サステナブル・トラベルハブとは?
ー「サステナブル・トラベルハブ」を作った経緯を教えてください。
もともとは主にヨーロッパからのお客様に向けて、例えばドイツの方は持続社会に対し非常に意識が高い方が多く、そのような国からの観光客に対してもケアンズでの環境に配慮した取組みを理解していただくために英語版の「Sustainabie Tourism Hub」を2月に作りました。(詳細はこちら)
局内でのその取り組みを見た際に「これは絶対に日本語でもやるべきだ」と思いました。
背景には、日本人は日常生活においてはエコやリサイクルなどに非常に気を遣っていらっしゃいます。ところが海外旅行に行く時は「せっかくの旅行を楽しみたい」という気持ちから、環境への意識が他国の旅行者に比べて低くなる傾向があるという統計があります。
それに対して、「海外旅行先でも環境保全に関してより高い意識を共有したい」という思いから日本語訳したものも公開することにしました。
サステナブル・トラブルハブはこちら
ー わざわざ日本語版を作った狙いは?
ケアンズ&グレートバリアリーフ地域の取り組みをPRしたいというのが理由の一つです。
しかしながら、もっとも大きな理由は、日本から来られる旅行者の方がすでに「環境や地域に配慮した旅ができている」ことをご存知ないと感じたことです。
例えばケアンズに旅行に来ると、多くの皆さんグレートバリアリーフツアーに参加します。そのツアー料金の中には「環境税」も含まれています。
お客様が払う参加費の一部が「Environmentar management charge(環境保護税)」として集められ、グレートバリアリーフの現状を調べるための研究調査費と、サンゴの再生等を行うための保全活動費に充てられています。だから、ケアンズに来てグレートバリアリーフのツアーに参加するだけでサステナブルな活動に参加していますよ、というのを知って欲しいと思いました。
ー ツアー料金に含まれているんですね
そうですね、国が決めていて、ツアー催行会社ではその環境保護税を含めた料金をお客様からいただくようになっています。ただ、わざわざ伝えていなかったり、内訳が英語で書かれていたりするので、日本の方にはあまり伝わっていないのですが。実はすでに皆さんは貢献されてるんです。
ー ちなみに1人いくら徴収するんでしょうか?
7ドル50セント(約700円)です。それとは別に、例えばキャンプをすると国立公園に入るのでそこでも環境税がかかります。1泊1人3ドル85セント(約350円)とか、本当にそんなに大きな負担にならないような金額が徴収されるシステムがありますね。
ー その地域の保全などの活動に使われるとわかるといいですね!
グレートバリアリーフの持続可能な観光の形
ー グレートバリアリーフには入場制限などはあるのでしょうか?
グレートバリアリーフは長さが約2,300kmで日本の国土とほぼ同じ大きさなのですが、観光で行けるところはその中のわずか7%~8%と言われていて、大部分は立ち入れません。
僅かな観光可能なエリアも、各クルーズ会社が「あなたの会社はこのリーフのここに船を止めていいですよ」というのが細かく決められていて、1ヶ所に何千人もの人が行くということがないんです。
一番多いところでも船1隻分350人ほどなので、全長2,300kmの中でこっちに300人、あっちに350人と、それぞれがかなり離れて分散していて、いわゆるオーバーツーリズムという問題が生じたことはケアンズではありません。
ー それはすごい!世界遺産になっても、観光客が殺到することで自然が破壊されてしまうという事は、日本でも世界でもよくありますよね……。
そうですね。こちらではゾーニング(zoning)と言って、ここは入れる/入れない、ここは釣りをしていいなど、場所ごとに細かく決まっています。国や海洋を管理する期間、地域、民間企業やボランティア団体が協力して活動しています。こちらの言い方で「Best managed reef」と呼ぶほどにはしっかりとリサーチと保全活動を行っていると自負しております。
ー コロナになって急にということではなく、オーストラリアの方は、以前からそういう考え方で、環境保護に力入れられてきたんですね?
