サステナブルな旅の土台を支える「平和」。戦争はなぜ起きるのか?を考える

サステナブルな旅をするには、何が必要でしょうか?いろいろなものが思いつきますが、大前提となるのは「平和な社会」です。紛争や戦争が起きている場所には、旅に行けませんよね。そこで今回は、サスタビの代表である行方が、戦争と平和について考えてみます。

戦争が起きる仕組み

―今回は、戦争と平和というテーマで考えてみます。大きなテーマなので、どこから考えてみるべきか悩みます。

まずは、戦争がなぜ起こるのかというところから考えてみるのはどうでしょうか。戦争の原因は、たくさん考えられますが、「組織と組織の対立」が発生する原因を考える必要があります。議論に入るため、戦争の反対である「平和」とは何かを考えてみるのもいいかもしれません。

ーいいですね。平和な状態とはどんな状態のことでしょうか。

平和には、主に3つの種類があります。

消極的平和:物理的暴力(紛争や戦争)がない状態
積極的平和:構造的暴力(貧困や格差、人権)がない状態
文化的平和:文化的暴力(言語や宗教などによる差別)がない状態

参考:Galtung, J. (1996). 『Peace by Peaceful Means: Peace and conflict, Development and Civilization』, Oslo: International Peace Research Institute.

物理的な暴力である戦争は、構造的暴力や文化的暴力が原因となっている場合もあります。また、経済的資源の獲得・領土拡大も原因の一つです。そのため、これらは完全に独立しているわけではなく、複雑に絡み合っています。

―最も平和な状態は、「文化的平和」ですね。ただ、今は消極的平和すら守られていない地域も多くあります。

暴力が行われている地域はまだまだありますね。また、社会の安全と安定を維持するために、合法的な暴力装置である警察や軍隊が存在しています。彼らは、法律によって殺人が合法化されています。

―ここで改めて、なぜ戦争が起きるのかという問題を考えてみたいと思います。

それは、国家という組織の利害の対立が発生するからです。対立が発生しても、それが個人間なら単なるケンカになります。

―確かに、単位の違いはありますね。

私たちの世界は、個人=国民、組織=国、そして社会で構成されています。国民が安全に暮らすには、社会を維持するためのルールが必要です。そして、社会をまとめるためには国という組織が存在します。国は権力を持っており、権力を行使することで社会のルールを作り、国民が管理されるという仕組みです。

ここで問題になるのが、世界中の国の方針が一致しないことです。方針が違うため、国家間で利害が対立し、先に述べたような経済的、構造的、文化的な問題から戦争に繋がります。本来それぞれの国の共通の課題解決を進められるといいのですが、実際はなかなか難しいですね(SDGsのような世界共通課題)。

各国が自分たちのことだけを考えた場合、自国中心主義が強まり、周辺国のことを考えなくなります。これにより国同士の対立が生まれ戦争に繋がります。

―なぜ自国中心主義が生まれるのでしょうか?

政治の問題があります。政治がポピュリズムと結びつき、短期的な国民の利益だけを追い求めるようになった結果です。そして、戦争は政治的な対立を解決する最後の手段として行われます。解決のためには、相手を徹底的に壊滅させて勝敗をはっきりさせないといけません。

―それぞれが目的を達成するために、戦争という手段を取るのですね。しかし、国民からすれば戦争は避けたいのではないでしょうか。

そうなのですが、先ほども言ったように国には権力があります。国は個人を拘束できるので、強制的に戦争に参加させ、合法的殺人行為を迫ります。これは個人の人権を無視しており、国家権力と個人の権利関係が崩れている状態です。もはや、国民ではなく国家の持つ権力が戦争の開始を決定するというようにも見えます。

―社会をまとめるためには国が必要、でもその中で権力が生まれてしまい、それが暴走すると戦争に進む。そういうジレンマがあるのですね。

はい。とはいえ、人間は一人では生活できないため、社会が必要です。そして社会の維持にはルールが必要です。だから、社会を安全に保つことと、国民一人ひとりの権利や利益を守ること、このバランスが取れていないといけません。

