2023年の振り返りと2024年の旅の変化の予想

本稿は、サスタビ代表の行方が寄稿した記事となります。

2023年の振り返り

地球環境の急激な変化により、2023年の地球の平均気温は、産業革命以前に比べ1.4℃上回り過去最高となった。地球温暖化と気候変動により、世界では猛暑や山火事、洪水などの災害が発生した。

国際社会では、世界の多極化による国家間の緊張が高まっている。終わりの見えないロシアとウクライナの戦争、互いに人権を無視したイスラエルとパレスチナの紛争、中国の覇権主義からくるアジアでの脅威、インドやブラジルなどのグローバルサウスの台頭、アメリカの相対的影響力の低下など国益重視と多極化により、世界の不安定化が進んだ。

経済のグローバル化による格差、価値観の多様性と逆行する権威主義による差別など、社会の分断化が進み、ポピュリズムも広がった。

また、先進国の少子高齢化と人口減少による社会構造の変化で、様々な問題が露呈化し始めた。先進国の特殊出生率の急激な低下は、育児に対する経済的負担の大きさ、社会制度の不備による女性の仕事と家庭の両立の難しさ、経済的理由や価値観の変化による晩婚化と未婚者の増加などが原因となっている。これにより少子高齢化が加速し、地方だけでなく都市においても空き家問題や過疎化問題を発生させている。

この様な様々な問題を目のあたりにして、「持続可能な社会とは何か」、「平和で豊かな暮らしとは何か」、「未來の理想の社会や地球環境とは何か」を改めて考える機会も多かったはずだ。テレビやネットでこのような問題が取り上げられ、持続可能性、SDGs、サステナブル、などのキーワードをあちこちで目にすることが多くなった。地球環境や人間社会がこのままではいけないという意識が、広がってきているのは、SDGsやエシカル消費についての意識調査からも分かる。特に小学校からSDGsについての教育が始まり若い人達のサステナビリティの意識は高くなってきている。

ただ、残念だが、このような課題は長期的に取り組むことで初めて成果が出る。経済的格差が広がる中で、目先の利益や目の前の生活のことを重視する人達も多いのも事実だ。この様な社会の状況から、2024年は、これらの課題を少しでも解決する方向に進めるべきだと考える。ただ、長期的な問題の重要性や課題意識の浸透をはかるも、政治のポピュリズム化は進み、長期的な問題の取り組みが遅れ、結果の出やすい目先の問題に取り組むことになるのではないかと思う。課題解決の方向に持っていけるようにしたい。

旅行業界では、2023年観光庁の観光立国推進基本計画が発表され、観光振興が地域社会・経済の好循環を生み、地域の自然・文化の保全に繋がる持続可能な観光開発の重要性を謳ったことは大きな一歩だった。これにより、地域社会や地域の暮らしの為の観光開発を目的に、地域を深く知る体験が型ツアーや交流型のツアーへの取り組みも増えた。また、日本人の国内観光客が戻ってきたところに、円安も拍車をかけ訪日観光客が急増、有名観光地ではオーバーツーリズムが、様々なメディアで取り上げられ、社会にオーバーツーリズムの問題や旅人の責任やモラルについて再認識された年となった。

2024年のサステナブルな旅の予想

これらを受けて、2024年のサステナブルな旅の予想を考えてみる。旅行業界全体で持続可能な観光開発についての取り組みは進むと思う。

1.観光事業、地域の事業者、地域住民、旅行者などと地域の社会・環境・経済に配慮したサステナブルな旅への取り組みは、社会全体のサステナビリィの意識の向上を受け、より進んでいく。

まずは、従来型の旅行商品においても企画段階から取引先のサステナビリィのチェックがより進み、消費者(旅人)にその内容と考え方を開示するところが徐々に増えてくるだろう。現状のGSTCJSTS-Dの認定まで至らずとも、地産地消、省エネ、温室効果ガス削減、プラスチックの代替品利用など自社で取り組めることから商品説明の中にサステナビリィについての開示が広がってくると思う。

問題意識の高い旅人から、購入動機の一つとして利用が広がり始めるのではないか。食品業界、ファッション業界、日用品業界などは、積極的に自社のサステナビリティ活動を商品に明示し説明している商品も増えてきており、他業界の動きが参考になるだろう。

2.旅人のニーズも多様化し、多様なライフスタイルや価値観に対応した新しい旅のスタイルがどんどん出てくるだろう。

その中で、サステナブルツーリズムの「理念」に沿った、地域主体の循環型プログラムとして、エコツアー、アドベンチャーツアー、アグリツアー、社会課題解決ツアーなど様々な「形態」のツアーが増えてくるだろう。

3.地域住民と交流したり、ぶらり旅をしたりといった、地域をより深く知る自由気ままな旅も増えてくる。

旅人が地域の活動や地元イベントや地域住民の為のプログラム参加し、従来の旅行業界とは違ったサービス提供者やプレイヤーも増えてくるだろう。「おてつたび」や「サゴジョー」など新しい形態のサービスがその例である。

4.オーバーツーリズムの問題を踏まえ、旅人への旅のマナー啓発やガイダンスが旅先の地域から積極的に発信されるようになる。

旅人への啓蒙活動や旅の楽しみ方を伝えることで、旅先側は、旅人の選別を始め、将来的にはリピーターに繋がる個客データー管理も始めるところが出てくるだろう。

COVID19は235月に「5類」に引き下げられ、自由に旅に行けるようになり、旅行者が大きく増加する年になると思われる。とはいえ、公の感染者数の観測・公表すら停止されたことで現状の感染状況を見通すことができなくなっているのが実態だ。コロナ前とどの様に、旅の仕方や楽しみ方が変化していくのか、やっぱり従来と同じような旅になっていくのか、旅の進化が見られる年になればいいなと思う。今後、コロナ禍が完全に明けたとしても、このコロナ禍で学んだことを活かしていってほしい。

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