沖永良部島のサステナブルツーリズム事例
鹿児島県にある小さな離島・沖永良部島では、美しい海を守るための市民の取り組みが島全体に広がり、行政が中心となってゼロカーボンに取り組むなど、サステナブルツーリズムの取り組みが進められています。
沖永良部島(おきのえらぶじま)って?
「沖永良部島(おきのえらぶじま)」は鹿児島から南へ552km、与論島の手前にある隆起サンゴ礁でできた島です。人口は約1万2000人。周囲55.8km、面積93.8km2で、車であれば90分でゆっくり島を一周できます。年間平均気温22度という温暖な気候に恵まれ、1年を通じて南国らしい鮮やかな花々が咲きます。東洋一の鍾乳洞「昇竜洞」をはじめ、300を超える鍾乳洞があることでも知られ、ケイビングなどの体験ツアーも人気です。
透き通ったコバルトブルーの海、長い年月をかけて造られた神秘の地形、美しい植物と手つかずの自然が多く残る島。その豊かさを損なうことなく、観光も発展させていくために、島民と観光客が一緒になって、島の未来づくりに参加できるような取り組みが始まっています。
ビーチクリーンと海ごみアップサイクル
島の子どもからはじまったビーチクリーン活動のうねり
沖永良部島では、島の子どもがはじめた日々のビーチクリーン(海岸のゴミ拾い)が島民に広がり、さらに自治体がサポートする形でひとつの観光資源として展開しています。
きっかけとなったのは、島内でも屈指のサンライズスポットである「うじじ浜」の近くに住む、竿(さお)さん一家の子どもたち。小学校の夏休みの宿題で環境問題について考えるために、家族で始めた毎日のビーチクリーン(その名も「うじじきれい団」)の活動が、島内外の人を巻き込む大きなうねりとなり、広がりました。
▶「うじじきれい団」について詳しくはこちら
毎朝家族でビーチクリーン。 サスティナブルでわくわくする島とは?|しまのま
ゴミ拾いのその先へ、アップサイクル×観光
各地で島民によるビーチクリーンや、行政主導の清掃活動なども行われ、沖永良部島を訪れた観光客もアクティビティの一環としてビーチクリーンに参加できるようになりました。そこでせっかく集めたごみを、ごみとして廃棄してしまうのではなく、資源として新しい価値を生み出すために、アップサイクルに着目しました。
画像引用:Precious Plastic 唐津
『Precious Plastic(プレシャスプラスチック)』という、プラスチック廃棄物をリサイクルし、新たな命を吹き込むためのノウハウを世界中に広めるオープンソースコミュニティを活用し、沖永良部島にアップサイクル拠点を作る準備が始まっています。
同じ九州である佐賀県唐津ですでに行われている『Precious Plastic 唐津』の協力の下、沖永良部島にもプラスチックごみから製品を作るための圧搾機を設置し、地域の方や観光客が拾った海ごみから、新しい製品をつくる体験ができるよう挑戦中です!
島全体でゼロカーボン宣言
沖永良部島にある2つの町、和泊町(わどまりちょう)と知名町(ちなちょう)ではそれぞれ、「和泊町ゼロカーボンシティ宣言」「知名町気候非常事態宣言」を出して、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指すことを宣言しました。2022年4月には、両町とリコージャパン、一般社団法人サステナブル経営推進機構の4者共同で提案した計画『ゼロカーボンアイランドおきのえらぶ』が環境省の脱炭素先行地域第1弾に選ばれ、持続可能な離島モデルを描こうとしています。
マイクログリッドによるエネルギーの自足
沖永良部島では、エネルギーのほぼ全てを海路による輸送に依存しているため、輸送コストが高かったり、台風等による停電が起きたりします。そこで太陽光や風力発電、また蓄電池にためた電気を島内の送電網で供給するマイクログリッドを構築することで、脱炭素の実現だけでなく、経済的にも日常の利便性・レジリエンスにも貢献し、島民や観光客が暮らしやすい島を目指しています。
自動車・バイクでEV導入、自転車の推進も
さらに再生可能エネルギーで蓄電した電気をつかって走るEV自動車やeバイクを導入し、島内の移動をよりサステナブルにしました。実際に島内の高校生が通学に使うバイクをeバイクにする『ゼロカーボン通学』の実証実験も始まっています!
画像引用:一般社団法人おきのえらぶ島観光協会
また「そもそもほんとに車やバイクが必要か?」という点を見直して、自転車導入の補助金を出すなど、脱炭素の動きを推進しています。コロナ禍で特に人気が高まっているのが『おきのえらぶ島ハイライトサイクルガイドツアー』!
現地ガイドの方と一緒に、島の風を感じながらローカルスポットを訪れたり、すれ違う島民の方と交流したり、スローで小回りの利く自転車だからこそ出会える“島の素顔”を見ることができます。
持続可能で魅力的な島・沖永良部島へ
豊かな自然が残り「奄美群島国立公園」に指定されて注目される一方、交通やインフラの利便性、そして少子高齢化など、小さな離島ならではの課題も抱える沖永良部島。島全体でひとつになって持続可能な仕組みづくりに挑戦することは、島民にとっても、訪れる人にとっても、住みやすく魅力的な島になること。ぜひ沖永良部島で、最先端のサステナブルツーリズムを体感してみてください!
また、なぜ沖永良部島でサステナブルツーリズムが進んでいるのか、どんな想いで動いているのかについては、こちらのインタビューをぜひご覧ください。
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