越前鯖江のものづくりと観光
めがねの街として知られる福井県・鯖江市。お隣の越前市・越前町と合わせて、様々な地場産業が発展してきた地域で、ものづくりに触れる旅をした様子を前回から引き続きお届けします!
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【越前和紙】五十嵐製紙
「越前和紙」は、岐阜県の「美濃和紙」、高知県の「土佐和紙」と並んで日本三大和紙と呼ばれる伝統工芸です。
日本に紙が渡来した5世紀頃には、既に越前和紙が作られていたとされ、約1500年の歴史があります。昔、この地域に流れる岡太川に「川上御前」という美しい女性が現れて、紙漉きの技を教えたことが発祥と言われ、国内でも珍しい “紙の神様” を祭る紙祖神「岡太神社・大滝神社」があるのも面白いポイント!
「和紙のふるさと」とされ多くの和紙工房が軒を連ねるこの地域の中でも、ユニークな和紙作りをしているのが株式会社五十嵐製紙です。
それが野菜や果物からできた『Food Paper(フードペーパー)』!
廃棄される野菜や果物の皮などを使った、あたたかな色味で、環境にもやさしいサステナブルな和紙なのです!
なんとこの商品、案内をしてくれた伝統工芸士・五十嵐匡美さんの息子さんが、小学生の時に夏休みの自由研究で、野菜を使った紙漉き実験を行ったことがきっかけで、いまでは大ヒット商品になっているというので驚き!
実際に提出した自由研究も見せていただき、その柔軟な発想に感銘を受けました。
もちろん伝統的な和紙の生産も続けていますが、原料となる楮や三椏、雁皮を作ってきた農家さんの数が激減しており、いまでは工場の近くで自分たちで原材料から育てなければいけなくなっているのが現状だと言います。
伝統を守り伝えるために、農作業まで職人さん自ら行う熱い想いと、新しい発想や未利用の素材を取り入れる柔軟な姿勢に、持続可能なものづくりのヒントがあるような気がしました。
【越前漆器】漆琳堂
漆器と言われて思い浮かべるのは、赤と黒の2色が一般的だと思います。でも、老舗の漆器メーカー・漆琳堂(しつりんどう)が手掛けるのは色鮮やかでカラフルな漆器です。
日本最古の漆器の産地と言われる越前で、寛政5年(1793年)の創業以来200年以上にわたり、漆の「塗師屋」として越前漆器を作り続けてきたのが漆琳堂です。
越前漆器は伝統工芸品であると同時に、日々の暮らしで使われる生活用品でもあります。使いやすさや、その時代らしさを兼ね備えながら「美しさと堅牢さを兼ね備える漆器をいっさいの手間を惜しむことなくつくり続ける」ことが、漆琳堂の譲れぬこだわり。
食洗器対応であったり、洋食にも合うデザインであったりと、現代の暮らしや海外の方にも手に取りやすい工夫がされています。
さらに驚くべきは、なんと自転車×漆器のコラボレーション!ここにも、新しい挑戦を続ける越前鯖江の伝統産業の在り方が見えました。
漆琳堂では製品の購入だけでなく、欠けてしまった器の金継加工や、古くなった漆器の修理なども受け付けています。大切なものを長く使うことも、サステナブルなポイントですね。
【越前漆器・木工】Hacoa
最後に伺った工房「Hacoa」では、ぬくもり溢れる様々な木工製品が並んでいました。
もともと、越前漆器の土台となる「木地」を作ってきた山口工芸という会社が前身で、その丁寧で繊細な木材加工の技術を活かして誕生したのが様々な木製の日用品を扱うブランド「Hacoa」です。
「Hacoa」として初めてロゴを刻んだ商品はなんとキーボード、ならぬ「木ーボード」!
「伝統を受け継ぐだけでは、伝統は守れない」という想いから、驚きと感動を届ける新しい製品づくりに取り組みつづけ、今では東京や大阪を始め日本各地にショップを置き、多くの人に愛される製品を打ち出しています。
全国のお店やオンラインストアでも手に入るのですが、今回伺った「Hacoaダイレクトストア福井店」では、工房が併設され実際に職人さんが作業する様子を間近に見られます。
また商品を手に取って、それぞれに異なる木目の入り方や気の色味を確認しながら、お気に入りの1点を見つけることができるので、福井に行った際にはぜひ足を運んでみてください!
伝統と革新、持続可能なものづくりを続ける越前鯖江
今回伺ったどの工房でも、越前鯖江に長く続く伝統の技を受け継ぎながらも、時代の変化をよく見つめながら、常に新しいことに挑戦する姿勢が印象的でした。
持続可能なものづくりに向き合い続ける福井県・越前鯖江、ぜひ次の旅先として訪れてみては?
また、今回案内してくださった一般社団法人SOEが取り組む、持続可能なものづくりを核とした新たな観光のカタチについて、インタビューをした様子も後日公開します。お楽しみに!
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