前回のプロローグでは、「学び習うものとしての旅/観光」の側面について検討しました。しかしそこでも述べたように、その学び方や上達の方法について教えてくれる学校や教科書は、これまでほとんど存在してきませんでした。
どうしたら、旅を学ぶことができるのか。今回を含めた以降3回の記事を通じて、旅の学び方を3つのステップに分けて検討していきたいと思います。
【前編】では、今この記事を読んでいるあなた自身が「サステナブルな旅人」「かっこいい旅人」に近づくための方法について、アイデアを示します。そして【中編】【後編】では、旅先であなたと出会う人たちと、そして他の旅人たちとあなたが〈ともに〉旅を実践し、〈ともに〉旅を学び、〈ともに〉かっこいい旅人になってゆくプロセスを拓いてゆく可能性について、検討します。
旅は、過去の旅と結びついている
あなたはこれまで、何回の旅をしてきましたか?
たくさんの地域や都市をめぐっている人もいれば、同じ場所を何度も訪れている人もいるでしょう。
それら個々の旅は独立しているようにみえて、じつはあなたがこれまで経験してきた他の旅と繋がっているのです。
旅慣れる、という言葉はこのことをよく示しています。旅のなかで失敗や経験を重ねることで、旅のノウハウが身につき、だんだんと洗練されていくことを、おそらく私たちは肌感覚で知っています。
「あの時はこうだったから、次はこうしてみよう」
「前は○○を持っていかなくて失敗したから、今回は買っておかなくちゃ」
「なんだ。必要な物は意外と現地で買えるじゃん」
これから旅をするとき、あるいは旅を振り返るときに、上のようなことを考えたことがある人は少なくないでしょう。たとえ前回の旅と目的地が異なる旅であっても、前回の旅の経験からわたしたちは様々なことを比較・想像して、これから向かう旅先での生活を準備しているはずです。
服装や荷物、旅先での移動や食事の方法に関しては特にそうだと思います。例えば海外だとローカルの水道水を飲んではいけないとか、旅先ではどのような服装をしていると快適・安全かといった「旅のHow to」は、旅の実体験を通じて身についてゆきます(今日では、YouTubeやブログなどで他者の経験談を事前に知ることもできますね。この点については【後編】で触れます)。
サステナブルな旅の方法もまた、旅を通じて学ぶことができる
今述べてきた事柄は、旅についてのプラクティカルな知識に関わる事柄です。しかし、旅を通じて学ぶことができるのは、そうした実践的な知だけではありません。旅を通じてサステナブルな社会を実現させてゆく、サステナブルな旅人になるための方法もまた旅の中で、旅を通して学ぶことができるのです。
サステナブルな旅についての理念的な知、思想的な知。そして、それを行動に移すための実践的な知。これらはみな、旅を重ねる中で深まってゆくものだといえます。
イメージしやすいように、概念図を作成してみました。
最初はサステナブルな旅人でなくとも、旅を通じてサステナブルな旅人に近づいていくことは誰にでもできます。そして、サステナブルな旅人へと近づいていくたびに、旅先の社会や、あなたが帰還する日常生活の社会もまた、あなたによってサステナブルなものに近づいていくことができる可能性があります。
円ではなく、らせんをつくる
旅や観光の語源には、「円を描く」という意味も存在します。出発し、旅先を訪れて、出発地へと帰ってくる旅の軌跡は、円を描きます。
しかし旅を一回的な経験として完結させてしまうと、サステナブルな旅人に近づくことはできません。また、旅の道中でサステナブルな事柄を体験できたとしても、その経験と知を日常生活の社会に還元することも難しいでしょう。
必要なことは、旅の経験を円のように閉じたものとするのではなく、らせん状に深化させてゆくこと、推進させてゆくことです。
そのために必要なステップは、次のように整理できると思います。
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まずはサステナブルな旅に挑戦してみる(ぜひ、「サスタビに行く」から目的地を探してみてください)
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旅の経験を自分で記録する(ノートやSNS、ブログでもOK)
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旅のなかでサステナブルな実践ができていたかどうか、改善点や次に挑戦してみたいサステナブルな実践はないか、反省してみる
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反省を活かすことができそうな、次の旅の目的地を検討する
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2~5の繰り返し(そのなかでさらにステップアップする方法は【中編】【後編】で)
まずは始めてみることです。誰にだって「初めて」はあるものですし、いつだって誰だってその「初めて」に挑戦しても良いのです。時には失敗することもあるかもしれませんが、その経験は次に繋げることができます。
そのようにして、挑戦し、経験を次に繋げていこうとする意志こそが、サステナブルな旅人に必要不可欠な資質だとわたしは思います。サステナブルに正解はきっとなく、それは試行錯誤のなかから生まれるのだということも。
次回からは、そのような学びのらせんをいかにして他者に開いてゆくことができるか、どうしたららせんを他者と〈ともに〉推進させてゆくことができるのか、その方法について紹介したいと思います。次回もぜひお楽しみに。
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