島や三浦半島、もちろん足元に広がる川崎臨海部の景色を存分に楽しむことができます。
冬場は富士山も望める展望台も含む施設の入場料はなんと無料!
家族や友人、デートにもおすすめのスポットです。
航空写真からつくられている直径約5mのジオラマも見どころです。
かわさきエコ暮らし未来館
川崎マリエンの次に向かったのは、子どもから大人まで、五感で学べる体験型環境施設「かわさきエコ暮らし未来館」。
地球温暖化、太陽光発電などの再生可能エネルギー、ごみの資源循環などをテーマとした施設です。
今回は約40分のガイドツアーに参加し、施設について学びを深めました。
川崎市では、ごみ焼却時の廃棄物発電を敷地内の電池ステーションへ送電・電池充電を行いEVごみ収集車のエネルギー源とする取り組みを全国に先駆け導入しています。ゴミを集めながら60キロくらい走ることができ、ゴミ搬入のタイミングでステーションに入り3分くらいで充電を行うそうです。
同施設を訪れた際に、ぜひ見ていただきたいスポットがプラスチックごみの分別ライン。普段はなかなか見る機会のない、家庭から毎日のように出るプラスチックごみが収集された「その後」ですが、手作業で異物などを取り除く様子を実際に見ると改めて分別への意識やそもそもプラスチックごみを減らすよう心掛けて生活することの大切さを思い出させてくれます。
その後は屋上展望台へ移動し隣接する浮島太陽光発電所を見学。合計出力約2万kWのメガソーラーで、一般家庭の約5900軒分の年間使用電力量に相当する発電量です。
この土地は、ゴミの焼却灰を埋め立てた土地であり、数十年は建物を立てたりできないため太陽光発電の拠点として有効活用しているそう。
ガイドツアー後の自由時間を利用し2階の展示ゾーンを見学。
パネルや映像などを用いた地球温暖化や再生可能エネルギーに関する展示はとても見ごたえがありました!
次世代型のサステナブルホテル!川崎キングスカイフロント東急REIホテル
羽田空港から無料のシャトルバスで約10分の多摩川河川敷沿いにたたずむ「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」は、“地球にやさしいホテル・まちにやさしいホテル・ひとにやさしいホテル”をコンセプトに2018年に開業したサステナビリティあふれるホテル。
臨海部に溶け込むコンテナを連想させる外観、ブルックリン風のモダンな内装がおしゃれなホテルは、「世界初の水素ホテル」としての顔も持ちます。
2018年の開業時より、川崎市の「臨海部ビジョン」及び「川崎水素戦略」のもと、株式会社レゾナックと協力し、環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に参画。
実証事業が終了し、2023年9月1日からは明治電機工業株式会社製の「50kW 純水素型定置式FC発電システム」を導入し、「水素ホテル」として水素発電を開始いたしました。
具体的には、家庭から集められたプラスチックを提携先であるレゾナックの水素製造設備へ輸送、ケミカルリサイクルと呼ばれる化学処理を行いつくられた水素が地下パイプラインでホテルに設置された燃料電池へと運ばれ、電気へと変換される仕組みです。
この水素エネルギーによりホテル電力の15~20%がまかなわれています。
ロビーにも水素を利用した面白い取り組みが!
こちらは、前述の水素電力を使用し育てているレタスの様子。LED電力で栽培すると、通常の栽培より成長速度が速い・葉が大きく育つなどのメリットがあるそうで、ホテル内のレストランで実際に提供されています。
使用済みプラスチックが巡り巡ってレタスに生まれ変わる!なんともワクワクする事例ですね。
川崎の“これまでとこれから”を見つめる川崎工場夜景
最後の目的地は、7つの島とそれを囲む16の運河で構成された工場夜景発祥の地として、訪れる人々に煌びやかな景色を見せてくれるフォトスポットとして人気の川崎工場夜景。
京浜工業地帯に密集する工場群は、夜になるとプラントに灯される作業用の明かりたちが観光スポットとしてバスツアー、個人でまわる方などに人気を集めています!
今回は、屋形船クルーズにて、「工場夜景ナビゲーター」の案内の元約2時間半かけてたっぷりとその魅力に触れました。
時おり工場からあがる水蒸気。これらはかつて工業汚染問題を抱えた歴史の中で生まれた、排出される煙を無害化したものだそう。
また、写真では伝わりきらない煙突から噴き出す勢いのある炎は、「フレアスタック」と呼ばれる余剰ガスを無害化するため放出時に燃焼させているもの。
産業と環境が調和したサステナビリティを感じられる一場面でした。
日本経済を大きくけん引してきた川崎臨海部の歴史を感じ、厳しい環境基準で操業する工場の過去と現在、そしてたゆまぬ努力によって未来につなげるストーリーを感じ取ることができるツアーでした!
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