サスタビを知る「サステナブルな旅って、なに?」―そんな素朴な疑問について、さまざまな視点から考えます。

「かっこいい旅人」になるために【中編】:協働作業としての旅

「かっこいい旅人」になるために【中編】:協働作業としての旅

【前編】のあらすじ

旅は、自宅からの出発 → 目的地での滞在 → 自宅への帰還 という円運動をなします。したがって、ひとつひとつの旅は「〇」を描くように完結し、独立しているようにも思えます。たとえば、数年前にあなたがした旅と、これからしようとする旅がまったく別物だと感じられるように。

しかし、そうした個々の旅の円と円とは、じつは結びついているのです。意識的にそれらを繋ぎあわせ、らせん状にしていくことで、サステナブルな旅を深めていくことが可能となります。

サステナブルな旅をまずは実践し、その経験を自ら振り返り、反省を踏まえて次の旅でさらに新たな挑戦に取り組んでみる。挑戦→反省→さらなる挑戦→‥‥‥旅を繋ぎ、一本のらせんのように絶えず自分のサスタビを深めていこうとする意志が、サステナブルな旅人・かっこいい旅人になるためには必要です。【前編】では、そのようなお話をしました。

今回の【中編】では、その学びのらせんを、観光地の人びとや他の観光者といかにして一緒に駆動させていくことができるのか、そのために重要な考え方について検討したいと思います。

 

旅は2つの意味で協働作業

① 他者との潜在的なつながり:身勝手から協働へ

あなたは、一人旅をしたことはありますか?

自分で目的地や旅程を計画し(あるいは行き当たりばったりに)、上手くいかないことも含めてすべての経験を独り占めすることができる一人旅には、グループでの旅行とはまた違った楽しさと魅力がありますね。

しかし当然ながら、完全な一人旅は不可能です。宿泊先にはオーナーやあなたの使用した部屋を片付けてくれる人びとがいて、観光地にはあなたにお土産を販売してくれたりオススメの観光スポットを教えたりしてくれる人たちがいます。

移動で利用する交通機関にはその運転手や、他の乗客もいますね。トイレや、種々の施設を日頃から管理してくれている人もいます。なにより、旅の途中であなたが直接関与することはないかもしれませんが、旅で訪れる場所には、そこで生活を営む地域住民たちの日常が存在しています。

いやむしろ、こう述べるべきかもしれません。旅の途中であなたが直接関与することはないからこそ、そうした人びととの繋がりに意識的である必要があります。あなたがポイ捨てしたゴミを嫌な気持ちで拾うのはその地域の人びとであり、それが拾われるのは、あなたがそこを立ち去った後のことなのです。

旅は、そのようにして多様な人びとと潜在的に、かつ不可避に繋がっています。この関係性に意識的ではない旅は「身勝手な一人旅」となり、種々の問題をはらんでしまうでしょう。

そうではなくて、地域や旅先で出会う人びととの繋がりを重んじ、人びとの日常生活への配慮を忘れない旅をすること。また、自分の旅が、いかにして自分以外の他者のおかげで可能となっているのかを意識し、他者への敬意とともに旅をすること。「身勝手な一人旅」とは対置される、いわば「協働的な一人旅」を実践していく必要があるでしょう(言うまでもなく、これは一人旅に限定されません)

② サステナブルな旅人同士の繋がり:ツーリストフォビア?

協働作業としての旅には、もうひとつの側面があります。それは、他の旅人との繋がりです。

観光地を訪れると、必ずといっていいほど他の観光客の姿を目にします。みなさんは、観光客で賑わう観光地を目の当たりにしたとき、どのような感情を抱くでしょうか。

  • 人がたくさんいて嫌だ
  • 観光客ばっかり
  • 自分は彼らとは違う‥‥‥

賑わいは気分を高める一方で、他の観光者に対し嫌悪感を抱いたり、無意識のうちに彼らを避けようとしたり、「自分だけは彼らとは違うんだ」と思ってしまったりすることは少なくないかもしれません。

オーバーツーリズムによって地域が観光者で溢れる姿に嫌悪感や恐怖を抱くことを造語で「ツーリズモフォビア(観光嫌悪)」と呼びますが、この場合は、観光者による観光者への相互的な嫌悪、すなわち「ツーリストフォビア(観光者への嫌悪)」と呼べるかもしれません。

ツーリストフォビアがもたらすのは、旅人同士・観光者同士の断絶です。これでは、個々の旅人がお互いを理解したり、一緒にサステナブルな旅の実践を進めたりすることは難しいでしょう。

かといって急に嫌悪感を捨てたり、好きになれたりするような簡単な話でもありませんよね。そこで、「意識」に関わる2つの提案をしたいと思います。

1つ目は、まずは他の旅人・観光者のことを正面から直視し、観察してみましょう。目を背けたり、嫌悪感を理由に距離を取ったりするのではなく、他の旅人が何をしているのか、どのような振る舞いをしているのかを、積極的に観察してみましょう。

そして2つ目に、そこから何かを学ぼうとしてみましょう。反面教師としての学びもあるかもしれませんし、「あ!あの人の実践、サステナブルだな」と、新たな気づきが得られるかもしれません。

大切なのは、自分もその場にいる旅人・観光者の一人であるという事実を受け入れ、他の観光者と自らとを断絶させないことであり、自他の結びつきを自覚することです。

断絶からは嫌悪感や偏見しか生まれませんが、繋がりからは対話や発見、学びが生まれる可能性があります。

サステナブルな旅を、自分だけでなく地域の人や他の観光者と〈ともに〉実践していくためには、ツーリストフォビアをめぐる意識上の壁を乗り越えることが必要でしょう。それが、協働作業としてのサスタビを現実のものにする第一歩だと考えられます。

具体的には何ができる?

とはいえ、いかに潜在的に結びついているとしても、実際の旅のなかで他の観光客や旅人と関わる機会は、そう多くはありません。それでは、どうしたらその関係性をかたちにできるのでしょうか。サステナブルな旅のらせんをともに深めていくために、具体的に手を繋ぐ方法はどのようなものでしょうか。

最終回【後編】では、サステナブルな旅に関心のある人同士が対話をしていくための具体的な方法について紹介したいと思います。次回もぜひお楽しみに。

この記事を書いた人

石野 隆美

立教大学大学院観光学研究科、博士課程後期課程に在籍中。専門は文化人類学、観光研究。北海道札幌市出身。論文に「ツーリスト・アクセス――「アクセス」概念が拓くツーリスト像の検討に向けた理論的整理 」(『観光学評論』9(2)、2021年)など。また分担執筆に『よくわかる観光コミュニケーション論』(ミネルヴァ書房、2022年)、『アフターコロナの観光学――COVID-19以後の「新しい観光様式」 』(新曜社、2021年)など。

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