サステナブルツーリズム(Sustainable Tourism)とは
サステナブルツーリズムの定義
「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」
直訳すると「持続可能な観光」ですが、UNWTO(国連世界観光機関)ではサステナブルツーリズムを上記のように定義しています。
環境負荷を減らす観光施策ととらえられることも多いサステナブルツーリズムですが、もちろん間違いではないのですがあくまでも要素の一部ということです。
本来のサステナブルツーリズムは、「すべての観光形態において、地球および地域の持続可能性に配慮する」こと。観光の規模感や、国内/海外などとわず、すべての観光にとりいれる必要がある施策がサステナブルツーリズムです。
※サステティナブルツーリズム、サステイナブルツーリズムも同義ですが、本記事では「サステナブルツーリズム」に統一して呼称しています。
サステナブルツーリズムの目的
サステナブルツーリズムが語られるとき、外せないのが「マス・ツーリズム」という言葉です。第二次世界大戦以前は観光するのは富裕層の特権であったものが、戦後は大衆の経済力が向上したことにより観光が身近なものになり、さらに低価格化したことで大量の観光客が誕生しました。
その結果として観光地となる地域の文化が変わってしまうことや、環境汚染などの問題が発生したのです。
マス・ツーリズムによる問題を解決するためにこれまでさまざまな議論や施策がなされましたが、結果として「マス・ツーリズムを否定せず、経済成長と自然環境、地域社会の文化の保全を両立させる」ことが現在のサステナブルツーリズムの目的となっています。
SDGsとの関連性
08:働きがいも経済成長も
12:つくる責任、つかう責任
14:海の豊かさをまもろう
2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた「持続可能な開発目標」、SDGs(Sustainable Development Goals)。
UNWTOでは積極的に目標の達成に貢献するよう取り組みをすすめており、とくに観光が主要テーマとなる08、12、14の目標3つに重点をおくとしています。(参考)
「SDGsの観光分野 = サステナブルツーリズム 」という認識の方も多いと思いますが、どちらかというとSDGsのゴールを達成するためには、環境と地域社会への負荷を最小限にしたサステナブルツーリズムを推進していく必要があるとう認識のほうが近いです。
サスタビの目指すサステナブルツーリズム
当サイト「サスタビ」は、元HIS代表取締役専務であり、現在は株式会社ピーストラベルプロジェクトの代表を務める行方一正により集められたメンバーたちで運営しています。
サスタビの唱えるサステナブルな旅とは
旅を楽しみながら、広く地球環境、社会、経済に配慮し、旅先の人々の暮らしに敬意を払い、旅すること。そうして、未来世代に遺すべき資産を守り、学び、伝え、持続可能な社会を作っていく事です。
旅は楽しいだけで終わららせるのではなく、旅で得た体験を日常に持ち帰りライフスタイルに取り込むことで人は成長すると考えます。そして理想は旅先の訪れた地域にもなにかしらいい影響を与えることです。
サスタビ20ヵ条について
サステナブルツーリズムを事業者が実践する方法は近年増えてきていますが、旅人側が実践するための具体的な方法はまだ足りないのが現実です。
そこで具体的な指標として、サスタビ独自で「サスタビ20ヵ条」を制定しました。
旅を楽しむことを前提に環境負荷を減らしながら、地域が活性化することを目指していますが、時代の変化に対応していく必要があるため、日々サスタビ運営内でも議論を繰り返しながらこれからもアップデートを続ける予定です。
エコツーリズムやグリーンツーリズムとの違い
エコツーリズムとは
エコツーリズムは大原則として「自然保護のための資金調達」「地域社会への経済的利益」「環境教育」の3要件をベースとしています。
環境教育や自然保護がメインとなるため、自然環境に左右されることでツアーの開催ができない時期があり、働く側の人たちの収入が安定しないなどの問題点などがあるようです。
エコツーリズムに対してサステナブルツーリズムはそれらを包括しながら、さらに広い範囲をカバーしている概念といえるでしょう。
グリーンツーリズムとは
「グリーン = 自然」を連想させることからエコツーリズムとグリーンツーリズムを同じと捉える方もいます。
グリーンツーリズムは農林水産省によると「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動」と定義されており、泊まることが前提となっている点がエコツーリズムとの一番の違いです。