―お話を聞いていると、国と国民が乖離しているように思えてきました。

日本をはじめ、世界中で国民が政治に無関心になっています。地方選挙の投票率は30%程度で、政治家に丸投げしています。政治家も、「次もこうすれば選挙に通る」という考え方をしてしまいます。それが行き過ぎて、戦争という結論に至ることもあるのではないでしょうか。

とはいえ、戦争をすると経済的にコストがかかりますし、すべて破壊しつくされます。爆弾や兵器を作るのにお金が必要で、人も亡くなります。軍事産業以外はマイナスです。

―なぜマイナスなことを決断するのでしょう。

やはり、権力が働いているからだと思います。本当は、誰も戦争はしたくないはずです。権力者が国民の本当に平和に暮らしたいという気持ちを理解できなくなってしまい、人殺しを国民に強制する。これが戦争の実態ではないでしょうか。つまり、権力の維持や、政治経済的な利益の最大化が、国民の平和への思いを押しのけてまで追求されてしまっているのです。

また、国家の権力構造は、ポピュリズムによって悪化している面があります。アメリカでもポピュリズムが進んで、国民の顔色を見ながら政治をやっている状況です。しかし、その政治が国民のためになっているとはいえません。多数決で決めたことが正しい判断かというと、そうとは限らないでしょう。

国民国家制度の次の世界へ

―社会をまとめるために、国という組織は絶対に必要なのでしょうか。

現代社会は国民国家制度をとっているので、今のところは必要と言わざるを得ないでしょう。しかし、私は将来的にはこの制度を超えて、他の方法でコミュニティを保てるようになるのではないかと思っています。

国民国家の多くは民主主義制度を取り入れていますが、これも完ぺきではありません。まず、世界のほとんどの国が民主主義を自称していますが、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、中国や北朝鮮はもちろん、アメリカについても「欠陥民主主義」であると評価されています。

参考:EIU Democracy Index 2023

いずれにせよ、民主主義は多数決の原理に基づき物事が進められますが、国民の6割が賛成すれば、4割が反対しても戦争に突入します。歴史的に見ても、ヒトラーも民主主義のもとで行われた選挙で当選しているわけです。

―そういった歴史がありながら、なぜ今も国民国家制度が取られているのでしょうか。

理由の一つに、公共性があると思います。水道や電気などは国が保証しないと困りますし、最低限の安全や健康も担保されなくてはなりません。これらは、個人の生活のためにないがしろにはできないものです。

とはいえ、公共性は時代によって変わってきています。戦前は強制的な意味合いで使われることも多かったですが、今では個人の尊重を意識したような考えになってきています。

―国民国家制度にはデメリットもあるものですね。

とはいえ、無政府状態よりは政府があった方が安全でしょう。問題は、時代が変わってグローバル化が進み、人や情報が簡単に国を飛び越えるようになった今、実態と合っていないことです。経済的にも、グローバルカンパニーが増えています。つまり、ヒト・モノ・コトが国と関係なく存在しており、国がすべてを管理するのは難しい状態になってきています。

それにあわせて税務や労働、人権などは国際法ができてきているにも関わらず、それぞれ独自の法律を持っている国家という制度を続けることに矛盾が生じています。

―では、これからの私たちはどうすればよいのでしょうか。

国家権力に変わるようなグローバルガバナンスを作ることが大切でしょう。これをどう構築をしていくかが、次の世代の大きなテーマになります。ただ、グローカルという言葉があるように、グローバルにつながりながらローカルも大切にしなくてはなりません。人は地域に根付いて生活しているので、地域と世界のバランスを取らなくては、また問題が起きます。

また、ある程度の経済的な余裕も必要です。格差があると平和を維持できません。中間層が増え、自分の人生を自由に楽しめる人が多いと、みんなが住みやすい世界になります。

―経済格差が平和を阻害するんですね。

そうです。日本も、誰でも安心して生活できる社会にできたらいいですね。

―今回は戦争と平和、そして国民国家制度と、大きなテーマでお話を伺いました。改めて、戦争や紛争の起きている今の状態をどうすればいいか、考えるきっかけとなりました。

ぜひ皆さんにも、なぜ戦争が起きるのか考えてみてほしいです。いつまでも楽しくサステナブルな旅ができるようにするため、世界の平和は絶対的に必要なものだと思います。

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