ジョージアの出生率は2.06人(2019)。アフリカ諸国に比べれば高くありませんが少子化が進む日本の1.36人(同)に較べると人口を維持するのに健全な数値と言えるでしょう。
ジョージアでは今も路地や公園で遊ぶ子供たちを見かけることができます。大人や老人たちは子供が大好きでそれがよその家の子供であったり外国人の子供であっても声をかけてかわいがる、そんなところもジョージア人の特長かもしれません。
国の将来を担うのは子供たち。子への教育は世界中どこでも親たちの一番の関心ごとですが、勉強とは別に自国の伝統文化を習わせることにもジョージアの親たちは熱心です。
今回は日本でいうところの書道やそろばん、柔道や空手といったようなジョージアならではの習い事について紹介したいと思います。
ジョージアダンス
ジョージアンダンスとはジョージアに古くから伝わる伝統的な舞踏です。ジョージアンバレエとも呼ばれますがその名のごとく、つま先立ちでのリズミカルな足さばきや高い跳躍など超人的なダンスは世界的にも有名です。2018年にはジョージア国立民族合唱舞踊団「ルスタビ」の日本全国19都道府県への公演ツアーもありました。
ジョージアンダンスはバレエと同じように幼少時から厳しいレッスンを続けないと海外公演に出るような一流のダンサーにはなれません。でもジョージアンダンスを学ばせたい親の気持ちは子供に一流のダンサーになってもらうことだけとは限りません。
ジョージアンダンスは季節のお祭りや新年のパーティや結婚式などで今も踊られるものであり、それはジョージアの生活に昔から変わらず今も息づいているものです。わが子に自国の精神と伝統を身につけて欲しいという気持ちはどの国でも同じなのかもしれません。
一流のジョージアンダンスアンサンブルはトビリシのオペラハウスでたびたび公演があります。また毎年秋口にジョージア各地で開催される収穫祭では子供たちのダンスやプロ顔負けの大人たちのダンスを見ることができるかもしれません。ジョージアンダンスのショーがついたレストランも旅行者には人気ですね。
ポリフォニーソング
ポリフォニーソングとは日本ではあまり聞きなれないものかもしれませんが、ジョージアではとても身近な歌のスタイルで一言でいうと多声合唱です。数人がそれぞれ異なるパートを担当してアカペラで合唱するものです。
ジョージアを旅行しているとジョージア人の家に招待され祝宴や、時には街中のレストランでも数人の男の人たちがワインのグラスを持ってジョージアのポリフォニーソングを歌い出す光景に出くわすことがあります。
これは余興としての見せ物というよりは歌い手たちが自分たちの歓びのために歌うものです。それぞれのパートを担当し合唱する者たちの声が合わさってハーモニーをつくる。仲間の団結を確認する伝統的なお祝いの仕方なのです。
ジョージアのポリフォニーソングはもともと中世のジョージア正教会の聖歌から発達したもので現在でも教会のミサではポリフォニーによる聖歌やお祈りを見学することができます。
そしてポリフォニーソングもジョージア人は子供のころから家庭や教会で、またはスクールでその歌い方を学びます。
チダオバ
チダオバ、こちらも聞きなれない言葉ですが、このジョージア語は日本語に訳すなら一番近いのは相撲でしょう。英語ならレスリングとなります。チダオバはジョージアの伝統的な格闘技で町や村のお祭りでは日本の相撲のように、チダオバの試合が奉納されてきました。
伝統的なチダオバの試合は藁や砂を敷いた地面の上で柔道着のような上着を羽織って組み合って行われます。その組み合い方は相撲よりむしろ柔道に近いかもしれません。
優勝者は羊一頭を授与され羊を肩に背負い、その益荒男(ますらお)ぶりを周囲がほめたたえるのがジョージアの伝統です。
元々農村で日々の農作業が終わった男たちの楽しみとして、そしていざ戦争になった時の格闘術としてジョージア中にあったものですが、現在は子供に健康で丈夫に育ってほしいと願う親たちが学ばせているようです。
ジョージアがソ連の時代からオリンピックなどの国際大会で、柔道やレスリングで活躍する選手を輩出してきたのは、このチダオバによるものだと言われます。日本の相撲界で活躍するジョージア人力士たちも若い頃、地元の祭りでチダオバをやっていたかもしれませんね。
伝統文化を習うことがサステナブルな社会の構築に
今回紹介したようなジョージアの伝統文化は地域社会のお祭りや、祭礼に欠かせないものであり、子供たちは習い事を通して地域社会へ溶け込んでいきます。
子供から老人まで世代を越えて共有できるジョージアの踊りや歌、そんな伝統文化を通して繋がれる社会のあり方は古くから続くサステナビリティの好例でしょう。
現代に受け継がれる伝統文化、ジョージアに旅行の際はぜひ体験してみたいですね。
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