そうですね。1980年代から「Ecotourism Certificate 」があって、エコツーリズムの認証制度がありました。いくつかランクがあって、簡単に入れるものからある程度“Advanced”とつくレベルの高いものまであります。
日本でSDGsが広く言われる以前から、オーストラリアではその認証システムを使って、各企業さんが認証を取得し「うちはECO Certificateを持ってますよ」とアピールポイントの一つにもになっていました。
ー 特にケアンズはそれが進んでいるのですか?
エコツーリズムの認証を受けてる企業が168個あり、オーストラリア国内で一番多いそうです。
小さな町ではありますが、世界遺産が2つあるほど豊かな自然に囲まれている場所で、環境を大事にしようという意識を持った人や企業、団体が多いのだと思います。
このケアンズの文脈を活かして、旅育という新たな取組も企画しています。
―それはどんな取り組みですか?
グレートバリアリーフに住む海ガメ「ケアッピ」くんが、2つの世界遺産が集まる唯一の観光地であるケアンズの地理・気候、自然、動植物、文化などを分かりやすく紹介するというものです。就学児童はもちろん、小さなお子様でも保護者の方と一緒に楽しく学べるよう内容になっています。
今年の6月中旬に開催する予定なので、ぜひみなさんにご参加いただけたら嬉しいです。詳細はこちらからご覧ください。
海だけでないサステナブルな取り組み
ケアンズはグレートバリアリーフの玄関口なので海のイメージが強いですが、陸の方でもサステナブルな活動が広がっています。
たとえばケアンズのホテル業界ではプラスチックや紙を一切使用しないホテルもあります。紙は一切使用せず、レストランではLEDパネルでメニューが見られ、お部屋にも全部iPadがあって各言語対応、お水も再生紙のパックか、貸出ボトルでウォーターサーバーを利用してもらうところもあります。ホテルの部屋の鍵も、木の中にチップが入っていて、プラスチックを使ってないところが今増えてきていますね。
ー IT化やペーパーレスによって環境に配慮しつつ、一方では非常に効率が良くなって便利というのがすごいですね。
仰る通りです。オーストラリアの人たちはすごく合理化を求める民族なので、常に合理的な変化を続けながら、上手に環境のことを考えさせるメッセージを出してるなという印象です。
ー 日本だとまだ、使い捨ての歯ブラシなどアメニティを減らしたりとか、タオルを置かない、交換しない、とか環境に良いことをしようとするとお客さんとミスマッチが起こることがありますが、その辺はどうですか?
オーストラリアでは、元々歯ブラシ等を置いてるホテルがほとんどなくて、歯ブラシやカミソリが必要な場合のみ頼む、というのが主流です。
シャンプー類も、日本では安いビジネスホテルだと詰め替え式の大きなボトルで、高級ホテルは小さな使いきりのもの、というイメージがありますよね。
でも、こちらは5スターの高級ホテルでもボトル式のものが主流です。ケアンズのあるクイーンズランド州では去年の9月からOneway Plastic(1回しか使えないプラスチック製品)の使用が禁止になりました。
したがって、エコバッグを持って買い物に行くのが当たり前ですし、プラスチックのストローを出すようなお店はケアンズにはどこにもありません。
ー それはすごく進んでますね。日本ではまだまだ普通にストローが出てきたりするので。
そうですか!ケアンズではある海洋学者が「5分しか使わないストローは、ゴミになると分解に100年もかかるというのに、なぜ私たちは使ってるんだ」と言い始めて、ストローの使用を止めようという運動を始めました。
まずグレートバリアリーフのクルーズをやっている数十社がストローをやめて、その次に、ケアンズの海辺にあるカフェやレストランが同調し、さらにはファストフードも含めて全ての店で使い捨てストローを使わなくなりました。
最初の2年間で使われなくなったストローを全て繋げると、約1,200kmの長さになったそうです。
ー ケアンズだけでですか。すごい長さですね!実際にケアンズに行って、そうやってみんなの意識で守られてきた自然を楽しみながら、自分もそれに貢献するという旅がしてみたいですね。まさにサスタビです!
ぜひぜひ、お越しください。お待ちしております!
後編では、ケアンズの観光がこれから目指す先、そしてサスタビを広めていくための要素について伺います!お楽しみに
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