2026年1月22日、観光庁は第3回「サステナブルな旅アワード」の表彰式を都内で開催しました。応募総数33件より選出された旅行商品から、サステナブルツーリズムの最新動向を探っていきましょう。
リジェネラティブツーリズムの転換点の年に

持続可能な観光への取組を推進し、旅行業界や旅行者の意識醸成を図ることを目的とした「サステナブルな旅アワード」。国内の訪日外国人旅行者数は史上初の4,000万人を超え、消費額も約9.5兆円となる中観光庁村田長官は観光地のサステナビリティの重要性を強調しました。続いて、小林審査委員長より発表された今回の受賞商品の特徴は以下の3つです。
- リジェネラティブツーリズム(再生型観光)の台頭
環境保護をさらに進め、地域を育てより良いものにする取り組み。「人が来れば来るほど好循環が生まれる」理想的なモデルが各地で誕生している。 - Iターン・Uターン人材の活躍
受賞地域の多くでこれらの人材が地域活性化の中心的役割を担っている。例えば特別賞のネルクルーでは、カヌーのインストラクター免許取得を学生に促すことで、卒業後すぐに地域で活用できる実践的スキルを身につけさせている。 - 「稼ぐ」意識の高まり
適正な収入を得ることで、地域の持続可能性を支えるアプローチが多く見られた。関わる人々がそれぞれ適正な収入を得るだけでなく、若い人がそれで育つレベルまでの収入を確保することで真の持続可能性を目指していることもポイント。
リジェネラティブとサステナビリティ リジェネラティブ(regenerative)という言葉・考え方が注目を博しています。 地球規模での環境問題やエネルギー問題、資源の問題が可視化されているこんにち、サステナビリティはその負の影響を低減またはスローダウンさせ、次世代に現環境を遺そうとすべく試行...
サステナビリティの根っこの意味 サステナビリティの「sustain」という部分には、「何かを下支えする」という意味があります。イメージとしては、土台となるものを下から支える、土台を盤石にする、といったものでしょうか。 少し、抽象的なイメージの話をします。 何かを持続させること、維持する...
受賞に輝いた10団体は?
【富山県砺波市・南砺市】カイニョお手入れツアー~次世代へ紡ぐ、散居村保全と循環型社会の再生~
500年の歳月をかけて創り上げられた人と自然が作った景観で、CO2の吸収、防災減災、生物多様性の保持といった優れたエコシステムを持つ「カイニョ」。カイニョとは散居村に点在する住居を囲む屋敷林のことで、本ツアーでは宿泊者からの宿代の2パーセントを屋敷林保全活動の寄付金として預かり、その保全活動自体をツアー化することで、参加者が主体的に作業に参加し地域の方々と交流する仕組みを構築しています。
地域の精神風土に触れることを意識した体験は、インバウンド含む宿泊客の空き家購入や地域住民のシビックプライド向上にもつながっているそうです。
シビック・プライド 近年とても注目を浴びているこの言葉、シビックプライド(civic pride)。みなさんはご存じでしょうか。 この言葉は、(都市や地域に対する)「市民としての誇り」という意味をもち、それを高めることが地域活性化・地方創生の鍵を握ると考えられています(※註1)。 地域...
【静岡県松崎町】伊豆半島の森と海とを循環させる、リジェネラティブ・ガストロノミーツアー
「リジェネラティブツーリズムのトップランナー」と評価を受けたツアー。伊豆では通常海に注目が集まりますが、森の整備から海の美化につなげる着眼点がポイントです。そこから出た木材を使って使われなくなった宿泊施設や店舗をリノベーション。数キロ以内の地域資源で循環を実現し、人が増えるほど森が綺麗になり海が綺麗になる仕組みを構築。化石燃料を一切使わず、すべてのアクティビティを人力で実施。薪で料理し備長炭を使用するなど、CO2を出さない取り組みを徹底しています。
【熊本県人吉市】The Best of Kuma Valley 人吉球磨を巡る特別な旅
熊本県人吉市にて、地域に点在している寺社・古武道の道場・焼酎の蔵元や茶農家・ローカルな飲食店などを結び、本質的な地域体験を主にインバウンド向けに提供。無理のない少人数制、解説重視で満足度の高いサービスを提供していると評価を受けました。地域への適正対価の還元と環境負荷低減に取り組み、地域資源を「消費」する観光から「継承」する観光へと転換するモデルとなるでしょう。
【鳥取県八頭町】地域と連携、季節毎に里山の自然を探究するシリーズ
珍しい夏鳥が飛来することでバードウオッチャーに人気の高い「八東ふる里の森」。オフシーズンである春は希少な野鳥観察、夏は大学連携の探究学習、秋は地元農家との農業体験を展開し、森の保全と年間を通した宿泊客の増加の両立につなげました。森のロッジが地域産品を紹介するショーケースとなり地元産品の通販も始めているそうです。
エコツーリズムから地域全体が主役のエコ・コミュニティベースド・ツーリズムへ進化した点が受賞の決め手となりました。
【秋田県仙北市】角館半日ツアー~職人と文化と食を巡る旅~
武家屋敷群のみならず、商業の拠点として栄えた「外町」の歴史を深く紐解く旅を提供する本ツアーを運営する(株)遊名人は、秋田県仙北市が本社の地域限定旅行業者。県外出身の20代の社員たちが市内に移住し、「ソトの目」で地域の魅力を掘り起こし既成概念に囚われないオリジナリティのある商品づくりをしています。有名な武家屋敷ではなく商人町を舞台に、地域に暮らす人々にフォーカスし生活を知ることに重きを置いています。
その他の受賞商品
この他、特別賞に輝いた5件については個別ページにてご紹介しています。次の旅の訪問先に、ぜひ検討してみてください!
フリーのライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通し世界各国の社会問題を知る。事務職を経て独立後、ソーシャルグッドに関連する記事を執筆。都会暮らしからはじめるエシカルな暮らしを実践中。




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