もちろんグリーンツーリズムもサステナブルツーリズムの要素の1つであるといえるでしょう。
その他のツーリズムについて
ネイチャーツーリズムやビーチツーリズム、カルチュアルツーリズムなど、さまざまな観光形態がありますが、自然を大切にすることや、地域の文化を大切にするツーリズムに関してはすべてサステナブルツーリズムの要素であるといえます。
また反対に現状ではサステナブルツーリズムと関連のなさそうな観光形態に関しては、今後サステナブルツーリズムを適応していく必要があるといえるでしょう。
サステナブルツーリズムの事例紹介
国際認証団体であるグリーン・デスティネーションズ(Green Destinations)が発表する「世界の持続可能な観光地トップ100選」というものがあります。
2022年には100選のうち日本が10ヶ所えらばれました。選ばれたのは以下のエリアです。
ビジネスとマーケティング、文化と伝統、環境と気候、ガバナンスとリセットと回復、自然と風景、繁栄するコミュニティの6部門で優秀とされた場所が選出されています。
- 熊本県阿蘇市
- 岩手県釜石市
- 栃木県那須塩原市
- 香川県小豆島町
- 岐阜県下呂温泉町
- 神奈川県箱根町
- 宮城県東松島市
- 愛知県南知多町
- 熊本県小国町
- 愛媛県大洲市
サステナブルツーリズムの海外事例
海外事例として知られているのは、パラオの「パラオ誓約書(Palau Pledge)」が有名です。
パラオの環境保護を事前に誓った旅行者のみが入国を許可される仕組みとして世界的にサステナブルツーリズムの事例として紹介されることが多いです。
パラオの皆さん、私は客人として、皆さんの美しくユニークな島を保存し保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません。
出典:在日パラオ共和国大使館
ユニークな事例としてはサスタビでチェコ共和国のサステナブルツーリズムについて紹介したことがあります。
とくにマップがなくともハイキングが楽しめる仕組みはチェコ発として、オーストリアやスイス、そして南米まで輸出され浸透したようです。
サステナブルツーリズムの国内事例
国内事例はさきに述べた2022年に選ばれた「世界の持続可能な観光地トップ100選」にある事例を筆頭に、過去に選ばれた岐阜県の「日本の源流に出会える旅」や、群馬県みなかみ町のサステナブルツーリズムで町おこしに成功した「ラフティングツーリズム」が取り上げられることが多いです。
サスタビでは他にも「サステナブルなスポット」を誰でも登録できるようにしており、いろいろなサステナブルツーリズムに繋がるスポットやイベントが集まるようにしています。
東京や埼玉でのサステナブルツーリズムのスポットはこちらにまとめいているので参考にしてください。
サステナブルツーリズムの国際認証とガイドラインについて
GSTCとJSTS-D
GSTCとはGlobal Sustainable Tourism Councilの略、日本語では「世界持続可能観光協議会」と呼ばれており、世界で乱立していたサステナブルツーリズムをとりまとめるため発足しました。
このGSTCが策定した最低限達成すべき基準として作られた国際基準もまた、略称としてGSTCと呼ばれておりますが、こちらはGlobal Sustainable Tourism Criteriaの略になります。
GSTCを基準に観光庁より発表されたのが「日本版持続可能な観光ガイドライン」、通称JSTS-Dです。(Japan Sustainable Tourism Standard for Destinationsの略)
2021年には「GSTC承認基準」を満たしていると、GSTCより公認されています。ガイドラインへの取り組みが認められた場合「JSTS-D認証ロゴマーク」が利用可能となり、サステナブルツーリズムへ取り組んでいる観光地であることを対外的にアピールできます。
UNWTOの責任ある旅行者になるためのヒント
●旅先に住む人々に敬意を払い、私達の共有遺産を大切にしよう
●私達の地球をまもろう
●地域経済をサポートしよう
●安全な旅をしよう
●旅先の情報に通じた旅人になろう
●デジタルプラットフォームをうまく活用しよう
持続可能な観光の定義をしているUNWTOですが、同様に旅行する側がサステナブルツーリズムに取り組むためのヒントとして、「責任ある旅行者になるためのヒント」を上記のように発表しました。
旅をする側も、旅人を受け入れる側もどちらも価値のある観光にするための心構えやポイントがヒントとして綴られています。
サスタビではこのヒントをもとに、旅行者側にとってのサステナブルツーリズムをみなさんと一緒に考えていくければなと思います。
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